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魔殺しのベルセルク  作者: のぶなが
副隊長試験編
6/23

力を、貸そう

「ハァハァ」


一体、この胸騒ぎはなんなんだよ!ルシアさんが連れ去られたかなんて、わからないのに、俺の足は止まらない。


気づいたら、俺は、昼間の豪邸についていた。ドアに駆け寄り、思いっきり叩く。すると、昼とは見違え、怯えるような雰囲気の主人が出てきた。


「騎士団の方......」


「被害は!?」


「それが、ルシアが――」




―――もう、その声は耳に入らない。


知らず知らずのうちに俺の脚は動き出していた。そして、恐らく、止まらない。


「海斗。どこいくんだ」


フェンリルが話し掛けてくる。


「ルシアさんを、助けにいく!」


明朝に行く?それまでに殺されたらどうする?充分、ありえることだ。お母さんと、一緒に暮らしたいと、言っていた。なら、生きてもらわなきゃ、その願いを聞いた俺が困る!それに、


涙はもう、見たくねぇ。






「ここか......」


禍々しい雰囲気を放つ、洞窟の前に俺は居た。どう来たか、もう、忘れた。


「行くぞ。フェンリル」


「おうよ!蹴散らすぜ!」


フェンリルを握りしめ、俺は洞窟の中に足を踏み入れる。いや、走り出す。


「らぁぁぁぁ!」


洞窟の中は暗く、少し前も見えない。このまま止まらずに、マッグルのところまで行きたいが、


「フェンリル、お前の出番みたいだ」


「おう。ざっと二百人ってとこか?」


「村の人もいるから、殺さないよう頼むぜ」


「おうよ!」


暗闇に潜み、影から俺を狙おうとしている、盗賊が居た。が、今の俺は、異常な程に気が張っている。どこに居るかなんて、丸裸に等しい。


盗賊は機敏な動きで、四方八方から、俺を襲ってくるのだが、フェンリルが全ての攻撃を捌き、そのまま攻撃に転じる。負ける気がしない。だが、量が量だ。いくら気絶させようと、一向に前に進めない。


「たく、あんたは、一人で行くんじゃないわよ」


「アリサ!どうして?」


「豪邸の主人に聞いて飛んできたのよ!早く行きなさい!助けたい人、いるんでしょ?」


「......あぁ!」


「さぁ!かかってきなさい!」


アリサに、盗賊を、任せて先を急ぐ。


「ねえちゃんに任しちまって良かったのか?」


「あぁ。アリサは、強いからな」


全力で、洞窟の奥へ走っていく。どこだ!ルシアさん。

無我夢中で走っていると、突然目の前に謎の気配がした。


「海斗。この先だ」


「あぁ。分かってる」


恐らく、マッグルだろう。人を操り、道具にする、最低な魔獣だ。暗くてまだ姿はわからないが、


「いくぞ!」


歩みを進める。すると、気配の正体は、トカゲの体に翼が生えたような、緑色の怪物。


「こいつが......」


「おうよ!マッグルだ」


そして、マッグルの横には、縄で縛られたルシアさんが居た。


「ルシアさん!」


「海斗さん?」


ゆるさねぇ!絶対に!


「フェンリル、行くぜ!」


「ちょっとまった!」


「え?」


意気込んでいた俺はフェンリルに引き留められる。


「あのな、俺は、ベルセルクが使っても壊れない代わりに、魔獣は倒せないのよ」


「え?マジで?」


「つまり、倒すのは海斗。お前さんの力で倒すしかないってわけよ」


「俺のって、つまり」


「ベルセルクの力だ」


代償がでかすぎるだろ!


「でも、俺、ベルセルクの力の使い方を知らねぇよ!」


「それは、簡単だぜ」


「どうすれば?」


「話しかけろ。心で。腕輪の中のベルセルクに。もし、ベルセルクが答えてくれたら、使えるかもな。力」


話しかける、か。そうか。


おい。ベルセルク。俺はな、助けたいやつがいんだよ。だから、力を貸してくれ。お前の、魔獣の力を!人を助けるために!



―――そうか。欲するか。我が力を。



声が。聞こえる。それに、体が、熱い。あの時と同じだ。


―――助けたい奴が居るのなら、今、力を貸そう。今回貸すのは、ゴブリン。下級魔獣だが、あいつを殺すのなら申し分ない。圧倒的、身体能力を得られるだろう。


そうか。ありがとう。心の中でベルセルクに礼を言う。

フェンリルを鞘に納め、拳を握りしめる。格闘技なんてやったことないが、やってみるしかない。


―――行けっ!


俺の意思と完全に同化したベルセルクの声が、頭に響く。


大きく地面を蹴りあげ、マッグルに飛びかかる。


「ヴァァァァァッ!」


マッグルの雄叫びが、洞窟に反響する。まずは、体!


「うぉぉら!」


右の拳で、ボディを思いっきり殴ってやる。マッグルの巨体は、その場に轟音をたてて転がる。

次は、尻尾!


「らぁッ!」


尻尾をぶっ叩く。地面に叩きつけ、尻尾をぶっちぎる。

マッグルは、呻き声をあげ、その、長い舌を振り回し反撃を仕掛けてくるが、今の俺......いや、俺達にはそんなもの通用しない。洞窟の壁を利用して、中を飛び回る。


「おらぁ!フィニッシュだ!」


最後は、頭。マッグルが、俺達を見失ったところで、斜め後ろから地面に、拳をめり込ませる!


「うぁらぁ」


いや、めり込んでも止めない。二度と起き上がれぬよう、体をも、地面に!


「ヴァァァァァ.......ァ」


「終った、か」


マッグルの声が聞こえなくなり、動かなくなる。やってやった。そう思ったとき、マッグルが光の塵になり、やはり、この腕輪に吸い込まれる。それを見ていると、ルシアさんのことが頭をよぎる


「ルシアさん」


疲労感はやはり感じる。フラフラの足取りで、ルシアさんに近づく。


「海斗さん!大丈夫ですか!?」


ルシアさんの縄をほどいてゆく。


「あぁ。大丈夫だ。それより、お母さん......」


ダメだ。意識が、遠のく。






「ん?」


「やっと起きたわね」


「心配いたしました」


「ここは?」


「私の家よ。今着いたの」


あぁ。そうか。また、寝ちまったんだな。ベルセルクの力を使うと、寝ちまうのか。



あれ?なんか、おかしくね?



「ル、ルシアさん?」


「なんでしょうか」


「な、何でここにいるんだ?」


「そうよ!なんか、成り行きで着いてきたけど、何なのよ!」


「私、今日から、この家でメイドをすることになりました!」


「え?」


「は?」



第一章


『副隊長試験』編


完結




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