3.システムさん登場
〔ああ、そりゃぁよう、聖域に入ったからだわ〕
「んあ?何?」
思い出にふけっていた所に急に声が掛かり思わず驚く、しかもそれが聞き覚えのない声だからなおさらだ。
「ん?小僧どうかしたか?まさか、トイレか?そうだよな俗世から来たばかりじゃ、トイレも行きたく……」
「いえ、大丈夫です!」
お姉さんに声を掛けられたが、今の所もよおしていないので問題はない。それより問題はこの誰もいない空の上で、一体誰が自分に声を掛けてきたのかという事。
〔おい、気を付けないと変人だと思われるぞ?俺の声はお前にしか聞こえないんだから〕
「(先にそれを言おうよ!いや、その前にあんたがどこの誰だか教えてくれよ!)」
〔ああ、悪い悪い!俺は何だろうな……〕
「(哲学?)」
〔いやそういうんじゃなくて……あれだ!お前が円滑に神になれるようにサポートするシステム的なアレだ!〕
「(サポートしてくれるシステムがお前って言ってくるの中々斬新だね)」
〔まあ、そう言うなって!俺とお前の仲だろ?それよりなんで周りのいう事がはっきり分かるのか知りたいんじゃないのか?〕
「(そりゃね。それでここ数年苦労してるんだから知れる物なら知りたいけどさ)」
〔それはだな。ずばりここが聖域だからだ〕
「(何?聖域だと日本語喋るの?)」
〔そこかよ。なんかもっとこう『聖域って何だ?ついにここから俺の冒険が!』的なのはないのか?〕
「(いや、知らんて。自分が神社で悪口言ったから飛ばされてきたんだろう事は非科学的でも受け入れてるんだけどさ。じゃあここで何しろって話は何もないじゃん)」
〔いや、だからお前が神になれって言ったじゃんか!だからこうして神になるべく修行できる聖域に来たわけだ〕
「(ふぅん、じゃあついさっきまで自分が住んでた場所は?)」
〔まぁ俺達は俗世って言ってるけどな。一部の才能のある者ならこうして聖域に上がって神になる修行が出来るって訳さ〕
「(ふむ……薄々感じてはいたけど、自分がいた世界の中国とはやっぱりちょっと違うのか)」
〔まぁ、平たく言えば平行世界ってやつだな。世界は無数に分岐してる。でもそれは様々な形で修業し、悟りを得る為さ。いつか修行が成ればすべての世界の収束した上位世界に行けるとされてはいる〕
「(なるほどね~?それで何で自分は最初から聖域スタートじゃなかったの?)」
〔そっちが気になるのか?さっきまで何で聖域に入ったら日本語喋ってるのか気にしてたくせに〕
「(じゃあ、何で聖域では日本語喋ってるの?)」
〔それはだな。この聖域の修行者ってのは長生きだからだ!〕
「(ふぅん、じゃあ何で自分は聖域スタートじゃなかったの?)」
「いやもうちょい!もうちょい話聞けよって!いいか……」
「(要は俗世より寿命が長いから言葉が通じない場合が出てくるとかそんなんじゃないの?中国風の世界観で聖域って言ったら大概仙人とかじゃん?)」
〔そうだよ!これだから察しのいいガキは!師弟で1000歳違うなんてざらだから、聖域内では勝手に言葉が翻訳されるようになってるんだよ!〕
「(何を怒ってんのか知らないけど、最初から聖域スタートにしてくれれば言葉で困る事も無かったじゃん。何の意図があって不要な苦労させるのさ?天罰?)」
〔いや、お前こそちょっと怒ってるじゃねーかよ。天罰とかそういうのじゃないが……説明が難しいな……要はお前がこうやってこの世界に来ること自体が世界の理を捻じ曲げてるんだが……〕
「(何がしか大きな法則とかそういうのに触れないようにする必要があって、やむを得なかったのね)」
〔物分かりが良すぎてなぁ。まぁ、そういう事だから頑張ってこの聖域で神になる修行してくれよ〕
「(それしかないんだったらそうするけどさ。具体的にどうすんの?)」
〔うん、物分かり良すぎるだろ!なんかもっとこう……元の世界には戻れないのか!とか、神になったら何ができるんだ!とか、そういうのないのか?」
「(別に元の世界に未練ないしな~。ただただ毎日将来の不安に怯えて、いつ鬱になるか分からんような生活の何が楽しいのさ?それなら神になる方がいくらか楽しそうじゃん)」
〔楽しいかどうかは分からんが、お前がそれならそれでいいや。ちなみに元の世界に帰る方法は無いから〕
「(しれっと平気で鬼みたいな事言うじゃん。自分じゃなかったらクレームもんだよそれ)」
〔お前じゃなかったらもう少しオブラートにでも包んで言ったっての〕
「(あっそ!それでこれからどうすんの?)」
〔修行だな。いきなり細かい事言っても分からんだろうから、少しづつ順を追って説明していくから安心しろ〕
「(システムって言ったらさ、何か画面みたいなのでてこないの?ステータスオープン的なアレ)」
〔ないな~その案も考えはしたんだけど、声だけで何とかなるだろって〕
「(手抜きかよ……じゃあ、クエスト的なのクリアして報酬得たりとか?)」
〔無から有は生み出せねぇ〕
「(じゃあ何をサポートしてくれるんよ?)」
〔知識的なもんかねぇ〕
「(なるほどね。何もこの世界のこと知らない自分には確かに一番助かるサポートだわ)」
〔それで納得してくれてありがてぇよ。まぁ少なくともそこいらの若造よりはモノを知ってるから安心しな〕
「(若造よりは……)」
〔辞書一つ取ったって、知らない事は書けないだろうが!知らない事は知らないしそれ以上はサポートできねぇ!〕
「(そんな勢いよく言わなくてもさ)」
「おい、小僧!起きてるか?そろそろつくぞ」
女の人に声を掛けられて気が付くと、いつの間にやら結構な時間が経っていたのか、ちょっと陽が傾きかけている。
ゆっくりと剣が高度を下げていき大きな山の麓へと向かっていく。
山というべきか山脈というべきか、そこから先は聖域どころか魔境とすら見える鬱蒼とした深い木々に覆われた山。
その山際にはいくつか湖とその周辺に立ち並ぶ家々、山の手前はぱっつりと世界が切り離されたような砂漠なのに、なぜこの山はこんなに青々としているのか、これが聖域と言うものなのだろうか?
「(こんな所、聖域にあったか~???)」
うわー頼りにならねぇんだけどこのサポートシステム!




