騙された!
これはもう、決定事項だったのだろうか。それとも『ベルセルク』という者の宿命なのだろうか。
「わたくしと、契約していただけませんでしょうか?」
またかよ。もうルシアさんの件で契約はこりごりなんだが。とりあえず、
「えーと、ベルセルクの精霊ってなに?」
「わたくしは、大昔に契約をいたしたのです。ベルセルク様と」
「はぁ」
「それで、わたくしがベルセルク様に憑く代わりに、ベルセルク様の自我を保つ契約を交わしたのです」
「自我を保つ?」
「そうです。ベルセルク様の力は強大です。ですが、得る力に比例して、憑依させる魔獣の力も大きくなります。ベルセルク様は、あまりに強大な力をもつ魔獣を憑依させると、魔獣に自我を乗っ取られる場合があるのです」
「なるほど。つまり、ツクヨミは強大な力をもつ魔獣を憑依させても、自我を保てるようにする、と」
「その通りです。さすがの私でも自我を保てない魔獣もいますが」
契約、か。きっとこれはしなくちゃいけない契約なんだろうな。まぁしといて損はないか。
「いいぜ。契約しても」
「ありがとうございます!」
「んじゃ。なにすればいいんだ?」
「えーと、とりあえず右手で私に触れてください」
「おう!」
と、言われたので、右手をツクヨミに伸ばす。と、ここで、気づいた。もしかして、ツクヨミは、この腕輪に吸い込まれるんじゃないかと。
そんなことを思いながら右手でツクヨミに触れる。
「それでは」
ツクヨミは、一言発すると、やはり光の塵となり腕輪
に吸収された。えーと、どうすれば......と、思っていると、腕輪から、白い光が出てきて、ツクヨミの姿に。
「これで契約完了です。わたくしは、こうして自由に腕輪を出入りできます」
「ふーん。意外に簡単だな」
正直、拍子抜けだ。契約、というと、もうちょっとバトルとか、謎解きとかあると思ったが。
「それでは、あと四人、頑張ってください」
「え?あと四人?」
騙された。
「はい。わたくしを中心に四人。全員を腕輪に収めないと意味がないのです」
完全に騙された。
「......きいてねぇ!」
あーあ。
「と、言うわけだ」
「たく、あんたは面倒くさい話を持ってくるのが得意ね」
朝。昨晩の事をアリサとルシアさんに話した。もし、ついてきてくれるのなら来てくれ、と。
「私は、ついていきます」
「で、ツクヨミ。どこに居るんだ。残りの四人は」
「二人目はビンカ連合国の森林です」
「ビンカ連合国って、私達がこれから挨拶にいくところじゃない」
「じゃあ、好都合だな。行くか」
「行きましょう。海斗さん」
こうして俺たちはビンカ連合国に向けて再び馬車に揺られる。また一人仲間を加えて。