第一話 廃部予定
ゴールデンウィークが終わった木曜日、生徒会長かお仕事を任された。廃部届けを渡してこい、と。
廃部予定の部活は『現実迷宮部』。
ガチでよくわからない部活だ。
そもそも現実に迷宮なんて存在しないはずだ。
何をやってる部活なのだろうか。
こういうよくわからない部活は大体無事でゲームをやっているイメージだが、どうなのだろう。
「失礼します、生徒会の松田です。」
迷宮部と書かれた部室に入ると小柄な女子が神戸の地下街のマップを見ていた。
「何してるんですか…?」
傍から見ると不審行動である。
「ま、マップ読んでました」
そう小柄な女子が言った。
いや、そらそうでしょうね。
見たらわかりますけども。
とりあえず廃部届けを渡した。
「部員は二人以上じゃないと廃部なので」
女子は悲しんでこちらを見ていた。
涙顔である。
この部の何が楽しかったのだろうか。
よくわからない。
「入部してくれませんか?」
は?
何をしているかわからない部活に?と思ったが中学も生徒会しかしていなかった俺からしたら少し楽しそうに思えた。
「わ、わかりました。明日までに考えます」
俺、何言ってんだろ。
だけど迷宮部員の女子は非常に喜んでいた。
自分の好きな部活が存続できるかもしれない、そう思ったのだろう。
「わ、私は花崎 めぐるです!」
唐突な自己紹介。
でも悪い子ではなさそうだ。
俺は軽い挨拶をして部室を出た。
結局、活動内容を聞けなかった。
どうしよう…帰って考えよう。
生徒会からはこのまま帰っていいと言われていたので真っ直ぐ帰ろう。
高校から駅までは徒歩で7分程度。
近くて非常にありがたい。
5月の夕日が僕を照らした。
17時35分、各駅停車に乗る。
高校生で満員まではいかないが相変わらず電車には人が多い。
乗車時間10分、明石駅に到着。
駅から歩いて10分のところに僕の家がある。
だけど今日はとあるところに寄り道する。
それは駅前のビルの中にあるちょっと大きな本屋さん。
行く理由は好きなラノベの新刊を買いに行くのだ。
今日から販売で朝イチに買いに行きたかったがさすがに学校を休むわけにはいかないから放課後に行くと決めていた。
本屋に入る。
まだ残っているといいんだけど……
あった。よかった。
ラスト一冊だった。
危なかった。
俺はレジに並ぶと前に花崎さんがいた。
「ま、松田くんですよね?!」
「そうだよ…」
花崎さんの手には大阪の地下マップの本があった。
「なにそれ……?」
「これはね、大阪市の地下街のマップなの!」
何で地下街のマップを読んでいるのだろうか。
少し興味がわいた。
「さっきは三宮の地下街のマップ見てたよね、何で地下街なの?」
「この地下街が現実迷宮なんです!」
へ?
何を言っているんだこの人は、と思ったが花崎さんは真剣な目でこちらを見ていた。
「何で地下街が迷宮なの?」
「ほら、地下街って複雑な構造なので」
なるほど。たしかにそうだ。
俺はたまに大阪に行くけど梅田の地下でよく迷う。
あれを迷宮と例えるのはおもしろい。
レジの花崎さんの順番が来た。
「また明日!」
◇
無事にラノベは買えた。
家についた。鍵を開けようとした時、後ろから走ってくる足音が聞こえた。
「おにいちゃーーん!」
妹の高い声が聞こえた。
松田 優香、俺の妹だ。
「なんか遅くない?」
よくわかったな。さすが妹。
でも妹にはオタクを隠しているのでどうにか言い訳を考えないと……。
「まさか彼女?!」
ちがう。妹には言ってないが正直3次元に興味はない。
「はいはい、ちがうからね」
そう言いながら家の鍵を開けた。
「で、なんで今日遅かったの?」
「生徒会の仕事だよ」
ほんとはラノベ買ってたなんて言えない。
「とある部活に廃部届けをね」
「何部?」
現実迷宮部って言っても絶対よくわからないし、僕もわかってないからテキトーに流そう。
「変わった文化部」
うん、間違ってはない。
「お兄ちゃん帰宅部と生徒会でしょ、入ってあげたら?」
何なんだ、みんな俺にあの部活に入ってほしいのかよ。でも入らないつもりでいたけど本屋で聞いた感じ楽しそうではあるんだよな。
「入っちゃう……?」
何言ってるんだろ俺。
ほんとにいいのかな、いっか。
中学もずっと帰宅部だったわけだし。
高校一年生、松田 京多。明日から現実迷宮部員になります。
花崎 めぐる(はなざき めぐる)
松田 京多
松田 優香




