8月17日、オレの舌
「痛ててててっ!」
『どうしたんだ翔太?』
「何か指に刺さっちゃったみたい」
『どれどれ・・あっホントだ!そんなに痛いのか』
「めちゃ痛い!」
「取ってやろうか?」
「えっ?」
「だから、オレが取ってやろうか!?」
「無理でしょ」
『いや、無理ではない!』
シャキーン!
こんなときのためにと、丹念に磨いだ爪をむき出しに、オレは翔太の目の前に突きだした!
「ひえぇ~」
震え上がる翔太。オレは、そんなことはお構いなしに続けた。
『怖がることはない翔太。オレに任せろ』
久々だった!オレが翔太とのやり取りで優位に立つのは・・。
「怖いよレオ」
『ちっとも怖くない』
「怖いって。もう、大声出すよ!」
『ダメだ!』
オレは、反対の手の爪も見せつけた!
「ひーっ・・」
翔太は声も出せない。
『大丈夫だ、動かなければすぐに終わる』
「痛くしないでよ!」
『ああ、目をつぶれ・・』
翔太はゆっくりとまぶたを閉じ、代わりに口を大きく開けた。なぜ口を開けたのかはわからないが。
オレは精神を集中して爪をひと舐めした。まず、顔を翔太の指に近づけ、自慢の髭でトゲの状態を確認!
長さ、太さ、刺さっている角度、それに材質を瞬時に見極めた。よし、いける!
『翔太、動くなよ』
「う・・うん」
狙いは定まった!あとは気温、湿度、風を計算して・・えいっ!!
まるで必殺○亊人!オレの鮮やかなまでのその一撃は、誰も気付かない一瞬の出来事だった・・。
ペロリ、ペロリ
最後に自慢の舌で消毒だ!
「くすくすくすっ・・レオ、くすぐったいよ!」
『・・終わったぞ翔太』
「えっ?」
『ほら、これが指に刺さってたんだ』
オレは、爪についたトゲを翔太に見せてやった。
「うわー!ありがとうレオ」
『お安いご用だ!』
「全然痛くなかったよ」
『だろうな』
「ただ、最後にすごくくすぐったかったな!」
『傷口を舐めて消毒したからな!』
「えっ?舐めたの」
「ああ、これでな・・」
オレはペロンと舌を出した。
その舌をじっと見つめる翔太。
そして
「うわー!レオの舌、トゲだらけだぞ!」
『違う、これはトゲじゃない!』
「そうなの・・」
『触ってみるか?』
翔太は恐る恐る指をだし、オレの舌にタツチした。
『どうだ?』
「ん・・キモイ!」
それが翔太の素直な感想か・・。このギザギザが、食事のときや毛繕いに大いに役立つのに!そんな説明は、今の翔太には無意味なのかもな。
まあ、トゲがとれて良かったな翔太。それに、ちょっと怖い思いをさせちゃったな、ごめんよ。
『ゴロニャー!』