8月14日、オレの口
『はあーあ』
オレはでかいあくびをした。
「臭っ!」
『ん?』
片目を開けるとそこには翔太が。
「レオ、口臭いぞ!」
『なんだと!』
「ちゃんと歯磨きしないからだね」
口が臭いなんて初めて言われたな。確かに、自分の口臭なんてあまり気づかないものだが・・。
『翔太、この手をみろ!』
「おっ!」
ぷよぷよ、ぷよぷよ。
『肉球で遊ぶな!そうじゃなくて、この手で歯ブラシなんか持てっこないだろう。だから磨かないんじゃなくて磨けないんだ』
「なんだ、そういうことか・・」
『ん?』
翔太の目付きがまた変わったぞ!オレの髭と耳は、オレに危険を知らせている。
「僕が磨いてやるよ!」
やっぱりそうきたか。
『断る!』
「だめ」
『断る!』
「だめ」
仕方ない。こうなったらオレの鋭い牙でちょっと脅かしてやるか!
『にいー!』
オレは口を横に広げ、牙をむけた。
どうだ!オレの歯は、磨かなくてもこんなに鋭いんだぞ!
とその瞬間、何かがオレの口の中を占拠した。
ゴシゴシ、ゴシゴシ
「ほーら、気持ちいいだろう!」
恐るべし、翔太のはやわざ。オレの自慢の牙は、翔太の手に握られた歯ブラシによって磨かれていたのだった。
「はい、終わったよ」
『・・どうも』
ん?なんか口の中がどぶ臭いぞ!?
「どうしたんだレオ?」
『翔太、お前何で磨いた?』
「これかい・・」
『それって・・歯ブラシなのか?』
「いや、台所でお掃除に使うやつだけど」
『げっ!』
「だって、僕の歯ブラシを使うわけにいかないだろう」
『だからって・・』
これじゃあ、よけい口が臭くなっちゃったじゃないか!
我慢我慢、翔太は悪気があってやったんじゃない。オレのためを思ってやってくれたんだ!そうだ、翔太はオレの為に・・。翔太はまだ赤ん坊。オレはもう大人。そう、分別のある大人なんだ。
そういうときはこう言おう。ありがとうよ翔太!
『ゴロニャー!』