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Funny memory

作者: Spatz clam
掲載日:2026/04/02


むかしむかしのおはなしです。


うまれたときから他の人物の記憶をもっていた少女がいました。

記憶といってもその人物の家族はおろか、自身の名前さえ思い出せません。


しかし、ただ捉えどころのない渇望が身をやき続けていました。


誰かを待っているのです。

ずっとずっと。

約束を果たすために。

でも、どんな約束だったのでしょうか。

そんなことも忘れています。


年の数が5をこえたあたりでしょうか。

だんだん忘れていっていることに気がついたのは。

あたりまえといえばそうなのでしょう。

この体はこの記憶の人物とは違うのですから。


けれども彼女はその現実を拒みました。

約束を忘れたくなかったからです。


だから、この体に心も名前も記憶もいらないと思いました。

注がれるおもいを拒み続けました。


それでも時の流れは残酷です。


必死な彼女の願いも儚く消え去り、約束も、捧げた熱量も忘れ去っていました。


後には何もありません。

ただ、私の記憶に残っているだけです。





今、幼い頃のことを思うと、なんて滑稽だったのかと思う。


何かに恐れ、心を閉ざし続けた「わたし」。

心ばかりか、名前も、記憶も疎んだ。

まるで上書きされるのを拒むかのようにいた「わたし」のことを。


今、それがわからない。

どうしてそうしたのかわからない。

当時は身近に切々と感じられたものがわからない。

もう、記憶しかない、残っていない、「わたし」じゃない。


きっとそれは、「わたし」が上書きされて私になってしまったからだろう。


拒んでいたのは「わたし」であるため。

体を失い、名前を失い、記憶さえもほとんど忘れ去ってしまった、けれども「わたし」であることを失えない最後の足掻きだ。


でも、それも時の流れとともに完全に過去のものへと...遺物へと変わる。


だから、私は思う。

理解ができないから、してあげられないから。

名さえ知らない、けれども自分であったはずの人。


ごめんなさい。


私はもう滑稽だとしか思えない。

どんなに遠く離れていても、待っていればいつか必ず巡り会えると思っていました。

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