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5.雑踏を抜ける

 少し貧し気な街並みを抜ければ、今度はちょっと綺麗目な石畳の平地。


何の建物かまでは分からないが、それでも明らかに街中と言っていい程度にはあか抜けた雰囲気が、住む人の身分差を分からせに来る。


大通り沿いを二階建ての建物が並び、奥まった道の方を覗けば、多分民家であろう建物が続いている。


道なりを歩く人達の服装も華美とは言わないまでも、昔の学士とでもいうのか、科挙制度時代のエリート達の服装っぽい人から、武者風の袖なしの長衣にそのまま全身を一揃いに合わせて中々にお洒落だったり、見方によっては少しお金持ち風に見える人までチラホラいる。


女性の服装も、襦というのか裙というのか、着物に高い位置のスカートを組み合わせたような人が多い気がする。


ただ、明風と唐風が混ざっているような気もするが、それは自分の思い違いか、はたまた異世界だからかそれは分からない。


まぁ、なにが違うのかって露出度だけだし、別にいいんだがね。


そうしていく内にあっという間にまた門を抜ける。


てっきり、さっきの街並みがかなり立派に見えたので、内門とか言うのはあそこだと思っていたのだが、違ったようだ。


門を抜けるとそこは、でっかい市場?


堅牢な石造りの大きな建物もあれば、あからさまに土壁漆喰風の建物もあるし、てんで様式がばらばらながら、兎にも角にも一軒一軒がデカい。


更に道には露店が所狭しと並んでいるが、その様式もバラバラだ。


アラビア絨毯を引いただけの露店もあれば、布で屋根を作ってる簡易的な店もあれば、全部木造りの屋台もある。


屋台を見て、急にお腹が空いた気がして周囲を見渡せば、よく言えばオープンテラス、悪く言えば野ざらしのベンチとテーブルが並んだ食堂があったが、漂ってくる匂いから辛い物専門店だと分かる。


ちょっと目に来るので、一旦空腹の事は忘れようか。


しかし、この大きな市場に入った辺りから、更に服装の多様性が多様化しすぎてもはや判別不可能だ。


さっきアラビア絨毯とか言ったが、それこそ中央アジア風の人から、仮面で顔を隠しフードを被り一切正体の分からない人から、裸ベストに短パンみたいな人までいる。


門を一つくぐる度に全く違う世界に放り込まれたような感覚に、そろそろ鈍すぎる自分の危険察知能力も反応し始めた。


「ここは鸚鵡緑苑の外苑に当たる場所だ。ここでは外部の者から外門弟子や内門弟子まで自由に売買を行ってる。それ故、人間もそれ以外も多種多様故にある程度の警戒は必要だ。不必要に警戒しすぎる事もないのだが、とりあえず私からはぐれないようにな」


自分の不安を察したかのように、声を掛けつつもずんずんと街の更に奥へと向かっていく秦さんに遅れないよう付いて行く。


すると、また門だ。


門の両側には剣を持った数名の男女が門衛に立っているが、特段止められることもなくまた門を抜ける。


その門の奥は、今見てきた外苑とは対照的に随分と整った雰囲気にまたがらりと変化した。


曲がりくねった階段が上方へと続いているのだが、その途中に大きな建物があり、またそこから階段で別の建物へと繋がっている。


「ここが風塵宗内門の一つ鸚鵡緑苑だ。もう少し上がっていくと中腹に緑の沼があるんだが、それがこの内門の中心でもあり象徴でもある。あとそうだな、一応絶対的な括りじゃないが、この鸚鵡緑苑は主に錬器や錬丹と言ったものづくりに長けた内門長老が多いのが特徴かもな。あとは……慣れろ」


うん、秦さんは多分悪い人じゃない。自分の様子を察して向こうから説明してくれるし、ただ日本人みたいに無意味に誰にでも彼にでも愛想を振りまくようなタイプじゃないだけだろう。


剣も手に持ってるし、多分武人系武骨お姉さんなんだろうと勝手に理解しておく。


秦さんの後ろをついて結構な長い階段を上っていくと、確かにそこからは大きな緑色をした湖が広がっていた。その湖に張り出した足場は大層広く何の為にあるのかは分からない物の、湖の周囲に立つ建物が一望できた。


もしかしたら剣に乗って空を飛んでいた時に見降ろした湖だったのかもしれない。


秦さん曰く、沼らしいが到底沼と表現していい規模ではないだろう。


沼沿いを続く道を進んでいくと、いくつかの屋敷の前を通り抜け、ふと花の匂いの漂う屋敷の前に出た。


今度はその屋敷の横の道へと折れていき、進んでいくと、それまでの屋敷と比べればこじんまりとはしているものの、十分なサイズの邸宅が程よい感覚で疎らに並んでいる。


その内の一軒の門を無造作に押し開ける秦さん。


まるで自宅の様な所作に、何の疑いも抱かずついて中に入ると、女性が一人、大きな肉まんを頬張っていた。


「ふぇいふぁん!!!」


え?中国語?


「口の中の物を飲み込んでから喋った方がいい靜」


大きな肉まんを無理やり押し込むかのように食べきったお姉さんが再度口を開く。


「姉さん!急に入ってきたら驚くじゃない!」


姉さんって言ったのか、わざわざ口に物が入って判然としない言葉まで訳さんでもいいだろうに。聖域の翻訳システムを作った人の顔が見てみたい……やっぱいいやなんか変わってそうだし。


「今日は出掛けてないだろうと思ったからな。だが食事中とは思わなかった。悪かったな」


「もう……それで?今日は一体何の用なの?」


「お前、前から童僕を欲しがってたろ?連れてきたぞ」


「へ?」


ん?どういう反応だ?これ?

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