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よろしくね。

ある初夏の夜中ー。いよいよその時はやってきた。


「頑張れ!」

陣痛室から分娩台に移動して、1時間。勝が手を握って励ます中、元気いっぱいの産声が上がった。

「おめでとうございます。元気な男の子です。」

ホッとして力が抜けて、思わず二人で涙ぐむ。予定日より二日早い出産だった。


胸の上に乗せられた、胎脂が付いたままの生まれたての赤ちゃんはフニャフニャとしていた。


…本当に、私は赤ちゃんを産んだんだ。勝と私の赤ちゃんなんだ。私は本当にママになったんだね。


「一旦、キレイにして、測定しますからね。」

看護師が胸の上から赤ちゃんを連れて行くのを見送っていると、別の看護師から声がかかる。

「ご家族の方がいらっしゃってます。入ってもらってよろしいですか?」

「はい。」

看護師に返事をすると、“ご家族の方”がドヤドヤと入ってきた。両家の両親、勝の弟、翔と彼女、芽衣の姉とその家族。私たち、こんなに皆に愛されてるんだ…。とウルウルしそうになっていたら、全員が開口一番、

「名前どーすんの?」

「おめでとう、も言わずにそれかよ!」

勝が言うと、皆がいっせいに顔を見合わせてから口々に言う。

「あ。お、おめでとう。」

「ごめーん。悪気はないのよ。アハハ。」

「いや、その。あんまり嬉しくて…。」

分娩室が笑いに包まれる。石黒も笑いながらやってきた。測量が終わって、白い産着を着た赤ちゃんを連れてきてくれたのだ。再び胸の上に乗せられ、改めて顔を見ると、勝によく似ている気がする。

「パパに抱っこしてもらおうね。」

勝を促すと、こわごわと手を伸ばす。

「お。お前、サマになってるな。」

勝の父が言うと、皆がまた笑う。そこからは、待ち構えていた全員で抱っこの順番争いとなり、石黒も苦笑するくらいだった。

「…さて、そろそろお母さんも赤ちゃんも体を休ませましょう。」

石黒の一言で、芽衣と勝は病室へ、赤ちゃんは新生児室へ、“ご家族の皆さん”は家路に就いた。


「さて名前はどうしようかな。」

病室に着くと、勝が言いだした。

「だね。お七夜までには決定しないとね。たけるは?佐藤健、イイ男じゃん!」

「お前なあ…。」

「じゃあ和也!亀梨和也もイイ男だよ。」

「ミーハーだなあ。」

「智久!山ピーも好き!それか潤。」

「だから!ミーハー過ぎるって!」

「じゃあ直人!竹中直人さん、素敵よね。」

「年齢を上げればいいってもんでもないだろう!」

「じゃあ、何なら良いのよ?」

「もう一回、本で調べるから!」


かくして、名前がどうなるか、非常に興味深いものである。この二人は、きっとこれからも、もしかしてまた家族が増えることがあっても、こんな調子だろう。


とにかく皆、お七夜までドキドキだろう。勝と芽衣はそんな皆の気持ちを知るよしもなく。とにかく今は無事に産まれてきた喜びだけをかみしめている。


そして赤ちゃんを抱いて二人は言う。

「私たちのところへ産まれてきてくれてありがとう。よろしくね。」


            〔完〕

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