12 現実
「えっ?師匠が……」
「ああ…お前を守るためにな」そうキングは告げた。
その事実がクロアに知らされたのは、戦い終結から2時間後のことだった。
あの戦いの後、クロアは後遺症のためしばらく起き上がることもできづにいた。もっとも、いまのはなしを聞いて起き上がる気にもなれなかった。
「それは、本当なんですか?」クロアは嘘だと言ってくれと言わんばかりに問いかけた。
「残念ながら事実だ。クロアがあの攻撃を受けたあと、あいつは、紅羽は全力であいつに攻撃を仕掛けたんだ。文字どうり持てる力すべてを使ってな。そして紅羽はあいつを命がけで倒したんだ」これがクロアの知らない事実だ。
「そんな……俺のために」
「それと、これをクロアに渡そうと思んだ」そういうとキングはあるものをクロアに手渡した。それは紅羽が愛用していた魔銃だった。
「これは?」
「この銃だけが戦場に残っていたんだ」
クロアはその魔銃を身体全身で受け止めた。そこに師匠がいるかのように……
「それで、言いづらいんだが、クロアはこれからどうするつもりなんだ?君のパートナーである師匠はこの世界からいなくなっち待ったんだ」
「――しばらくひとりでいようと思います。気持ちの整理もしたいですし」
「そうか、君がそう決めたのなら私は何も言わないが、まあなにかあったら私たちに連絡するといい」
「わかりました」
「それじゃあ、私たちはそろそろここを立ち去ろうと思う。師匠のことは本当に残念だったな」
「――こちらこそ、いろいろとありがとうございました」
そういうと、円卓の騎士のメンバーはその場をあとにした。離れ際に、クイーンと呼ばれていた少女が声が聞こえた。
「あんまり、気を落とさないでね」
「ただいま」
クロアは、師匠と住んでたところへ帰宅した。いつもなら2人で帰っていたのがいまは1人での帰宅だ。
そのことを感じると、改めてもうこの世界に師匠がいないという事実を痛感させられた。
「もう、あの頃の時間は戻ってこないんだな……」クロアしかいない空間に静寂が響き渡った。
そういえば、昔師匠とこんな話をしたことがある。
「なあ、クロアもし俺がこの世界から消えたらどうする?」
「どうしたんですか?急にそんなこと聞いて」
「いや、なんとなくな。なあ、どうする?」
「そりゃー悲しむに決まってるじゃないですか」
「ふーん」
「なんですかそのつまんなそうな反応は」
「いや、べつにな」
「それじゃあ、もし師匠が消えたら俺はどんな人になって欲しいですか?」
「そうだな、俺は誰かとまた、パートナーを組んで欲しいな。そして、さらに強くなって欲しい。そのパートナーを守れるようにな」
「そうですかぁ」
「まあ、俺が消えるなんてそうとうことが無ければないけどな」そう師匠は笑って答えた。
「まさか、現実になるなんて思いもしませんでしたよ。師匠……」
「師匠、しばらく師匠のお願いは聞けそうもないですね。少なくとも俺の気持ちが完全に整理されるまでは」
この日から、クロアは心に決めた。
しばらくは1人で生きていこう。自分が他人に守られるのではなく、守れるようになるまでは。
だから師匠、その日が来るまでの間、俺のことを見守っててくださいね。
これが、クロアと師匠の出会いであり、別れなのであった。