01 プロローグ
「ターゲットまで、約500メートル。目標は中世の時代にあるような動く鎧。数は3体。まだこちらには気づいていない」 なんてことをつぶやきながら、クロアは狙撃態勢にはいった。狙いを鎧の頭部にさだめ、そしてトリガーを引いた。
次の瞬間、一筋の光となった弾丸は、鎧を貫いた。一瞬、鎧は硬直したように見えたがすぐに、光の粒となって、消滅した。
その一撃に気づいたのか、残りの鎧たちはものすごい金属音をたててこちらに向かって走り出してきた。
しかし、まだ距離は十分なほどある。クロアにとってはこの2体を打ち抜いてもお釣がくるほどだ。
クロアは残りの2体に狙いをさだめ、再びトリガーを引いた。この弾丸も鎧を貫き、そして、鎧たちは光の粒へと変わった。
光の粒が完全に消滅するとあたりはまた、狙撃前のように静かになった。
「――ノア、いまの状況は?」クロアが問いかけると、右手の腕輪から小さな妖精が現れた。
「どうやら、いまの戦闘で最後のようですね。敵らしい敵はいません」
「じゃあこれでクリアかっ。疲れたーー」
「お疲れ様です。獲得したものはいつものように転送しておきましょうか?」
「そうしておいて」
「かしこまりました。では……」そういうと、ノアは再びブレスレットに戻っていった。
――ミッション・コンプリート
脳裏には、そんな言葉が響いた。
その言葉を聞くと同時にクロアは光に包まれ転送された。
いまの故郷であり生活の場であるイグドラシルへと戻るために。
あたりを見渡すと、すっかり夕暮れになっており、いまにも大地が太陽を飲み込もうとしている。
「そういえば、はじめてこの世界に来るときもこんな夕暮れ時だったな……」クロアはそんなことをつぶやいていた。
そう、クロアがここに、この世界に来たあの日、あのはじまりの日……
あの日から、俺の人生は180度変わったのだ。




