7.混元功
「さぁって掃除でもしましょうかね~」
いきなり一人置いて行かれ、やる事も無し、独り言共に掃除道具を取りに行く。
〔いや、折角だしさっさと気を導入しちまおう!〕
すると、さっきまでだんまりだったシステムが急に話しかけてきた。
「なんか急に出て来たり消えたりするね」
〔そりゃぁ誰かと話してる最中に割って入ったりして、お前が変な事でも言ったら不審に思われるじゃん?〕
「じゃん?って、まぁその通りではあるけどもさ……いいか、それより気を導入って何?」
〔相変わらず物分かりがいいのな。気を導入ってのは簡単に言うとそこらの霊気を吸収して、霊力に変換しつつ、丹田にそれを収める工程だな〕
「それをするとどうなるのさ?」
〔修為が上がるな〕
「また知らん単語が出てきたよ。修為って何?〕
〔ん~神になる為のランクみたいな?そもそも神になる修行って言うのが世の理に反して、寿命を延ばすような……〕
「いいや、要はレベル上げに霊力を貯めなくちゃいけないんだ」
〔凄くざっくり意訳すれば、そうなるのかもしれんが、いいだろう!修行しなきゃ神になれないのは理解してるんだもんな?〕
「そりゃね。それで?気の導入ってどうやんの?」
〔普通は功法と呼ばれる物を手に入れて、霊気を取り込み霊力に変換し、体内の経脈を通して丹田に溜めていくんだが、そうする事によってお前は真気を操る事が出来るようになる。これが今後術を使う上での基礎的な……〕
「長い長い長い!そもそもまず功法を手に入れなきゃいけないじゃん!」
〔それについては聖域デビュー記念で俺が教えてやる〕
「無から有は生み出せないって言ってなかった?」
〔だが知識は教えられるっつったろ!いくつか功法も取り揃えてはいるが、これまで全くこの手の修業をしてこなかったお前にはこれだ!テッテレテーテテー!【混元功】〕
「何かどっかで聞いたようなBGM使いやがって!それでその【混元功】とかいう功法は初心者向けとでも言いたいの?」
〔察しがいいな!通常功法は静座し呼吸法で行うのだが、この時余計な邪念が入ると走魔入火に入る〕
「またけったいな単語が増えたけど、要は功法の最中に邪念が入ると大変なのか」
〔その通りだ。心身にダメージが入ったり修行できなくなったり、下手すれば廃人になる〕
「修行ってリスク高過ぎじゃない?」
〔神になるには相応のリスクは仕方がない。そもそも自然の摂理に逆らい……〕
「はい、はい、はい!それで【混元功】ってのはそのリスクが無いんだ?」
〔ああ、そうだ!肉体の動きに合わせて気を動かし、丹田に導く方だから黙って座ってるよりリスクが少ない〕
「体の動きに合わせてって事は、体も動かさなきゃいけないからその分疲れるみたいな?」
〔正解だ。ただ、気と体の動きを連動させる事を日々の修練から重ねてれば、いざという時に助かるかもしれないぞ〕
「いざってのは、荒事の事?」
〔そりゃ、そうだ。この世界じゃ結局力がものを言うからな。お前はまだ子供だしある程度見逃してもらえるとは思うが、それでもいざって時は服従か死か選ぶ状況だって十分にありうる〕
「じゃあ、やるしかなさそうだね。システム的にはそれが最適解なんでしょ?」
〔そうだな。つう訳で、今から【混元功】とそれを修練する為の【混元掌】を伝授するぞ〕
「え?どうやって?あべべべべべべべべべべ!!!」
質問するや否や脳からつま先まで電流が走った様にしびれ散らかし、数秒かはたまた数十秒か、頭から煙を吹いたかの様な感覚に、ハッとする。
〔思い出すようにしてみろ。既にすべての要訣は頭の中だ〕
言われるがままに【混元功】について思い出すと、確かに全部分かる。
何なら全然意味の分からない漢字の羅列の筈なのに、何故かそれらの意味を完全に理解している?
そして思い出していいるうちに、体がむずむずしてきて、自然と体が動き始めた。
時に激しく、時に緩やかに、生まれてこの方やったこともない不思議な型を体がなぞり始め、さっき思い出した【混元功】がどんどん腑に落ちていく。
一通り、型が終わるとこれが【混元掌】だと自然と悟り、全ての動きの意味と使い方まで理屈ではなく、体の細胞や骨や筋肉が勝手に理解していた。
不思議な感覚に、何となく両手のを握ったり閉じたりして自分の状態を確認していると、臍の下辺りが妙に温かくなってきた。
「これが気の導入?」
〔ああ、思った以上に飲み込みが早いな。これでお前は凝気期に入った。今後は練気一級を名乗れるな〕
「いきなり一級って、次は段が始まるのかね?」
〔いや、一級二級と上がってくんだ〕
「ああ、そういう事ね。自分は級は下がって行って、下がり切ったら段が上がる方に慣れてるから」
〔じゃあそっちにしておくか?〕
「いや、いい。後々分からなくなると嫌だし、上がる方式で統一しよう」
〔つう訳で、練気一級のお祝いに【厨術】も授けてやるぞ!〕
「え?早くない?!あべべべべべべべべべべべべべべべべ!!」
二度目だが全然慣れない、痺れっぷりに思わず地面に膝をつく。
〔大丈夫か?取り合えず当面お前に必要そうな術を与えたから上手く使ってみてくれ〕
「【厨術】って言ったっけ?どうして自分に必要になるの?」
〔この聖域の食べ物でも特に修士の食べる物は、霊気を吸って育った特殊な素材なんだ。俗世の調理法じゃ文字通り包丁の刃も立たんから覚えておいて損はない。兎にも角にも霊気を吸収せにゃあ修為が上がらんのだから、食べる物にもこだわっていかないとな!〕
どうやら、修為とやらを上げることについては、随分と積極的に協力してくれるらしい。




