表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

ー第3話徳川美術館




ー第3話 徳川美術館



徳川美術館に入場料を払って、3人で入ってゆく。

星岡は入ってすぐに、アメンティティとホティオティを止めた。

「何か?。」

「知り合いが居る。」

「問題が?。」

「別れた彼女だ。」

「じゃあ問題無いのでは?。」

「10m以内に近づくなと言われている。」

アメンティティは、星岡の視線の先を見た。学芸員のIDをぶら下げた女性が居た。

「測距した所…10mと4mmで通り抜けられます。」

「ストーカー行為で捕まったら、裁判所で証言してくれ。」

「いいですよ。」

星岡は元カノの理香子に見つからずに、特別展示室に行ける方法を考えた。

「徳川家について、興味は?。」

ホティオティの方が答えた。

「最後の将軍慶喜については、卒業論文のテーマでした。」

「運がいい。あのIDカードをぶら下げた女性が見えるか?。」

「視線をトレースします…ID番号A7455 エンドウ リカコ 主任学芸員とあります。」

「バッチリだ。彼女の専門は幕末史だ。特に、将軍慶喜が大阪城からトンズラした史実については、正気を失う。…引きつけてくれ。」

「わかりました。」

ホティオティは、理香子に向かって行った。アメンティティは、星岡に水晶を渡してホティオティについてゆく。

ホティオティは、理香子に話しかけた。完全に周辺視野が無くなった理香子の後ろを、星岡は通り抜けた。



特別展示室には、入り口と兜の横に警備員が居た。ケースには振動センサーやら、光センサーやらが有るはずだ。だいたいケースの防弾ガラスをどうすると云うのか。

入り口の警備員の横を通った所で、早くも兜の水晶が励起して振動しているのが見えた。

「心の準備をする時間も無しかよ。」

光を発し始めた。

どうやらセンサーは、ケースにしか興味が無いらしい。

兜の横の警備員が驚いているのが見える。前面の防弾ガラスが上から溶けてゆく。理香子が星岡の横を走って兜の前に行こうとする。その前に、星岡の手の中の水晶と、兜の鷲の目の水晶が同時に飛んだ。マイクロセコンドで水晶は入れ替わり、光は消滅した。

アメンティティが横に来ている。

「終わったか?。」

「終わりました。」

アメンティティは答えた。

「じゃあズラカルぞ。」

警備員は無線でしきりに話している。

理香子はケースと兜を調べていたが、不意に振り返った。

やけに専門的な事を質問してきた中学生の女の子と連れの男の子が見えた。2人の横の見た事のある顔と視線が合った。

「ユキヒロ…?。」

遠藤理香子は星岡が大好きだった。だが、望みのないフォークシンガーにこだわっている事と、他人の人生に首を突っ込む事をやめて欲しかった。それで、わざと愛想をつかす振りをし、別れて見せていたのだ。

星岡はあわてて視線を外して、逃げ始めた。2人の中学生を急がせて…。

ーいったい今度は、何に首を突っ込んでるわけ?。ー

理香子は星岡の後を追った。



美術館の外で、星岡に追いついた。前に回り込み立ちふさがった。

「星岡さん。別れたにしては、話しが違うようですね?。」

アメンティティが言った。理香子はそれに構わず問いただした。

「ユキヒロ?。今度は何?。鷲前立ての兜のケースが溶けた事に、何か関わってる?。」

「リカコ…。俺は何もしてないよ。」

「この2人は?。今の人生相談の相手?。大阪城の天守から慶喜が英国艦隊を見て逃げだしたなんて証拠が、グラバー邸にあるなんて話。この女の子は何者?。」

ーホティオティやりすぎだよー

と思いながら、星岡は逃げを試みた。

「ライブのファンだよ。」

「どう見ても。子供が出来ちゃた中学生のカップルに見えるけど?。」

「この女の子が妊娠してるのは事実だ。」

「それだけ?。」

「ん?。他には…この2人を家まで送ってあげるだけだけど?。」

理香子はいったん下を向いてから、星岡の目を見た。

「ユキヒロ。あの鷲前立ての兜には、箱書きがあるの…。天翔る舟が落ちる時、前立ての鷲を持って青き翼を呼び、天に帰せ。その時鷲の目は震え、立ち塞がるものはすべて溶けさらん。…さっき、鷲の目が震えるのを見た。ケースの防弾ガラスが溶けた。この2人は…誰なの?。」

星岡はどうしたものか迷った。

「リカコ…。俺達はもう恋人でもなんでもない。俺は俺の思うように生きる。俺のやってる事に、首を突っ込む権利は…おまえにはもうない。ほっといてくれ。」

「何言ってるの?。」

「もうついて行けない。別れるって言ったじゃねえかよ。違うか?。」

「どうしてか考えてくれた?。私の気持ちがどこに有るかを?。」

「考えたさ。普通の幸せを望んでるんだろ?。俺と苦労するつもりは無いんだろ?。じゃぁ幸せになれよ。どっちにするかは、理香子の権利だ。」

「メチャメチャだよ。」

星岡は理香子に背中を向けた。

「俺と泥をなめる覚悟が有るなら。今夜0時にロサンゼルス広場に来い。来れば。この2人が誰なのかもわかる。」

星岡は、理香子を残して去った。



ー次話!

ー第4話 緊急脱出用ポッド





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ