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バレンタインデーと俺

作者: 千雲楓

少しお下品です(笑

あんまりおすすめできません!

「短編?シリーズ」と全く色が違います。


もしかしたら後で消えているかもしれません・・・スミマセン;;

 嫌な時期が、近づいてきた。




 いつもと同じ時刻に起きた俺は、気だるく欠伸しながら一階へと降りる。


「おはよー」

「・・・おはよ」


スクランブルエッグをつくっている母にいつも通り挨拶すると、居間のテーブルにつく。

ちょうどテレビのCMがやっていて、何の気もなしにそれをぼんやりと眺めた。

 歯磨き粉のCMが、ぱっと赤やハートに移り変わった。


『バレンタインデーは手作りチョコで気持ちを伝「おえぇぇぇぇげぼおぉぉっ」』

「キャーッ!佑ちゃん大丈夫?!!」


 突然げぼげぼしだした俺に、母が悲鳴を上げて駆け寄ってくる。

階段の方面からも急にどたどたと音がして、寝ぼけ眼の父も顔を出した。


「どうした祐介!」


母が俺の背をさすりながらこそこそ耳打ちする。

少しずつ吐き気はおさまってくる。


「あぁ、チョコレート「げぼおえぇぇぇぇ」・・・・・・悪い」


せっかくおさまっていたのに。




 そう、俺は・・・・・・・・・・・・『チョ○レート拒否症』なんだ。






 物心付いたときから俺は、この得体の知れない病(?)と付き合ってきた。

小学校のとき、帰り道での『グリコ』なるジャンケンゲーム(注1)で、馬鹿だった俺はチョキを出し自滅(注2)。あれやこれやを垂れ流しながら帰ってきた俺に、母はさっきと同じような悲鳴を上げる。

中学校のとき、調理部の奴らがチョ○を作っている場面に運悪く遭遇。その日から俺は調理室に立ち入り禁止になってしまった。


 とはいえ、小学校から中学校と付き合う中で周りも俺も慣れてくる。俺はその物体Xが出没しそうな人の周りもとい場所には近づかないようにしたし、友達や先生もいろいろ配慮してくれた。そのおかげで、よほど運が悪いか馬鹿をしないかぎり、『拒否症』が出ることはなくなっていた。

 しかし、そんな俺に新たな試練が待ち受けている。



 高校最初の『バレンタインデー』。



 自慢じゃないが、俺は父母の良いパーツ(頭は別として)を集めた容姿で生まれてきたらしい。そのため、がきんちょの頃からよくもてる(繰り返し言うが、自慢じゃないぞ)。

 だから、俺を『拒否症』だと知らない女の子達が、毎年毎年Xを手に俺に会いに来るんだ。


 しかも今年は高校!周りは知らないやつばっかり!

高校でチョコレートが話題に昇ることはなかったし、俺もバスケに打ち込んで今までうまく回避していた。説明することも無いと油断しきっていた俺の馬鹿さ加減に、今さら後悔している。

 一度、本当に散々な目に遭った。

 中三の春、クラスにモモコちゃんという都会の美少女が転入してきた。俺を含めた男全員が、大変にモモコちゃんに夢中になった(この大変というのが本当に大変で、初めの頃なんかは、みんなヨダレを垂らしてモモコちゃんを見つめていた為に授業ができず、先生が泣いて出て行ってしまったくらいだった)。

 そのモモコちゃんが、受験真っ盛りの2月14日に俺を呼び出したのだ!『2月14日の呼び出し』といったら、もうアレしかなかろう。

 俺は後先考えず家を飛び出し、彼女指定の公園へ向かった。

きっと公園にむかっていたときの俺は、人目から見ても分かるほど浮かれていたに違いない。

 案の定、可愛らしい私服姿のモモコちゃんが、恥ずかしげに顔を赤らめて、こう行ってきた。


『祐介くん、わたしね・・・・・・ずっと祐介くんのことスキだったんだぁ』




 俺は、本当に、馬鹿だった。

クールな男を演じようとしていたが、内心ではモモコちゃんの照れ顔に悶絶していて、その先にあるはずの『黒い闇』の存在を、すっかり忘れていた。


 ・・・・・・まぁ、その先のことは言うまでもない。モモコちゃんは泣きながら走り去り、俺は吐きながらとぼとぼ帰った。以来モモコちゃんは目さえも合わせてくれず、そのまま卒業し最低の結末となってしまった。

 この時ばかりはさすがに俺も悔しくて、2日くらい部屋に閉じこもった(だが、2日目には腹が減りすぎて観念した。まぁそんなもんだ、うん)。



 その日からというもの、俺は俺のこの『チョ○レート拒否症』という病に、暗い憎しみを抱きながら生活してきている。

 しかし、バレンタインデーはもうすぐそこだ。ここは何が何としても、物体Xとの遭遇は避けなければならない。女の子を泣かせてしまう前に・・だ。


 俺は、負けはしないぞ!!











 かくして俺の、『2月のバレンタイン越え』ミッションがスタートした。



(注1)ジャンケンをして勝つと、その手にちなんだ言葉の分だけ進めるといういたって簡単なゲームである。

グーなら「グリコ」で3歩、チョキなら「チョコレート」と6歩、パーなら「パイナップル」と6歩進める。目的地に最も早く着いた人物が勝者だが、歩幅を揃えることが困難(というより不可能)なため、必然的に超アバウト設定となってしまう。なので真面目にするとばかばかしくなってくる。

(注2)上記にある通り

(注385)ミッションは作者が全力で阻止します!


お目汚しすみませんでしたっ

首を洗って土下座してきます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 続編読みたいれす
2011/06/17 21:32 退会済み
管理
[良い点] 話に惹かれました [一言] 自分はこの4月から高校なんですがなんだか主人公が哀しすぎて泣けました。こういうネタもありかな、と思います。 というかお父さん寝てたくせによくあんな早く反応でき…
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