08 パートナー
「まあ、なんとか」
「そりゃよかった」
目の前にいる彼女の両手には中型サイズの魔銃が握られている。おそらく巨人の武器を弾き飛ばしたのもこの魔銃から放たれたのだろう。
「そんじゃあ、あの巨人とも決着をつけなきゃな。協力してくれるか?」
「今できる限りのことはします」クロアは痛む左腕を押さえつつそう答えた。
「上等だ!」
そんなことを言ってる間に巨人は攻撃の構えにでている。先ほどのように武器はないが、おそらく申し分のない威力だろう。
「そんじゃあ、俺は敵の動きを拡散させつつウィークポイントを作る。合図したらそこにお前の剣撃を叩き込んでくれ」
「わかりました」
そういうと彼女は巨人のほうへ走り出した。
その間にも、彼女は巨人へと魔弾を放つ。巨人の腹部に当たった魔弾は小さな魔方陣を形成し巨人の体に刻印を刻む。
巨人も腕を振り下ろしたり、なぎ払いを放ったりなどして応戦するが彼女はそれをすべて紙一重のとこで交わす。そして巨人の刻印ができている箇所へさらに魔弾を放つ。
「今だ!巨人に一撃決めてやれ!彼女は一歩下がって活路を作る」
右腕に剣をもち、巨人まで一気に距離を詰める。
途中、彼女の拘束魔弾が巨人に放たれ数秒の隙が生まれる。
「いっけーー!」その一言とともに巨人の腹部を貫く。今までクロアの傷しかつけれない斬撃が巨人を貫いた。
巨人は光の粒となって、クロアたちの前から消滅した。
クロアは勝利の喜びを味わう前に意識が途切れた。緊張の糸が切れるとともに極度の疲労と痛みが襲ってきたのだ。
「あの傷を負ってあそこまでやるとは、なかなか根性あるじゃねーか」
クロアが次に目覚めたのはとある一室だった。
「お、お目覚めか」目の前には彼女が立っていた。
「あの、ここはどこですか?」
「ここは俺の部屋だよ。覚えてないか?」
「――まったく……」
「そうか、まあ無理はねえ。お前は巨人との戦いの後意識を失ったんだよ。そんでもってお前を俺の部屋まで運んできたわけだ」
「そうなんですか、ありがとうございます」
「いやいや、礼には及ばないって。それよりまだ、無理すんじゃねーぞ!ミッション中の外傷が残らないとはいえ、まだ左腕の感覚はないはずだ」
そういえば、左腕は麻酔を打ったかのようにゆうことを聞かない。それに全身のいたるとこも痛む。
「でも、いつまでも迷惑をかけるわけには……」
「きにすんなって。これもなんかの縁だ」
「それでも……」
「そんじゃあ、こうしようや。俺はお前の怪我が完治するまで面倒を見る。その代わりに1つお願いごとを聞いてくれないか?」
「お願いごとってなんですか?」
「それはだな、あたしとパートナー組まないか?」
「え、どうして俺となんかパートナーを?俺はぜんぜん弱いですし、強い人はほかにも山のようにいますよ」
「まあ、なんつうかな女の感ってやつかな。それにお前には度胸がある。お前がダメじゃなきゃ是非たのむ」
その言葉をきいてクロアは内心うれしかった。決してほめられたからではない。こっちの世界にきて初めてそんなことを頼まれたからだ。
「こんな、俺でもよかったらもお願いします」
「そんじゃあ、決まりだな」
「そういや、まだ名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
「クロアっていいます。そちらはなんていうんですか?」
「あたしか?あたしの名前は紅羽だよ。でも、あんま名前で呼ばれるのは好きじゃねえから師匠とでも、呼んでくれ」
「なんで、師匠なんですか?」
「なんか呼ばれて気持ちいいじゃねえか。それに命の恩人なんだし」
「師匠無茶苦茶ですね」
こうして、短い師匠の紅羽との生活が始まった。