06 対人戦
クロアと奏が転送されたエリアは縦500メートル横500メートルの正方形でできている。あたりに姿をさえぎるものはなく、さながら西部劇にでてくるような荒野である。
クロアの両腕にはハンドガンが二丁握られておりいつものような大型ライフルのすがたはない。対する奏の腕には長さ約140cmの日本刀が右手で握られており、だらんと地面につくような構え方をしている。
2人の距離は200メートルほど離れておりここからではどちらの攻撃も届かない。
あたりが徐々に静寂に包まれると、次の瞬間!
空気が爆発する爆音とともに2人は地面を蹴り出した。それと同時に2人の距離はみるみるうちに縮まってゆく。
最初に行動を起こしたのは、クロアだった。クロアは威嚇の意味も込めて2,3発弾丸を放った。
空気を切り裂く音とともに、弾丸の一発は奏を捕らえた……ように思われた。が、しかし奏に当たる約30センチ手前、彼女の光速に振り上げられた刃がそれをはじき返した。
(やはり、通常の弾丸で捕らえれるような相手じゃないか…)などと思いつつも、クロアは目にも留まらぬ速さでハンドガンを連射する。しかし、放たれた弾丸はやはり、彼女にすべて受け流されてれてしまう。その間にも2人の間合いは縮まってゆく。
クロアのハンドガンの弾薬が尽きる頃には、彼女の刃が後一歩で届く距離まで詰まっていた。
一歩踏み入ると彼女は、はじめの一太刀を振り上げた。とっさにクロアは両腕をクロスさせ、手元の銃で受け止めた。
「ギーッ!」とあたりには、金属の擦れる激しい音が鳴り響いた。2人の力は均衡している。
「ねえ、クロア君」奏はクロアに問いかけた。
「なんだ?」クロアは答えた。
「さすが、クロア君だね。まさか私の一太刀を受け止めるなんて」
「まあな。しかし、お前もすごいよな張り巡らされたを俺の弾丸をすべてはじき返すなんてよ」
「えへへ、すごいでしょ。今回の戦いは絶対に負けれないからね!」
「そうか、だがこれで全力じゃないよな?こんなんじゃ俺は倒せないぞ!」
「まだまだこれからだよ」
「そうか…」クロアはそういうと二丁の銃で刃を押し上げた。その反動を利用して、距離をとった。
(にしても、なんて切れ味だよ。受け止めただけでハンドガンが使い物にならなくなるなんて)
クロアのハンドガンは普段よりも頑丈な金属でチューンアップしてきたのだが、いまは粘土のようにたやすく切れ込みが入れられている。
「やっぱ、こんなんじゃだめか」とつぶやくと
「ノア、単発式マスケット銃10丁転送ヨロ」
「かしこまりましたご主人様」
そうすると、10丁のマスケット銃がクロアの近くの地面に突き刺さった。クロアは手持ちのハンドガンを捨て、2丁銃を手に取った。この銃の先端には刃が露出しており、これでも十分にダメージを与えることができる。
そうしている間に彼女は間合いを詰めていた。
再び彼女の腕から刃が放たれる。クロアはそれを右腕の銃で器用に受け流すと、少しの間合いを取り左腕の銃で彼女のほうへ狙いを定めた。
奏は一瞬身構えたが、クロアの狙いはまさにそれだった。クロアは左腕の銃から弾丸が放たれる。弾丸は彼女を捕らえることなく地面をとらえていた。
その時、彼女の周りで大量の砂煙が舞い上がった。クロアの弾丸は彼女をとらえたのではなく、彼女の視界をとらえていた。
クロアは弾切れとなった銃を捨て弾薬の入っている銃を手に取り7発連続で放たれた。このとき放たれた弾丸は単発式という制約の形で威力は最大限まで高められていた。
さすがに、最大威力の弾丸を当てたのだ。奏はもう、体力は残ってないだろうと思っていた。
クロアは彼女に背を向けて歩き出し模擬戦を終了しようとしていた。
だが、その瞬間!
「ヒュンッ!」という音が聞こえあたりに暴風が広がった。後ろを振り向くと視界はいっきに回復しており、そこには奏が立っていた。
「あぶ…い所…った」
「だから、…断する…って言っただろ」
「ごめん、ごめん。こっから完全全力でいくから。サポートよろしくね」
「しょうがないですね。マックスですよ」
(なに独り言はなしてるんだろ?変だな)クロアは心の中で思っていた。
だが実際、彼女の姿は先ほどと少し異なっていた。彼女の刀の刃は真っ赤なオーラに包まれていたし、雰囲気も少し違う。何よりも先ほど違うのは彼女の右の瞳が緋色に染まっていた。
俺は弾丸の残っている銃2丁を手に取り、彼女の接近に備えた。
彼女力強く地面を蹴り飛ばした。先ほどとは比べ物にならないほど速い。
(おいおい、冗談だろ)と内心思いつつ彼女の動きを目で追った。
気づいたときにはクロアのすぐ近くまで来ており、左からなぎ払いが飛んでくる。
クロアは必死に体をひねり彼女の一撃を受け止めた。しかし、受け止めきれずに横に吹き飛ばされた。その瞬間は肺の中の空気が無理やり押し出される気がした。
吹き飛ばされながらも何とか受身をとり、彼女の方へ銃口を向けた。だが、彼女はすでに次の一撃を振り下ろす動作に入っていた。
彼女はそのままクロアの銃を真っ二つに切り裂き、その勢いで俺にこんしんの突きを放っていた。
その動作に反応できるわけもなく、彼女の刃は俺を貫き、そして切り裂いていた。
(これが奏の本気かよ……)そこで俺の意識は途切れた。




