○○された✕✕、そしてその前日譚
よくある異世界転生、そしてよくある話。
俺はどうして此処にいるのだろうか?
あぁ、思い出した、そうだったな……
俺の前に女神様が現れた。
女神様にとって、俺の死はイレギュラーなものだったらしい。
そして混乱したまま、此方の世界に連れてきてしまった、という事らしい。
元の世界の記憶は曖昧だ。
此処は所謂、剣と魔法が存在するファンタジー世界であり、冒険者として生きてほしいと頼まれた。
女神様の落ち度という事で、自動翻訳やアイテムボックス等色々貰っての転生となるらしい。
旅が快適になるよう、【状態異常無効】のギフトを貰った。
後、【自動回復】というギフトもつけてくれた。
後は冒険者ギルドでクラスを決めて旅立つ、というわけだ。
街の手間で降ろされた俺は、ギルドへと向かった。
身分は平民、というよりは孤児であり、肉親はいない。
貴族だと、記憶をいじる相手が多くなるらしく誤作動が起こりやすくなる。
そして、元の入れ物となる、人材もいなかったので、孤児という身分に落ち着いた。
ギルドでは、ちょっとした誤作動等もあったが、どうにか剣士として登録できた。
まずは基本、ステータス確認からだろう。
ランクはFランク。
冒険者となって初めてのランクになる。
年は16となっていた。
前世ではもっと年上だったはずだが、肩コリや腰痛など少々ガタがきてたので、ありがたくある。
転移の形だと、街から出るのも億劫だろう。
能力値は多分平均的なものなのだろう。
低いも高いも分からなかった。
ギフトは【状態異常無効】と【自動回復】と【アイテムボックス】と出た。
【自動翻訳】は、転生特典という点から表示されないのだろう。
スキルはクラスによるものや、何かしらの熟練度などで獲得できるものもあるらしい。
生活魔法というのはどの人間にも付与される魔法らしく、魔道具を使ったり、身体を清潔にしたりが出来るとか。
また、攻撃には使えないが飲水生成出来る水魔法や、着火程度の火魔法なども含まれているらしい。
アウトドア経験はないので、飲水確保や、火起こしなどができなければ詰んでいたと思う。
武器は初心者用の借り出し品だ。
冒険者としてなんのクラスを選ぶか分からなかったせいか、冒険者や旅人が着る衣服とリュック、ある程度の生活が出来るぐらいの小銭の小袋といった軽装しか、なかったからだ。
冒険者のはじめの仕事というと、やはり薬草採集だ。
近くの草原に生えてる薬草の収集を行う。
確かギザギザの葉に裏が白っぽい、だったか。
ギザギザの葉を探しては裏を確認して摘んでいく。
数本纏めて一束とされ、それを数束。
という形で収めるらしい。
途中、草むらの奥でガサリと音がしたので、採集を終わりとした。
ギルドに薬草を提出し、報酬を貰う。
その際に、金額の価値や月日の概念なども改めて聞いた。
日本円や月日、曜日は似通っているようで分かりやすくなった。
別の単位だと困っていたかも知れない。
今日の報酬だとパンが1つか2つぐらいらしい。
もっと初めての何かしらの高揚があるかと思ったが、こんなものか、と思ってしまった。
冒険者登録の初回限定の客室があったので数日借りる事にした。
料理はまずまずだった。
数日は薬草採集を続けた。
そしてやってきた初戦。
スライムがゆらゆら揺れていた。
俺はしっかり剣を構えてスライムに対峙する。
何度か避けられるも、どうにかスライムを倒す事に成功する。
スライムは消えるように溶けて小さな魔石だけが残った。
俺は魔石を拾い上げて光に透かす。
綺麗だと思う。
が、やはり高揚感はない。
初戦という事で、レベルは上がった。
それだけだ。
結局は魔物という事か。
思う所がなかった。
その後、ゴブリンなども倒していくが、倒す事に対しての葛藤はなかった。
人に近いから、何かしらあると思ったが、それもなかった。
依頼をこなし、Eランクになった。
この頃になると商人達の護衛依頼に出れる様になった。
街から外れると、襲ってくるのは魔物だけではなかった。
対人間戦となる盗賊討伐だ。
自分の剣が盗賊の肉体を貫いた時、相手の命を奪うのだから、何かしら慟哭があるかと思っていた。
が、それもなかった。
それから先は作業というしかない。
依頼を受け、報酬を貰い、いるものを買い、そして宿屋で眠る。
何度か傷を負ったが、時間経過で治っていく。
毒は効かなかった。
幻影も、混乱も、効かなかった。
ギフトの影響が大きいのだろう。
女神様はあれから現れはしない。
ので、バグとやらは治ってないのだろう。
数人と組んだりした影響か、彼らの持つスキルを理解出来るようになっている。
いる。というより、見て覚えたのか、よく分からない。
どちらかというと生えてきた。というものであり、ラーニングというものでもなさそうだ。
魔法使いの魔法や、盗賊の鍵開けなど、いつの間にかステータスに出てきた。
元々、魔法職のクラスや上級職でないと魔法は使えない。
が、俺は使える。
スキル取得範囲のリミッターも外れてるのだろう。
ランクが上がるとどんどんスキルが増えた。
スキルは統合したり、上級スキルへと変じたり、変わっていった。
が、やはり高揚感はない。
出来るからやる。
あるから使う。
それだけだ。
最初は何人かと組んではみたが、俺は空気が読めず、無口である事が多く、何度もパーティ離脱を繰り返した。
その後はずっとソロで、戦い続けた。
スタンピードも経験した。
倒して倒して倒して倒して倒して倒して……
息を吸うように、そして吐くように、倒し続けた。
ランクがSになろうと高揚感はなかった。
身体がそうであるように、心もそうだったのだろう。
感情の機微も、状態異常として認識されていたのかも知れない。
剣も魔法も、その他の職のスキルも、難なく使えている。
が、回復魔法だけは覚えられなかった。
否、スキルにはあるのだが、俺は神への信仰心がなかったので使えなかった。
まぁ、眠れば回復していくので必要はない。
ヒールがスキル成長したりもなかった。
ある日、俺は国王様から領地を貰う事になった。
誰も住めないであろう魔の森の奥だった。
その頃にはアイテムボックスには色々揃っていたし、いつの間にか空腹というものもなくなっていた。
何でも食えるし、腹を壊すことも、風邪を引く事もない。
俺は景色のいい山頂に家を建てた。
向かってくる魔物は全部倒した。
何度か魔族というものにもあった。
歯向かうものは全部倒していった。
いつの間にか平伏して俺に追随するものが増えた。
奴らはいつの間にか俺の城を建てていた。
城には玉座があった。
俺はその椅子に座る。
魔王みたいだな。
と思った。
あぁ、そうか。
俺は魔王になったのか。
俺は年を取らない事に気がついた。
そして不死である事にも気づいた。
何度か死ぬ目に遭ってはみたが、無駄だった。
痛くも苦しくもない。
多分息さえも必要ない。
その後何年、何十年、何百年は静かだった。
が、突如その日がやってきた。
あの女神様はもういないらしく、新しい女神がこの世界を統治しているらしく、聖女というものが、勇者という存在と共に現れたのだ。
久々の戦いに心が躍るかと思ったが、やはりありはしなかった。
勇者達は俺を倒せなかった。
が、俺を封印する事に成功した。
封印。
封印は術者が何かを封印する為のスキルである。
中身が何であろうと関係なく封印する。
思い出してみれば、神々でも、神を封印するという手を使っている。
だからこそ、俺は封印を状態異常と認識できず封印された。
封印されて数年、静かになった魔族達だったが、また活動を開始したらしい。
そしてまた人間と魔族らの攻防が始まる。
が、俺にとっては日々の些事である。
今日も、夢を持たない眠りにつく。
また封印が解かれる日々が来ても、それは些細な事だろう。
誰も彼も俺の中では小さな存在となっていった。
だが、気づいたのだ。
もう俺はイレギュラーな存在ではない事を。
この世界の円環に組み込まれた存在になったのだと。
俺は今日も封印の中、眠り続ける。
明日はもう来ても来なくてもいい。
そして、△△は✕✕になりました。
めでたしめでたし、という話ではないけど。




