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『墓暴き』
生命とは本来、遺伝子学的に不死の存在である。
一九九一年、サンフラシスコで開かれた米国老年学会で、ある二つの説をめぐって論争が行われた。
一つは死は遺伝子にプラグラムされた宿命であるという説。
もう一つは、死は病気やアクシデントが原因であり、遺伝的に寿命制限がない説である。
パウエル博士は一〇〇万匹のハエのデータを元に、年を取ったハエほど死亡率が低いことを挙げた。遺伝子に死がさだめられているのなら、死の確率が上がらなければならない。
今となっては古い奇説だが、不思議と心を引かれた。
彼の一族に不死の遺伝子を持つという言い伝えがあった。
迷信に過ぎないが、もし、そうなら、自分たちは欠落しているだけではないかと思う。
ある著名な小説では、個体は進化のエネルギーに耐えることができないから、世代交代すると書いてあった。だとすれば、自分たちは進化の出来ない生物だ。
それでは、彼女の存在はどういう意味を持つのだろうか?
彼は庭にある木の根元が気になり、掘り返した。
そして、そこから予想通りのものが出てきた。
次回『記憶』