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9.朝からお茶の時間

 気が付いた時には朝が来ていた。


前の世界にいた時から工場勤めで早起きだったし、こちらに来てからも俗世では基本朝日と共に起きていたので、特に辛いも何もない。


何なら子供の体になったお陰か、おっさん特有のだるさがなくて毎日快適だ。


まぁ、スマホやパソコンどころか、本すらなくて娯楽には事欠くものの、日々なんとかかんとかやり過ごしてきたこの数年は特に退屈を感じる間もなかったので、問題ない。


とりあえず、箒を取り出して庭と玄関を掃き掃除していく。


着替え?そんな物はない!着のみ着たまま着た切りスズメじゃい!


っていうか、こっちの世界にきてからと言うもの、不潔に随分慣れちまった。


いや、水浴びしたりとかはするんだけど、しょっちゅう服替えたりとかしないんだよね。


毎日風呂に入って服を洗濯して新たな服に着替えるって言う生活がいかに贅沢だったか思い知ったわ。


ちなみに髪は洗うよ。自分がお世話になったおじいさんも随分と髪が長かったし、しょっちゅう髪は洗ってた。


そして体洗う時は、大体なんかのとぎ汁?米とか粟とかそういう炊いて食べる系の穀物の洗い汁を取っておいて、体とか髪とか洗ってた気がするわ。


ちなみに自分もこちらに来てから髪を切ったことは一度もない。


その割にボリュームが少ないのは前の世界でAGAだったせいか、はたまたこちらに来てから欠食児童だったせいか。


まぁ、いずれにせよ服を買うにも先立つものが必要だし、その辺も踏まえて黄師姉がどう判断するのか、そういう部分もよく観察して今後の身の振り方を考えていかなきゃね。


何しろ、今までただの天罰で碌な目に合ってないのかと思ってたわけだし、本当に文字通り神になれとか、そういう理由で飛ばされるなんて思ってもみなかった。


個人的にはこういう異世界転移なのか、転生なのかってのは、もっとチートで楽しく過ごせるもんだと思い込んできたが、中々に大変だったぜこれまで。


言っても、今だって折角手に入れた【厨術】をどうやって使うのか、見当もつかないし、何か先を読んで与えてくれたのかと思えば、偶々だとかいうし、結局自分の頭をフル活用してどうにかこうにか成り立たせるほか、どうしようもあるまい。


「あら、早いのね」


体を動かすと脳も回る。


掃除しながら己と対話をしているといつの間にやら黄師姉が起きてきた。


「おはようございます」


ん~とかなんとか言いながら伸びをした黄師姉が、庭にある丸テーブルの前の椅子に腰かける。


「お茶入れてもらっていいかしら」


「茶葉はどちらにありますか?」


「……そっか、そっちの部屋は全く使ってなかったから何にもないんだった!ちょっと待ってね」


スタスタと軽快にどこかへ行ってしまった黄師姉を目で見送り、黄師姉の座っていた椅子に目を戻すと、どうやら陶器の様な質感だ。


背もたれはなく、一見すると穴の開いてない壺?鼎?みたいな形だ。


真っ白で青い蔦模様の入った陶器の椅子なんて随分とお洒落だななんて思っている内に、黄師姉が戻ってきて、手にはお盆とその上に急須に入ったお茶があった。


「よく考えたら、まだお湯も沸かせないものね!一緒に飲みましょ!」


そう言って、対面の席に座るよう促されるのだが、普通童僕って一緒に机を囲んだりしないんじゃないの?


「遠慮しないのよ!秦姉さんは童僕とか言ってたけど、あなただってここにいる以上風塵宗の弟子なんだから、弟弟子でしょ」


確かに言われてみれば、風塵宗に入門したんだから、序列は低くとも自分は弟弟子になるのか。


という訳で、黄師姉に逆らわず向かいに座ると、お茶を一杯入れてもらった。


流石はお茶の国というか、正直これに関しては相当修行しても敵わないんじゃないかという手さばきだ。


遠慮せずにそのままいただくと、程よい控えめな甘みが口に広がり、朝から頭がスッキリとする。


「ふふ、気に入って貰えてよかったわ!さてっと、この後なんだけど、いつもは午前中は修行をする予定なのね?」


ふむ、つまり自分の所為で今日は予定を変更せねばならない?


「あなたをうちに迎えた事を念の為、師匠に報告しておこうと思うの。って言うのもねぇ……」


「黄師姉は普段からご自身で何でもやってきちゃったから、自分にやらせる仕事がないですか?」


「子供なのに、随分と察しがいいのねぇ」


いや、何となく分かるやん。師匠にわざわざ朝から自分の事紹介しようってんだから、師匠の所でなんかやらせたいんでしょ?


黄師姉が自分にやらせたい事があるなら、そんな事する必要がないもん。


自分の扱いに困って師匠に挨拶させるって考えるのが普通やん?


「分かりました。失礼のないようにするにはどうしたらいいですか?」


「えっとねぇ……」


何を言い淀んでるんだろうか?もしかしてかなり偏屈タイプの難しい人なのか?その師匠ってのは。


「多分、問題ないから、そのままの感じで大人しくしてて頂戴」


一体どういう事だ?昨日から無口って言われてるし、喋らない方がいいタイプの人なんだろうか?はたまた子供好きの変態?


黄師姉の師匠に会うのがちょっとだけ怖くなってきたぞ。

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