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魔殺しのベルセルク  作者: のぶなが
精霊ツクヨミ契約編
11/23

青空は変わらない

手足の感覚が無い。風が凍っているかのようだ。ここは、ビンカ連合国。見渡す限りの銀世界だ。初めて見た。こんな真っ白になるほど雪が降り積もる光景を。だが、


「さぶっ!」


ガタガタ震えながら一言。魔獣の毛皮コートを着ているのだが、恐らく役にたっていない。そして、俺達は足元に積もる雪を踏み固めながら今、ビンカ連合国の城へと歩いている。回りを見渡しても人は居ない。こんな寒い日に外に出る人は居ないのか。

そして、馬車がなぜいないかと言うと、寒すぎて話が入ってこなかったが、どうやら馬に雪はダメらしい。


「まだか?城」


「もう少しよ。我慢しなさい」


「海斗さん。荷物お持ちしましょうか?」


ルシアさんが気を使って荷物を持ってくれると言うが、


「いや、大丈夫だよ」


ガクブル震えながら答える。ここで「お願い」などと言うと再びアリサとのケンカの元だ。なので、話を別のところへ。


「ツクヨミは寒くねぇのか?」


「えぇ。わたくしは感覚は無いので、痛い、熱いなどは感じないのです」


ツクヨミは基本的に腕輪の中なのだが、こうして回りに人が居ないときは腕輪の外に出てきて俺達と話している。どうやらツクヨミは寂しがりやらしく、ことあるごとに、腕輪から出てきては喋っている。きっと、ベルセルクが封印されてから、ほとんど誰とも話していなかったのだろう。


「まぁ。そうだよな。精霊だもんな」


そう言いながら何気なく空を見上げた。雲ひとつ無い清々しい青空。ここで、気づいた。この青空はどこに行こうと変わり無いんだな、と。たとえ異世界に来ようと。何故か元の世界を急に懐かしく思えてきた。もう元の世界のことなどあまり覚えていないが。そして思うのだ。なんか俺ってアリサに......


「見えたわよ。連合国のお城が」


考えていたことをアリサに中断されつつ空にあった視線を前に移す。すると、


「でか!」


そこにあったのは俺達が今まで見てきた城の三倍はある建物だった。


「あそこが、このビンカ連合国のリーダーが居るところよ」


俺は思う。くだらない事なのだが、


すげー金あるんだろうな......







と、言うことで、何事も無く挨拶は終わった。本当に何もなかった。戦いも申し込まれなかったし。チョロっと挨拶して終わってしまった。しかし、一つ分かったことがある。国王がむっちゃ優しかった。城に入ると暖かい部屋に飲み物。そして、疲れているだろうからと、雪国でも乗れる馬車をくれた。これからビンカ連合国は最優先で考えていこう。


そして、俺達は今どこに向かっているかと言うと。国王にもらった馬車に乗って、二人目のツクヨミが居る森へ向かっている。だが、ルシアさんは、森が危険そうなので、宿で待ってもらうことにした。アリサにはどっちでもいいと言ったのだが、


「結局、付いてくるんだな」


「当たり前じゃない。海斗がここで死んだら挨拶回りはそこで中断、私の面目丸潰れだわ」


「ああ。そうか」


「それより、着いたわよ。森」


いつの間にか止まっていた馬車。外へ出る。やはり一面雪の世界だ。そして、上には青空。と、ここでさっき城を見る前に考えていたことが頭によぎる。


「いくわよ」


その考えは、声をかけてくるアリサに、言わなければいけないことだと思った。


「アリサ」


「なによ......」


「なんか、悪いな」


「え?」


「いや。なんか、な。俺のベルセルクのせいで色々迷惑かけちまってるような気がしてさ。アルト村の件だって明朝に行けばもっと楽に勝てたはずだし、副隊長のこともそうだ。それに、今回のツクヨミのことも、さ」


そう。俺がこの世界にやってこなければ、アリサは今もいつも通りの生活でやっているのだろう。騎士団の隊長の仕事を真っ当しているのだろう。そんなことを聞いたアリサは、一瞬、驚いた顔をしたが、すぐにいつもの偉そうな、しかし、見慣れた顔に戻り、


「なにいってのよ。乗り掛かった船じゃない。元はといえば私が、副隊長にする、なんて言い出したのも悪いし」


あれ?いつものアリサなら、「ほんっとにそうよ!」とか言いそうなのに、それを覚悟で言ったのに、


「おい、アリサ、お前熱でもあるんじゃないか?」


「な、なにいってんのよ。無いわよ!熱なんて!それより、早く行くわよ!モタモタしない!」


これだよ。これ。このアリサだ。今度はしっくりきたので先を歩いているアリサに着いていく。



この先も続いている青空の下を。


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