13 これから
ドアが開くような音がした。
「クロア君目が覚めたんだ、身体の方は大丈夫?」
ドアを開けたのは奏とロギーさんだったようだ。
「ああ、大丈夫だよ」
「良かった。あのあとすぐに目覚めなかったから心配しちゃったよ。それでとりあえずクロア君の家に行ってベットに寝かせてたわけ」
「悪い悪いありがとな。それで、俺はどれくらい意識を失ってたんだ?」
「うーん、いま夕方の8時だから、だいたい9時間ちょっとかな」
「うわっそんなに寝てたのかよ」
「それはそうとだ、」ロギーが話しに割ってきた。
「俺の特製まかないメニューおごるって言っただろ、用意ができたから俺の店に来いよ。お互いにいろいろはなしたいことはあるだろうが続きは俺の店でしようぜ。しかも、今日は特別にお前らのために貸切だから」
「やったー」
「ロギーさん太っ腹ですね」
「まあな、このくらい朝飯前だからな」
「それじゃあ、クロア君一緒にいこうか?」
「そうだな、いくか!」
こうして、3人はクロアの家を後にした。
場所が変わって『まかないの店ギイロ』に3人はいた。
「さあ、今日は俺のおごりのようなもんだ、好きに食べてくれ」
テーブルの上にはみたこともないような料理が並んでいる。種類は洋風で高級レストランに並んでいてもおかしくないよなものばかりである。
「本当にこれたべてもいいんですか?」
「当たり前だ。料理ってのは食べるためにあるもんだろ。それに作った方にからしても食べてもらったほうがうれしいんだよ」
「そんじゃあ、遠慮なく食べちゃおうか。なあ、奏?」
「う、うんそうだね。食べよっか」
まず、2人が食べたのはサラダだった。野菜は瑞々しくシャキシャキしていておいしい。さらに特製のドレッシングが食欲をそそる。
次に食べたのがスープである。このスープはとてもこくがあり、一口飲んだらまたすぐ、二口目に行きたくなるおいしさだ。
メインとして食べたのはローストチキンだ。表面はパリパリに、中身はジューシーに焼けており肉汁が口の中にあふれ出てくる。もうおいしいとしか、言葉が出てこない。ホントにロギーさんいい仕事しているよ。
そんなことを思いながらも、まかないメニューをすべて食べてしまった。
食後にクロアは紅茶を、奏はコーヒー(ブラック)を頼んで一息をついていた。
そんな中、口を開いたのは奏のほうだった。
「ねえ、クロア君、パートナーのことなんだけどさ……」
「うん」
「やっぱ、なかったことにしてくれないかな?」
「えっどうして?」クロアはその言葉に驚きを隠せなかった。
「うん、私はクロア君との模擬戦に勝ったよ。その約束で私はパートナーになる約束だった。でもそれじゃあ、クロア君の意思を全部無視しちゃう気がしてさ。それに、クロア君が意識を失っている間に聞いたんだけど、実をいうとクロア君のハンデは私が勝てるようにするためにつけたらしいの。だからもし、ハンデが無かったら、私が負けていただろうし……」
「だから、今回の戦いはなかったってことでいいかな?」
そういうことか、クロアは彼女が拒否した理由に納得を持った。それに、ロギーがハンデだした理由はそういうことかよ。一杯食わされたぜ。
「なあ、奏。俺のお願いを1つ聞いてくれないか?」
「えっ、クロア君のお願い?」
「ああ、改めてお願いする。奏俺とパートナーになってくれないか?」
その一言をいうのが、妙に恥ずかしかった。クロアは顔を少し赤みがらせながらそう思った。
「本当に本当なの?急にどうして?」
このとき動揺が一番隠せなかったのは奏かもしれない。
「奏との模擬戦の後、俺は意識失っただろ?あの後にいろいろと師匠とのこと思い出しちまってな。いまのままの自分じゃダメだな、そろそろ、新しい一歩も踏み出さなきゃなとおもって。それにいつまでも昔のことを引きずってたら師匠に怒られちゃうしな」
そうクロアは笑みを浮べながら答えた。
「それじゃあ、パートナーになってくれるんだね!うれしい」
「だからこれからもよろしくな」
「うん!こちらこそ!」
「今のままじゃ、まだ弱いかもしれないけれど、いつかは守れるくらいに強くならなきゃな。だから師匠、もうしばらくの間俺たちを見守ってくださいね」心のなかでクロアはそうつぶやいた。
「どうやら、お互いの話がまとまってよかったじゃねえか。よし、今日は朝まで貸切にするぞー」
「ちょっとロギーさんいいんですかそんなことをして」
こうして、クロアと奏のパートナーとしての新たな時間が始まった。