え?スイカ?
「メイド村?」
「そう。このアルト村は、ハルバニア王国有数のメイド組合があるのよ。だから、別名メイド村」
「メイド組合?」
「メイド組合っていうのは、メイドを派遣するための、まとめ役みたいなものね」
「なるほど」
村長の家をあとにし、俺たちは被害のあった家を訪ねることにし、村のなかを歩いていた。
「そういえば、アリサの家にはメイドは居ないよな。どうしてだ?」
「どうしてって、要らないんだもん」
まぁ、俺はいた方が嬉しいけどな。
そうこうしてるうちに被害があった家に着いたのだが、
「豪邸じゃねぇか!」
「これは、確かにすごいわね」
むちゃくちゃでかい、家だった。庭には、川が流れ、三階だてくらいだ。俺も一度でいいからこんな家に住んでみたい。と、庭の方を見回していると、そこに、いたのだ。庭の花に水をやっている、メイド服の、メイドさんが!髪は肩くらいまでで、顔はまるで、天使のように白く、透き通っている。スタイル抜群。しかし、ここで疑問が一つ、
「胸、でかくね?」
「どこ見てんのよ......」
いや、決して、アリサが小さいわけでは無いのだが、あまりにも、でかい。え?スイカ?と思った程だ。もう少し、考察していたいが、アリサの俺に対する視線が、痛すぎるので、この辺で止めておこうと、思う。
「すいませーん。王国騎士団の者ですが」
アリサは、メイドさんに声をかけつつ、庭の方に入っていく。
「王国騎士団の方?もしかして、盗賊の件でいらっしゃったのでしょうか」
「えぇ」
「ようこそいらっしゃいました。私、この家のメイドをしております、リイ=ルシアです。それでは、中で、ご主人様にお話を」
庭から、これまた、でかいドアに向かって歩き出す。なるほど、この家の主はでかいものが好きなのか。
俺たちはリビングに通され、ものすごい、装飾がされた、ソファーにすわる。
「それでは、ご主人様をお呼びになりますので、少々お待ちください」
数分するとひげを大層に生やした金持ちオーラを放つ人がやって来た。
「これはこれは、騎士団の方。こんな村までわざわざ、有り難うございます。失礼ですが、お名前を」
「私は、アリサ=イーグルです。」
「俺が、山崎海斗です」
「早速ですが、盗賊の件を」
「はい。わが家で盗られたのは、金品とメイド数人です」
「メイドも連れ去られてしまったんですか」
「そうなんです。今家に残っているメイドはルシアだけで、数人でやっていた仕事を一人で」
「そうですか」
全く、酷い。一体、何人がこの村から連れ去られたのか。果たして、生きているのか。疑問だが、今、俺にできることは、ここで、悩んでいることではなく、話を聞いて、作戦をねることだ。
なんて、偉そうなことをいっていたのだが、
「すいません。トイレってどこですか?」
「あんたねぇ......」
「トイレ、ですか。そこの突き当たりを右に行ったところです」
「有り難うございます」
実は、さっきから、漏れそうだった。そそくさと、廊下かの突き当たりを右にいき、真っ直ぐ進んでいくのだが、一向に、トイレが見えない。てゆうか、今なんか、分かれ道だったような......
迷った。完全に。なんだ、このリアル迷路は。もう、トイレなど、どうでもいい。もとの場所に帰りたい。半泣き状態で、フラフラと歩いていると、キッチンのような場所に出た。そこには、さっきのルシアさんが。すると、こちらに気づくルシアさん
「海斗さん?どうされたんですか?」
「あー、いや迷ったって言うのかな。トイレ行こうとしたら――」
と、いい掛けると、突然の笑い声。
「ふふ。分かります。私も最初は迷ってしまいましたから。案内しましょうか?」
案内をお願いしようと思ったのだが、
「でも、大変なんですよね?仕事」
「なぜそれを?」
「聞きました。メイドさんが数人、連れ去られたって」
「そう、ですか」
ルシアさんは何故か暗く、声のトーンを下げた。
「なんか、あったんですか?」
自分も何故かそんなことを聞いていた。他人の事など、普段は気にならないのに、ルシアさんに何か、影があるような気がして。
「聞いて、下さいますか?」
「あぁ」
「実は、私の母も盗賊に連れ去られてしまったんです」
「なのに仕事を?」
「いえ、もう本当は、やめるはずだったのです。ですが」
「盗賊がきてしまった」
「はい。私は、母と一緒に暮らしたかった。幼い頃に父を無くした私を女手一つで、育ててくれた母と、一緒に......」
天使の頬に、涙が伝う。
「任せてください」
「え?」
「俺とアリサに。村の人も、メイドさんも、ルシアさんのお母さんも、全員、助けて見せますから」
「ほんと、ですか?」
「本当です。だから、もう泣かないでください」
「......はい」
女の泣き顔は見たくない。これは、俺が昔から思ってることだ。男が女を守るなんて、生意気なことは言うつもりはない。だけど、涙が出てしまったときは、
男が守ってやる。
俺が、守ってやる。
「たく、あんた、建物の中で迷うなんて、おかしいわよ」
「ごめんごめん」
俺が、アリサの所に戻ると話は終わっており、もう、帰るところであった。それで、宿をとり、作戦会議をすることに。
「マッグルは、この村の西の洞窟を巣にしていることが分かったわ。盗賊もそこにいると思うわ」
「で、どうすんだ」
「明朝、二人で洞窟に突入、私が、盗賊を引き付けてる間に、あんたが、マッグルを仕留める」
「俺がマッグルを?」
「そうよ。悔しいけど、あんたの方が剣術は上だわ」
「分かった」
「それじゃあ、明日に備えてもう寝るわよ」
「ん、じゃ俺、部屋に戻るわ。おやすみ」
「寝坊すんじゃないわよ」
自分の部屋に戻りフェンリルと一緒に明日のことを話す。
「なあ、フェンリル。明日、宜しく頼むぜ」
「おうよ!」
「ところで、フェンリル。俺が今使える魔獣って、いるのか?」
「お前さんが使える魔獣か。多分だが、昔力にした魔獣なら、なんでも使えると思うぜ」
昔、力にした魔獣か。俺じゃない、誰か。いや、恐らく、正体は、この腕輪に封印されている、ベルセルク。そいつが、何百年な時を経て、この腕輪をはめた俺を助けてくれているのかもしれない。そう、あの時、アリサと出会った時の、あの頭に響く声も......
「もう、寝るか」
夜、外の騒がしさで目が覚めた。
「騎士団の方!大変だ!盗賊が!」
「なに!」
盗賊が来たのか!ドアを蹴り飛ばし、宿の外に出る。
アリサは既に、宿の外にいた。
「あんた、来るのが遅いわ」
そこに、広がっていたのは、人が居ない夜の村。しかし、所々に金やら食べ物やらが落ちている。盗賊が落としていったのだろう。村の人は家にこもっていると思うが。すると、そこに村長がやって来た。さっきの声の主は村長か。
「騎士団の方。盗賊がきて、村のメイドが――」
メイド......ルシアさん!
謎の胸騒ぎに駆り出され、俺は、走った。あり得ないでくれ、そんなわけない。と、自問自答しながら。