自分とベルセルクの直観
暗闇の世界に音だけが響き渡る。
「アァァァァ!」
「きたねぇ声だな」
なにも見えないが、耳と肌、そして自分とベルセルクの直感を信じて闘うことにする。
感じろ......絶対に音が聞こえるはずだ。
サレイの足音。空気が震え......右だ!
右から地面を蹴りあげる音。それとほぼ同時に俺は五歩ほど後ろに下がる。
「アァァァァ?」
疑問のうめき声なのだろう。上手くよけれたようだ。ならば、次は攻撃に転じる。
「かかってこいよ」
挑発して攻撃を誘う。感じなければ攻撃を喰らうことになる。ミスは、許されない。
神経を研ぎ澄まして、心でサレイを見る。僅かな空気の震え、それに音も逃してはならない。
地面を蹴りあげる音が聞こえた。その音は、俺の真正面から。横に動く。俺のすぐ横で地面に何かが降りた音。恐らくサレイは今、バランスを崩しているはず。ならば、
―――殺れ。
拳を振り上げ、力を込める。そして、力の限り振りかざす!
「おらぁ!!」
手に生暖かい物が当たり、それを俺の拳がぶっ飛ばす。メキメキと嫌な感覚が伝う。そして、急に手の感触が消える。それと同時に、何故か辺りが明るくなった、と思ったらすぐに元の暗闇に。
「どうだ」
恐る恐る目をあける。
「あれ?どこだ?」
そこにサレイは居なく、目に入ったのは近寄ってくるアリサ達だけ。
「サレイは?」
「あんたが殴ったらそれと同時に消えたわよ?」
なるほど。サレイが消えた理由が分かった。俺が殴ったのは右手だったのだ。腕輪がしてある右手でサレイを殴った。そして、俺の右手が触れている間にサレイは死んだのだろう。つまり、そのまま俺の腕輪に吸収されたってことだ。さっきの光はそれだったってわけだな。
と、いうことは、
「ツクヨミ。もういいよな」
「えぇ。三人目のツクヨミと契約は完了です」
やっぱりか。予想は的中した。
「海斗さん。体の方はどうですか?」
「あぁ。だいぶ楽だわ。まぁまだちょっと疲れは残るけどな」
疲労感はだいぶなくなってきた。夜ぐっすり寝れば、この疲れはとれるだろう。
と、ここでアリサが、
「ていうか、なんであんた目を瞑って戦ってたのよ」
「あぁ。アリサをぶん殴りたく無かったからな」
「え?」
「サレイの奴がアリサとかの顔をして、俺に攻撃を躊躇させようとしてたんだよな。だから、顔を見ないように目を瞑ったんだ」
「まぁ。それは酷いですね」
ルシアさんが反応してくれたが、アリサはというと、
「そ、そう。それより、帰るわよ」
それよりって、アリサが聞いてきたんじゃないか、と疑問に思いながら来た道を戻って行く。
ところで、なんでアリサはあんなに顔が紅くなってるんだ?
三人目のツクヨミ契約完了
残り一人