24.いっそ蔵書閣を拠点にしたい
長袍ってやつだと思うけど、これ子供が着る物なのか?って言うか時代的に問題ない?いやでも論語にも破れた褞袍を着て子路がなんたらみたいな言葉もあったし、あるにはあったのか。
ただちょっとデザインが中華アクション風なだけだ。選んだの自分じゃないし、大丈夫!
何か名前が白小青だからって、青の長袍に白いズボンなんだけど、似合ってるんだか似合ってないんだかさっぱり分からん。
何だろう、マネキンとかモデルが来てる服をそのまま着せられた子供みたい。
でもまぁ、白のおばちゃんが似合ってるっていうし、このままこれを買って着る事にした。
どうやらこのおばちゃんは蔵書閣で働くのが仕事らしいんだけど、仮に騙されてちょっとお高い物を掴まされたんだとしても、所詮は準備金と一週間分の給金だし、かまわないかなってさ。
少なくともこの一週間は文無しのつもりで生活してても別に不自由しなかったんだし、大丈夫だろ?
そして、このおばちゃんは中々におしゃべり好きなようで、何でも聞けば教えてくれるので、情報源と考えれば、お安いなんてもんじゃないわ。
「それで、ここは蔵書閣なのに何で書物の蔵になってないの?」
「それはね、この宗にはそんな勿体ぶる程の功法や秘伝書が無いからなのよ。笑っちゃうわよねふふふふふ」
何が笑えるポイントだったのか、さっぱり分からないのだが、自分と喋ってる間このおばちゃんはずっと笑ってるし、気持ちがいいので特に指摘はしない。
「じゃあ他の宗に行けばあるの?」
「そうね~?うちよりはあるんじゃないかしら?何しろこの風塵宗って辺境の大規模弱小宗派って呼ばれてるんだし」
「なにそれ?」
「大抵の宗派とか門派って、強いほど大きいのよ。でもうちは大きいのに弱いし、弱いのに大きいのおかしいでしょ?」
「何でそんな事が起こるの?」
「どこから説明すればいいかしら?そうね~例えば風塵宗の特産って分かる?」
「知りません」
「主に木や草なんかの植物系の天材地宝とそれを狙ってくる魔物の素材がそれはもうたくさん産出するのよ」
「へ~?でも売り物がいっぱいあればその分発展しそうだけど」
「それがね、この蔵書閣見ても分かる通り功法やなんかが本当に少ないから、修行の進む大修士が現れにくい環境なのよね」
「買う訳にはいかないの?」
「一応買ってはいるけど、当然どこの宗派や門派だって、一番大事な所は門外不出でしょ?だから雑多に種類がある割に、効果の大きい物は少ないのよね」
「じゃあ、あるにはあるんだ?」
「一応二階が専門のフロアよ。行ってももいいけどあまり期待しない事ね。小白も修行するようになったら、一番いいやつをおばちゃんが選んであげるから」
本当は既に修行してるんだが、伝えてもいいもんだろうか?ちょっと様子見ておくか?でもそうすると功法やら秘伝やらを手に入れるのが遅れるか。
〔やめとけって!とりあえず基本的に必要な物なら俺が教えてやるから、本当に上位の物が必要になったら、秘境でも何でも行って手に入れればいい〕
何かシステムはここで功法や秘伝を手に入れるのは反対みたいだな。
「でも、何でそんな大きい宗派なのに良い功法がないの?」
「それはね、始祖様の話になるんだけど、そもそも始祖様って魔宗に追われてこの地までやってきたのね」
「逃げに逃げた先が辺境だったんだ」
「そうそう!それで偶然、大量の天材地宝を手に入れて、それで無理やり修為を上げて魔宗を撃退したの」
魔宗ってのは多分だけど悪者って意味でいいんだろうな?
〔ちょっとニュアンスが違うが、正道じゃない方法で修為を上げようとする連中とでも思っとけ、本来修為を上げること自体が天意に反する行いなんだが、自分がやってる方法こそが正しいだの王道なんだのと言いたがる連中は古今東西どこにでもいる〕
「ふーん」
「あら、答えが分かっちゃったかしら?修行じゃなくて素材だけで無理やり修為を上げた始祖様には特別な功法や秘伝が無くて、その後この宗派には大修士と呼ばれる人材を輩出出来なくなったのよ」
「でも、そんなに素材があるなら力のある宗派とかが奪いに来ないの?」
「いい質問ね!奪いに来たわ!」
「それでどうなったの?」
「辺境すぎるし、守らなきゃいけない範囲は広すぎるし、魔物はやたらいっぱいいるしで、一時的に支配してた宗派の有力者が片っ端から死んで、手を引いたわ」
「でも、うち弱小宗派なんだよね?何で維持できてるの?」
「数で頑張ってるのと、後は始祖様が秘境から得た秘宝のお陰ね」
「それも奪っちゃえばよかったじゃん」
「誰にでも使える代物じゃないらしいわ。おばちゃんも一度も見た事ない物だから詳しい事は分からないけどね」
なんともはや、神になれと言われてこの世界で辿り着いたのは辺境の大規模弱小宗派とは、運がいいのか悪いのか。
〔かなり良いだろうな。この宗派で問題なのは功法やら秘伝書の事だが、それは俺が教えられるし、逆に修行に必要な資源は手に入りやすいって事だ。俺は無から有は生み出せないし、それが手に入りやすいってのは運がいいと言わずしてどうする?〕
ふむ、どうやら自分に風が吹いているようだ。システムのいう事を真に受ければだけどね。




