そんなことか
大惨事。この一言で事足りる。目の前の惨状を表すには。恐らく、ここにいる三人とも同じ事を考えているだろう。
「ひでぇな」
滅亡した国、アスリ王国の城の入り口があったところに来ている。壁はボロボロ、あちこちに血らしきものがこびりついている。
「多分、ここは魔獣の棲みかになっているわね」
「棲みか?」
「えぇ。魔獣が国を襲う理由は大体二つ。一つは棲みかを求めて、もう一つは食料を求めて。この二つよ」
「で?棲みかになってると判断した理由は?」
「よく耳を澄ましてみなさいよ。城の中から魔獣の声が聞こえると思わない?」
と、言われ俺は目を閉じて耳を澄ます。
確かに城の中から無数の魔獣の声が聞こえる。呻くような、俺達を威嚇するような、そんな声が聞こえてくる。
が、だからといって城に入らない理由にはならない。
「行くか?」
「そうね。噂によると、地下迷宮はこの城の一番奥に入り口があるらしいから」
そう。最後のツクヨミが居る地下迷宮に行くには、この城の中を行かなければならないのだ。なので、今すぐにも行きたいのだが、
「ルシアさん?大丈夫?」
「え?あ、はい?」
さっきから、というか、ここに来たときからガタガタ震えているのだ。無理もないけど。俺も、ベルセルク、という力が無かったらガクブルだろうからな。
こういう訳なんだが、どうすればいいんだ。ルシアさんをここに残すのも魔獣が近くに居るかもしれないから危険だ。つまりは、最初っから選択肢は一つ。
「ルシアさん。もうここまで来ちゃったので、一緒に来てくれますか?」
「あの、海斗さん」
「ん?」
「海斗さんが......手を繋いでくれたら行きます」
ルシアさんはそんなことを言った。
「それくらいのことなら良いですよ」
と、言い、ルシアさんの方に歩いて行く。何故か戸惑っているルシアさんの右手を俺の左手で握ってやる。
「んじゃ、行くか!」
「ちょっ!ちょっと待ちなさいよ。なんで海斗とルシアが手を繋ぐのよ!」
「お前も聞いてたろ?怖いんだよ。お前と違って」
「くっ!」
突っかかってきたアリサを軽くながし、背中に差してあるフェンリルを抜く。
「お熱いね。お二人さん」
「そんなんじゃねぇよ。それより出番だぜ」
「おうよ」
「なんか、色んな魔獣が居るから」
「それじゃ、行くわよ」
ルシアさんと繋いだ手はそのままで、城の中へ歩いて行く。
四人目のツクヨミ捜索、開始。