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父様が家に戻って行ったのでティーヴァとお気に入りの岩から、大体50メルン位先をゴールにして駆けっこ勝負です。
「じゃぁ、先にゴールした方が勝ち!な。
勝った方がこのシュハナの飴を食べられる、リルムが負けたらコショコショな!」
「負けたりしないから良いのです!
勝って父様の分もシュハナのアメを貰うのですよ!」
「おー、オレに勝てたらやるぜ。」
上半身を私の目線に合う様に屈めながら、ティーヴァが余裕の笑みで私の宣戦布告に答えます。
私達には身長差があるのでティーヴァは逆立ちです。
「じゃ、行くぞ〜。
よ〜い…ドン!」
ティーヴァの合図に合わせて勢いよく駆け出す。
短い手脚を懸命に動かしゴールまで全速力で走るリルムと、逆立ちでリルムの後ろを不安定に走るティーヴァ。
僅差でリルムがゴールに先に走り着いた。
「やっ…たー!…ゼェハァ…わ…たし…の勝ち…なの…です!はぁはぁ…。」
「あーぁ、負けちまったか〜。
ほら…約束の飴だ、まず水飲め。」
ゼェハァする私にティーヴァが飴を2つと、岩に置いていた水筒からコップになっているフタを外して水を注いで渡してくれました。
先に貰った飴をワンピースに付いているポケットに仕舞ってから、コップを受け取り一気に飲み干します。
走って火照った体に冷たいお水がありがたいです。
「はぁ〜〜、生き返ったのです。
ティーヴァありがとうなのです。」
ティーヴァに空になったコップを渡しながらお礼を言います。
「おぅ、どういたしまして。
…ん、水が美味いな〜!よっと…はぁ気持ちいい〜」
コップを受け取り自分の分を注いで飲み、水筒に戻してその場に寝転ぶティーヴァ。
まだ息が整わないリルムもその横に並んで寝転ぶ。
「う〜、風が気持ちよくて…眠くなってきたのです。」
吹き抜ける風と暖かい日差しに、走って疲れたリルムがだんだんウトウトと瞼が落ちそうになっているのを横目で見たティーヴァ。
「あ〜そういや昼寝してないなぁ、このまま少し昼寝するか。」
「ん〜〜…で…も、と…さま…が…」
「ヴィルクスが来たら起こしてやるから。」
「…あ…ぃ…、や…そ…く…」
「くく…ほいほい、おやすみ。」
ティーヴァの微笑い混じりのおやすみと、頭を優しく撫でるのを感じたのを最後に父様が夕食の下ごしらえを済ませて迎えに来るまで、ティーヴァの横でお昼寝したのでした。
夕食は父様とティーヴァと私の3人で食べて、デザートに私が朝採ったミルの実を出したらティーヴァが美味しいと言ってくれました。
駆けっこで私が勝った事を話して、父様と一緒にティーヴァから貰った飴を食べました。
二人ともニコニコ微笑ってくれていたのが嬉しかったです。