アリサちゃーーん!
「海斗さん!」
ビンカ連合国の宿に着いた。宿に着くなりルシアさんが駆け寄ってきて、ケガは無いか、と聞いてきた。実際、心配してくれるのは嬉しいのだが、
「海斗さん。それで、二人目のツクヨミと契約はできました?」
「あぁ。すこーし手間取ったけどな」
「それは良かったです」
笑顔で答えてくれるルシアさん。それじゃあ、この国の挨拶も終わったことだし、次の国はどこに行くのかと聞こう。
「アリサ、次はどこの国だ?」
「次は、カンリア国よ」
「ほー。どんな所だ?」
「カンリア国は独特の習慣と伝統を守り続けている国よ」
「オッケー。それじゃあ、明日早速、行きますか」
「そうね」
「飽きた~」
もう、何時間、いや何日間馬車の上だろうか。ビンカ連合国を出発してから、恐らく13、14日くらい経っている。最初は新鮮だった馬車もすでに飽きている。
「うるさいわよ!」
怒られた。いや、誰でもこんな長い時間馬車に乗ったら飽きるに決まっている。
「というか、暑くない?」
「確かに、暑くなってきましたね」
「そう言われれば暑いな」
そう。いつの間にか気温が急上昇。じんわりと汗をかきはじめていた。これは、まさか、
「なあ、一つ聞いていいか?」
「なによ」
「カンリア国って暑いか?」
「えぇ。砂漠のど真ん中だから暑いに決まってるわ」
「あぁ、そう......」
極寒の次は灼熱か。
「熱い!もう、いろいろ熱い!」
馬車から降りた瞬間、熱気が体を包む。見渡す限りの砂漠。その所々にポツンと家がある。これがカンリア国。あそこか。俺の視線の先には他の家とは比べ物にならない程の大きさを持つ宮殿が建っていた。
「あそこか?」
「そうよ......」
ん?いつの間にかアリサの顔が落ち込んでいた。なんかあったのだろうか。
「どうした?アリサ」
「実はね、ここの国王が......」
「国王が?」
「......辞めた。行ったら分かるわ」
アリサがここまで元気を無くすのは珍しい。一体なんなのだろうか。国王がなんなんだよ。
「ハルバニア王国から参りました。騎士団隊長、アリサ=イーグルです」
宮殿の中に入り、扉の前で、国王に話しかけると、扉がゆっくりと......
「アリサちゃーーん!」
「ちょっ、止めなさいよ!」
あれ?アリサにいきなり抱きついたこいつは、まさか、国王?大層な服に身を包んでいる。間違いない。国王だ。
「あーー!もう、うっとおしい!」
国王にアリサの鉄拳制裁が下る。
「アリサちゃん。どうしたのさ!久しぶりに会えたっていうのに!冷たいじゃないか!」
「私が、冷たく無かったことなんてなかったわよね」
「あ、確かに。でも今日から―――」
「優しくはならないわよ!」
なんだ。この国王......