16 ギルドへ
「アルフヘイムはイグドラシルと違って静かな町なんだな」クロアはそう問いかけた。
「そうだよ。イグドラシルと違ってにぎやかな町でもないからね。でも、その分静かだし、過ごしやすいよ」
「たしかにのどかですごしやすいな。そういえば、俺たちはどこにいけばいいんだ?キングはこっちにこいとしか言ってなかったけど……」
「うーん……とりあえずギルドに行けばいいんじゃないかな?たぶん」
「そうか、じゃあ行って見るか。どうせ他に行くあてもないからな」
「うん!じゃあ行こう!案内は私がするよ」
「ああ、頼んだ。俺は全く初めてのところだからな」
「じゃあこっちだよ!」そういうと奏はクロアを案内しだした。
神殿から出ると、アルフヘイムの町並みを見ることができた。建物は西洋風で主にレンガ造りのものが多い。
「私のいたギルドは商業区を抜けた先にあるんだよ」
そういうと奏は、クロアを案内しながら商業区を歩いていく。
のどかな町といっても、商業区には活気がある。やはりアルフヘイムも多くの人が生活しているのだろう。
辺りには、商品の売り込みをするもの、アイテムを買ったりなどショッピングをしているもの、はたまた、意味も無くうろついているもの、様々なひとが行きかっている。
その光景はイグドラシルとなんら変わりは無い。
この町も何気にいいところだな。クロアは心の中でそう思った。
「あ、見えてきた。この先にあるのが円卓の騎士のギルドだよ」
奏がそういうと、クロアの視界には大きな建物が目に入った。
大きさは、ギイロの店よりも少し大きく建物もがっちりとしている。ギルドとしては申し分のない建物だ。
「なんか、ものすごい建物だな」
「そう?まあ、少しおおきすぎるよね。このサイズなら中規模のギルドだって十分なサイズだし、私たちの小規模のギルドは場所が余るほどスペースがあるからね。まあ、キング曰く、1人1人窮屈な思いをして欲しくないからこの大きさにしたんだって。そのときは財政面でも難はなかったしね」
「たしかに奏のギルドはすさまじかったからな」
そんな話をしていると、ギルドの近くに誰かの人影を見つけた。
「キングだあ。久しぶり!」
「うん?奏か久しぶりだな!姿を見ると元気そうだな」
「お久しぶりです。キング」
「となると、クロアか?お前も久しぶりだな。前回のミッションで参加して以来かな?」
「まあ、そうですね」
「そうか、そうか。まあ立ち話もなんだ。中は入れよ」
そういわれると、クロアと奏はギルドの中に案内された。
中では見覚えのある面々と対面した。
「みんなも、久しぶりだね。全然変わってないね」
「まあね、奏ちゃんも前あったときのままかわいいね」とめがねをかけた青年が話しかけた。
確か、この青年はナイトという名前だったはずだ。その容姿もさることながら、魔術の腕はギルドの中でもず場抜いて高く、また大賢者の異名も持つ。
「ナイトもお世辞がうまいね」
「いやいや、本音だよ」
「それにしても、奏ちゃんも元気でなによりだよ」続いて中世の騎士のような格好をした男が話しかけてきた。
この男はルークといったはずだ。温和な性格からか、常に仲間のことを気にかけており、ミッションでは騎士としてギルド中核をなしており、絶対的な防御力でギルドの面々を助けてきた。別名パーフェクトガードの称号をもつ。
「うん、ルークも元気そうだね」
「おかげさまでね」
「そういえば、ビショップの姿が見えないようだけれど……」
「ああ、彼女は今日はソロでミッションに行ってるよ」
「そうなんだ、久しぶりに会いたかったのに残念」
「まあ、今日中には帰ってくるから気長に待つといいよ」
「うん、そうする。それまでちょっと元私の部屋にいていいかな?いろいろ整理したいし」
「いいよ。ビショップが戻ってきたら知らせるよ」
ありがとう。奏がそういうと自分の部屋へと姿を消した。
「それよりクロア、ここにきたってことは俺たちに力を示しにきたんだな?」キングがクロアに問いかけた。
「そうですね。というか、もし行かなくてもキングたちが俺らのとこに来てましたよね?」
「まあな、奏の顔も見たかったしな。それにクロアの実力も知りたかったしな」
「あいかわらずですね」
クロアはため息混じりにそう答えた。
「それで、模擬戦はいつやるんですか?」
「そうだなー、今日中にでもやっちまうか」
「今日中なんてずいぶん急ですね、俺は旅の疲れが残ってるんですよ」
「まあ、あせるなって。今日って言ってもすぐにはやらねえよ。とりあえずビショップが帰ってくるまでだな。それまで休憩をとるといいさ」
「そうですか、じゃあお言葉に甘えてベット貸してくれますか?ちょっと一眠りしたいんで」
「ああ、構わないぞ。空き部屋があるから好きに使ってくれ」
「それじゃあ、お休みなさい」
「ああ、ゆっくり体力回復氏とけ。今夜はハードになるからな」
クロアは、キングの話を聞きつつ、だるそうな姿で空き部屋のほうへ向かった。
ベットまでたどり着くと、そのまま重力に身体を任せベットへと倒れた。そして気づかぬうちに眠りへとついた。