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命名権。

「しかも、男の子って決めつけてるよね…。」

依子のメールに唖然としていると、今度は芽衣に麻衣からメールが届いた。

『お父さんが参加できるようにしてくれて、お父さんもお母さんも喜んでるよ。ありがとね。』

「まさか今度は、お義母さんでは…?」

芽衣のスマホの着信にドキッとする勝だった。


両家の母は毎日のように名前関係のメールを送り、一日交代で手伝いに来てくれた。時々、思い出したように動悸が起こるが、妊娠生活はどんどん過ぎて、8ヵ月後半に入った。性別も判明し、医師の見間違えでなければ男の子らしい。判明したとき、依子は得意げに言った。

「やっぱり、私のカンは正しかったわ。」

「だからって桃太郎や金太郎はないだろう!」

「やあねー。センスあるこの冗談がわからないの?」

「どこにセンスがあるんだよ!」

依子はケラケラ笑う。その傍ら、二人も負けじと毎日、ネットや本で命名について調べては相談ばかりしている。できれば、自分たちで考えた名前にしたいからだ。


「そろそろ、入院の準備だけはしておいてくださいね。臨月からは、いつ産まれてもおかしくないので。よかったです。先輩たちも、赤ちゃんも頑張ってこられましたね。」

検診の時、石黒が笑顔で言った。転院してホテルみたいに豪華な産院での入院生活にも惹かれたが、石黒に取り上げて欲しいと思って、引き続きお世話になることにしたのだ。

「石黒くんのおかげです。ありがとね。」

「僕は手助けをしてきたまでです。頑張ってきた先輩たちと赤ちゃんのおかげですよ。楽しみですね。」

石黒の言葉に微笑みあう二人。

「先輩たち、お似合いですね。さすが“伝説のカップル”ですね。」

「伝説って?」

芽衣が聞き返す。

「おい。それ以上言うな!」

とっさに石黒ににらみをきかせる勝。固まる石黒。ナンバー2の威厳はどこへやら。後輩の顔になっている。

「ナニナニ?知りたーい!」

「言ったらどうなるかわかってんだろうな。」

赤面しながらも、先輩らしさを全面に出す勝だった。


この件については後日、こっそりと高野が教えてくれた。

ー高校生の当時、男子部員だけの時に酒が入ると、勝がやたらと芽衣のことを話して、そういう時は別人だったらしく、今も芽衣を直接知らない後輩達にまで語り継がれているらしい。ー

聞いた時は、芽以はあまりに小っ恥ずかしくて、笑ってごまかしたが、後輩をあそこまで脅すのも納得できたし、勝の知らない一面にびっくりした。


「ところで、名前は決まったんですか?」

石黒が訊く。

「いや、まだ考え中で。命名権を巡って身内が頑張ってるんだ。」

「命名権、ですか?」

「名付けの権利。自分の考えた名前を採用してもらおうと、毎日のように何度もメールが来る。」

「そんなに親戚、多かったですか?」

「いや、多くない。両家の母親が一日に何通も送ってくる。」

「大変ですね…。」

自分の時も、多少なりとも似たようなことがあったことを思い出した石黒だった。


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