ー第2話アメンティティ ホティオティ夫妻?
ー第2話アメンティティ ホティオティ夫妻?
東急ハンズアネックスの上のイタ飯レストラン タナチューラレンテ に3人で入った。女の子の方はしゃべらない。2人ともモクモクと"ボローニャ地方のナスのミートソース゛を食べている。
「そうだ。食え。食う時は食う事だけ考えてりゃいい。」
10分で、ダブルの2人の皿は空になった。
男の子がおもむろに言った。
「ホシオカさん。自己紹介します。私は、アメンティティ アーメンと言います。これは、妻のホティオティです。妊娠3ヶ月です。」
星岡は、胃の中のスパゲティが月に向かって発射しそうになった。
なんとか飲み込んで言った。
「それはネット上の名前だよな?。」
「いえ。本名です。」
コイツは、路上ライブ史上最強のモンスターだ。
「でも、その制服は上土居中学校のだろ?。」
「遭難した際の装備です。たまたまコピーしたのが、そこだったんでしょう。」
「遭難?。!。したのか?。」
「はい。バスのパイロットは気をつけていたと思うのですが。どうやらNTTのマイクロウェーブの直撃を食らったらしいのです。」
「ついでに聞いて良いか?。どの星から来た?。コリン星か?。」
星岡は隙を見て逃げるしかないと覚悟した。
「そんな星は有りません。ここのタレントさんの妄想です。月の裏側にあるコロニーです。」
「裏側のコロニーって…サイドセブンかよ。」
「サイド7は老朽化して解体されました。サイド1745です。」
「…そいつはどこに?。」
「だから、月の裏側です。座標数値が必要ですか?。」
「やめとくよ。で?。俺にどうしろと?。」
「さっきの場所に、帰還できる緊急用ポッドが有るんです。あれで、ラグランジュポイントまで行けば、救難信号を受信した救助隊が来てくれます。救助隊はナラクまで降りてこられないんです。」
「ナラク?。」
「この星の名前です。」
「ここは、奈落の底か?。」
「はい。ナラクノソコは正式名称です。」
「それで?。」
「さっきのギターの和音の中に、緊急用ポッドを作動させる音階信号が有りました。それを組み合わせて、鷲の像に聞かせれば、緊急用ポッドは作動します。」
星岡は手拍子も拍手も無かった事を思い出した。
「だから、黙って聞いてたわけだな?。んじゃあ…さっさと作動させよう。」
星岡は立ち上がりかけた。もちろん、全力疾走で逃げるつもりだ。
「問題があります。」
「ハリウッド映画じゃないんだから、盛り上げるなよ。」
「盛り上げるつもりは有りません。」
「わかった。何が問題だ?。」
「鷲の像の目にハメる、データが入った水晶が有りません。」
「クソッ。インディージョーンズかよ。…そいつはどこに?。」
「これです。」
アメンティティは、パンフレットを差し出した。
「徳川美術館?。鷲の兜?。マジかよ。」
特別展示の写真の中に、鷲の前立て(まえだて)がついた兜があった。しっかり、水晶の目がついている。
「ナショナルトレジャーの方か…。なんでこんなとこに、ハマってるんだ?。」
星岡は冒険アドベンチャー好きで、思わず逃げるのを忘れた。
「手違いで、時空を超えてしまったんです。」
「……。緊急用ポッドなのに、ちっとも緊急じゃないじゃん。」
「私達のせいでは有りません。」
「俺のせいでもないけど?。」
「助けて下さい。私達は、空気の中では長く生きられません。特に脱出用装備は耐久性が低い。いつ穴が開くかわからない。私達は構いません。しかし、お腹の子だけは…。」
アメンティティはホティオティのお腹を見た。
「わぁかった。だがな、俺はミュージシャンだ。美術品を盗む技術はない。それはわかるか?。」
「はい。しかし、徳川美術館の入場料を、払うお金を持ってらっしゃる。」
「わかった。入るとしよう。どうやって盗む?。ケースにはセンサーがある。警備員もいる。捕まって刑務所行きだ。」
「水晶を入れ替えるだけです。」
アメンティティは、ポケットから2っの水晶を取り出した。
「んだから、どうやって?。」
「この水晶を近づけると、兜に入っている水晶が励起して、飛び出してくるはずです。飛び出すと、入れ替わりに目に入ります。ハマったら逃げます。この水晶にはデータが入っていませんが、兜の水晶と同じ物です。徳川美術館に損害は出ません。」
「誰が近づけて、入れ替えて逃げるんだ?。」
「身長体格から言って、ホシオカさんにお願いします。」
星岡は気絶しそうになった。
ー次話!
ー第3話 徳川美術館につづく