表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

4.当面は童僕

 お姉さんの後ろを付いて行くと丁度砂漠と草地の境目辺りから家が並び、街並みが広がっている。


入ってきた場所は比較的低所得層向けの居住地なのだろうか?比較的こじんまりとした家が多いが、それでも不潔さとは無縁で、やっぱりここが聖域であるというのは噓ではなさそうだ。


外から見る限り周辺の民家は三間房子とでも言ったか、大まか昔の中国の一般的な庶民の家の様に見える。


井戸と厨を囲むように何軒かごとのまとまりになっているようだが、詳しく中までは分からない。


しかし厨房が共同とはねぇ……まぁその分こじんまりしてても暮らしやすいだろうし、別にいいか。


まだ自分が住むと決まった訳でもないが、ぱっと見この辺が一番外縁っぽいし、この辺での生活を想像しておけば、いざって時の暮らしにも困りはしなかろう。


ずんずんと街中を進んでいくと、一件の随分と大きな平屋に辿り着いた。


そして声を掛ける訳でもなく、あっさり建物の中に入っていくお姉さんに付いて行くと、そこにはいくつも机が並べられ、すぐに役所か何かかと見当がついた。


正面の3っつの長机には人がそれぞれ椅子に掛けて何か書付をし、入ってすぐ右側の奥まった場所にも何やら受付がある。


左奥は、いくつも真四角の机とその両側に向き合った椅子が立ち並んでる所から、フリーの応接スペースなのだろうか?


よくよく観察する暇もなく、正面中央にいた老人に声を掛けるお姉さん。


「顧長老、新しく雑役弟子を見つけてきたんで登録してもらえるか?」


「ふむ、秦師妹の紹介であればそのまま弟子として認めたいのも山々なのだが、まだこの子供がどこの誰だかも分からん」


「私が、桃花楼で拾って来たのだ。あの大門を通ったという事は少なくとも霊根はある」


「なるほど桃花楼か……いいでしょう雑役弟子としては資格十分とみなせる。じゃあ名前を窺おうか?」


正面の机に座っていた中年か見ようによっては初老の男性がこちらを向くと、お姉さんもとい秦さんが軽く肩を小突いてきた。


「白小青と申します」


これが一応、こちらでの自分の名前だ。


理由は単純で、剣派にいた頃喋れなかった自分にとりあえず『白』と呼んだら自分の事だと覚えさせられ、後にお爺さんが『小青』という名前を付けた。それだけの事。


ちなみに今、自分は日本語で喋ったがちゃんと通じたようで、何やら書きつけている。


そして背後の漆塗りの木箱?日本人的に分かりやすく言うならおせち料理の一段分くらいの箱から何やら紐のついた牌を出した。


一応その昔前の世界で武侠物の小説を読んだり、ドラマを少し齧っていなかったら、アレが牌である事も分からなかっただろう。折角なら仙人物ももっと読んでおけばよかったが、こればっかりは有名な主人公が風を操る漫画しか知らん。


ちなみに牌は身分証みたいなものだと思うけど、この世界少しファンタジーだし、何か他にも意味があるのかも?


「ではこちらへ」


牌を持ったまま、自分と秦さんを促すように手で指示した方へ向かうと、小さな祭壇がある。


所謂、廟堂と言うやつなのだろうか?線香とか立てる灰とか置いてあるし、絶対何か祀ってるよな?


正面には掛け軸の様な装丁のされた縦長の絵があり、女性が一人描かれている。


「では、始祖様に3回叩頭なさい」


ああ、これは分かる。弟子入りの儀式だわ。つまりこの門派かなんかに弟子入りして修行する事になるって訳だ。


とりあえず、前世でも一応は正座文化を継承してるので膝をついてその場で三回頭を下げる。


「うむ、それではこれより白師弟はこの風塵宗に入門した。宗規をよく守り励みなさい」


そう言って、さっき取り出した牌を差し出してきたので、両手で受け取る。


その牌は金属で出来ているのか少し重く、元は銀色っぽいのだろうが、今は全体的に黒ずんでいて丸く、子供の手にはやや大きく感じる物だった。


「それは大事な物だからなくすなよ」


秦さんに一言くぎを刺されたが、やっぱりこの門派というか、宗派になるのか?ここの身分証って事なのだろう。


だったらこんな大きなものじゃなくて、ドッグタグみたいな小さくて首から掛けられるものにしてくれればいいのにとも思ったが、まぁこんな事で言い争うのも無駄か。


「では顧長老、この小僧は内門に連れて行って、童僕にするから任務を振ってくれ」


「ふむ、適正も見ずにいきなり内門の童僕とな」


「適正も何も、俗世に身寄りもない正真正銘の子供だぞ?童僕以外に何ができる?」


「うむ、秦師妹のいう事はもっともだが、逆に何も出来ぬ者を宗門に連れてきたのか?」


「子供の内から躾けた方が何がしかできるようになるだろう。そもそも我達が宗派は適正に贅沢を言える程の大宗ではあるまい」


「言わぬでいい事を……では、先ほどの牌を出すがいい」


そう言われたので、さっきの丸い牌を差し出すと、何やら変な台に乗せられた。


実際変なという程、変ではないが、何に使うか分からないのに、ちゃんと装飾されただけの台というのは変としか言いようがあるまい。


そして、牌を返されたので再び両手で受け取ると、秦さんが大きな建物を出て、また街中の方に向かっていくので、慌てて顧長老に一礼をして付いて行く。


何とも不愛想なお姉さんだが、目上の人に向かってあの態度で何も言われないんだから、いずれ身分の高い人かもしれないし、余計な事は言わずにいよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ