04 決断
「どういうことですか?」クロアと奏は息の合った様子で聞き返した。
「そんなの読んで字の如くだ。クロアと奏ちゃんが模擬戦をやる。そんで奏ちゃんが勝てばクロアがパートナーになるってわけだ。」
「そんな、むちゃくちゃじゃないですか。そんなの俺やりませ……」
「あーちなみにクロアに拒否権はないからな。もし拒否したらクロアは俺の店に出入り禁止な」
「そ、そんなー」
クロアの顔が青ざめた。ロギーさんの店に入れないということは、つまり、ロギーさんのまかないメニューを二度と食べれないということだ。そんなことはありえないし、あってはならないことだ。
「と、言うことだ。いいよな奏ちゃん?」
「えっ、あ、はい。」奏はワンテンポ遅れて答えた。
「でも、いいんですか?そんな無理やりで」
「いいんだよ、俺が許すから」ロギーは笑ってこたえた。
「そんじゃ、クロア。参加するんだな?」
「わかりました。模擬戦やりますよ……」
ロギーの言葉に観念したのかクロアはこたえた。
「そんじゃあ、決定だな。クロアそんな顔するなって。模擬戦終わったら、俺の特製まかないメニューをごちそうしてやるよ」
「絶対ですよ」
「ああ、男に二言はねえ。あ、もちろん奏ちゃんにもごちそうしてやるからな」
「ありがとうございます」
そんなこんなで、俺は模擬戦をやることになってしまった。
「そんじゃあ、時間は明日の朝10時。場所は第二演習場で、そのときのジャッチは俺が務めるということでいいか?」
「いいですよ」
「わかりました」ふたりはそれぞれ答えた。
「クロア、はじめに言っておくが模擬戦だからといって、手を抜くんじゃないぞ!」
「わかってますよ。俺だってやるからには全力をつくします」
「いい心がけだ。それとクロア明日はお前のライフルは使うなよ」
クロアの使っているライフルとは、大きさ約180センチメートルの大型なものだ。クロアが戦場に出るときは必ず装備しており、そうとうの愛着がある。それにこのライフルにはクロアにとって忘れられない思い入れがある。
「え、どうしてですか?」クロアは問いかけた。
「特別ハンデってやつだ。それにお前はそれに頼りすぎている。たまにはその武器がないときも想定して戦ってみろ」
「そういうことなら……わかりました」正直ハンデという言葉には不服があったがクロアは了解した。
「それじゃあ、俺は明日の準備をしないといけなそうなんでそろそろ帰らせてもらいます」
そういうと、クロアは席を立ち上がった。
「そうか、それじゃあクロア、また明日な。楽しみにしているぞ」
ロギーはそういうと、クロアはぺこっと頭を下げて出口のほうへ向かった。
「あ、クロア君!」
「なんだ、奏?」
「明日はお互いにベストを尽くそうね!」
「ああ、そうだな」そういうとクロアは店を後にした。
そのときのクロアの表情は、奏にとって、少し喜んでいるように見えた。
クロアが出て行くといつもどうりの店の空気に戻った。
「でも、本当にあんな強引でよかったんですか?」奏が問いかけると
「あいつには、あれくらい強引なほうがいいんだよ」と答えた。
「それに、あいつはいつまでも昔のことを引きずっている。このままじゃあいつは自分の心の壁をこえられねぇ。だから俺は今回のことで少しでも壁を越える足がかりになればいいと思っている」
「心の壁ですか」
奏はその言葉を聞くと、いつか自分も越えなきゃいけないんだよね……なんて思ってしまった。
「壁は越えなきゃいけないんだよね」彼女はボソッとつぶやいた。
「ん?」ロギーは聞き取れなかったのか。奏に聞き返した。
「いいえ、独り言です。それじゃあ、私も今日はこれで帰ります。」
「おおそうか、それじゃあまた明日な。」
奏はロギーに頭を下げると店を後にした。
気づけば、店の中はロギーだけとなっていた。
「あいつらにはあんなことを言ったが、本当に壁を越えなきゃならないのは俺のほうかもしれないな」
そんなことをつぶやくと、ロギーは今日は早めに店を閉めるようにした。




