10 決意
「神討伐ですか?」クロアは問いかけた。
「クロアも噂には聞いたことがあるだろ?」
「たしか、神の化身のモンスターを倒すミッションですよね?」
「そうだ。正確に言えば神獣種のモンスターの討伐だな。それと、討伐に成功すれば神器と呼ばれる特殊なアイテムを得ることができるわけだ。身近な例をだせばクロアの持っている大型ライフルとかだな」
「この武器がその神器だったんですか?」クロアは驚いた表情を見せた。
「そうだぜ!前に言わなかったっけ?」
「言ってませんよ」
「言ってなかったか。悪い悪い」
「それで、話を戻そう。実は神獣種のモンスターを倒せばもう1つ手に入るものがある」
「まだ、なにかあるんですか?」
「ああ。もう1つ手に入るものって言うのがこの世界の起源の記憶だ」
「記憶……ですか?」
「そうだ。つまりこの記憶ってやつが俺たち全員が求めているものを完成させるパズルのピースってわけだ」
「そうなんですか!じゃあ今回もそのミッションに参加するんですか?」
「俺はその予定だ。ただ、クロア誘ってなんなんだが、今回の参加はよく考えて欲しい。今回の戦いは普段のように生ぬるいものじゃない下手をすれば大きな犠牲が出る。その犠牲の中にクロア、お前が入るかもしれないからな」
「犠牲……」
その言葉がクロアの心に引っかかった。噂に聞いた話だが、神討伐に生半可な覚悟で行ったものは二度と帰ってこないと聞いたことがある。師匠が警告するのだからおそらく真実なのだろう。もしかしたら、師匠の足を引っ張ってしまい師匠が命を落としてしまうかもしれない。そんな不安が頭の中を駆け回った。
「まあ、すぐに答えを聞くわけじゃない。残りの日にちでゆっくり考えてくれ」
「わかりました」
そして、6日後の夜、クロアは師匠に答えを出していた。
「師匠、俺も連れて行ってください。俺は師匠の力になりたいし、この世界の起源の記憶に興味があります」
「そうか、覚悟が決まったか。自分で決めたことなら、俺は口を出さねえ。ただし、1つ忠告がある」
「なんですか?」
「俺の力になりたいとかは、思うな。何よりも自分の身を第一に考えて行動しとけ。これが俺の連れて行く条件だ」
「わかりました」
「そんじゃあ、明日の準備をしておきな!そんでもって、万全の体勢で戦えるように今日は早く休みな」
クロアはうなずくと、手早く明日の準備をし、師匠に言われたとうり、早めに休むことにした。
翌朝、クロアと紅羽は朝食を済ませ、ミッション参加のためイグドラシルの中心の神殿へと向かった。
いつもはここの神殿から、転送されミッションを開始しているのだが、今日向かったのは、いつものところよりもさらに神殿の奥深くだった。
神殿に着くとそこには、異様な空気が流れていた。様々な武装をした人々が2~30人ほどいた。おそらく今回のミッションに参加する人たちなのだろう。緊張の糸が切れんばかりに張り巡らされている。
そんな中ある一団がこちらが話しかけてきた。
「紅羽じゃないか。久しぶりだな」
「なんだ、お前らか久しぶりだな。円卓の騎士(ギルド・ナイト)のメンバーを全員そろえてきたってことは、今回のミッションに参加するってことか?」
「そうだよ。今回はなんだか嫌な予感がするからメンバー全員を連れてきたわけだ」
円卓の騎士とは、少数先鋭で構成されているギルドでメンバーは全員で5人いる。また、彼らはお互いにコードネームをつけておりキング、クイーン、ルークといったチェスがモチーフの名前である。
「ところで、さっきから君の隣にいる少年は?」
「ああ、こいつはクロアだ。いまは、俺の弟子でありパートナーだな」
「へえー。紅羽がパートナー組むなんて珍しいな。クロアよかったな、お前さんは師匠にだいぶ気に入られているみたいだな」
「そうなんですか!うれしいです」
「これから、いろいろ付き合っていくことになりそうだな。俺らともよろしくな」
「あ、こちらこそよろしくお願いします」
「クロア、そろそろ気を引き締めろよ。もうすぐ開始の時刻だ」
「わかりました」
「じゃあ、俺らもそろそろ気を引き締めるか。紅羽今回もよろしくな」
「ああ、そうだな。こっちもよろしく頼む」
そういうと、その場にいた人たちが次々と転送され始めた。そして、クロアたちも転送された。
――ミッションスタート