翔太のネコ語
「ねえ、レオって何歳?」
『3才だ』
「3才かあ、じゃあまだ子供だね!」
『子供じゃないよ!もう結婚してもいい年齢だぞ』
「3才なのに?」
『ああ、ネコは人間よりずっと早く年をとるんだ。だから寿命もずっと早いんだけどね・・』
「寿命?」
『寿命っていうのは、そのものが生きていられる期間のこと』
「えっ!レオ死んじゃうの・・」
『すぐには死なないよ!ただ、いつかは寿命がくるってこと』
「そうなんだ・・」
ん?一瞬、翔太の表情が悲しそうに見えた・・。
そして、月日は流れ、翔太は今日から小学1年生に!
『翔太、今日はなかなかきまってるじゃんか!』
「当☆り前☆よ!僕は今日から1年生☆よ」
『うん、良かったな!』
「じゃあ行☆て来るからね!お留守番☆のん☆よ」
『わかってるよ』
このところ、ちょっと気になることがある。翔太の喋るネコ語が聞き取りづらくなったことだ!
今の会話もそんな感じだった。
「じゃあ行☆て来るからね!お留守番☆のん☆よ」 って、ちゃんと発音出来ないところがある。オレの気のせいだろうか・・?
翔太とオレは、今でも大の仲良しだ!オレはこの家からほとんど出ることはないから、ネコ語がわかる翔太が唯一の話し相手なのに。
そんなことを初めて感じたのは、3年前の翔太の誕生日の日・・。
『翔太、3才の誕生日おめでとう!』
「ありがとう。ん、どうかし☆の?」
『オレもケーキ食べたいなあって・・』
「いいよ!僕の分をわけてあげるから一緒に☆べよう」
人間の言葉はだいぶ上手になってるけど、逆にネコ語がヘタになっちゃった感じで・・。
翔太にはその事は言ってない。オレの気のせいかもしれないし、言えば翔太は気にするだろうから。
でも、あるときオレは気がついたんだ!翔太はネコ語の『た』が発音出来ないんだと。そして今は、『ち』と『つ』も怪しくなってきている。
やがて翔太達が帰ってきた。ご主人と翔太の足音が聞こえる。
「レオ、いるかーい!?」
『お帰り翔太。どうだった学校は?』
「おもしろか☆☆よ!おとも☆☆もい☆ぱいで」
『おともだち?』
「そう、おとも☆☆!」
オレは怖かった。このまま翔太はネコ語を忘れてしまうんじゃないかと。
最初翔太にネコ語で話しかけられた時はビックリしたけど、今ではそれが当たり前のこととなってる。その当たり前のことがそうでなくなってしまう。
そんなの寂しいよ翔太!
ここまでで、ここまでで止まってくれ!翔太がネコ語を忘れてしまうのは。
『ゴロニャー!』