20.どちらかって言うと純愛?
昨日と同様に午後から黄師姉は薬会に行ったのだが、自分は好師匠こと李長老の家に来た。
来たって言うか、薬会行きがてらに置いてかれたというのが正確か?
まぁ、元々そういう話だったし別にいいんだが、問題は毛師姉にめっちゃ睨まれてる事だ。
「黄師姉の所の童僕ね?本人は好きな男といちゃついて、子供を送り込んで点数稼ぎだなんて随分とi
い御身分ね!」
ごもっともな話ではある。
しかし、それって別に自分の罪ではないじゃん?それとも黄師姉の童僕だから同罪だとでもいうのだろうか?
ここは、何とか今後の動きやすさの為にも、折り合いをつけねば都合が悪い。
「毛師姉のいう事はごもっともなんですけど、自分にも立場と言うものがございまして」
「そうでしょうとも!黄師姉の手の物なんだから、私の邪魔をしたくて仕方ないんでしょ!」
「いや、表向きはそうなんですけど、自分個人としては別に毛師姉に恨みも何もないので、出来れば邪魔してるという体裁だけ何とかならないでしょうか?」
「体裁だけって……体裁だけ?何それ?」
「自分も見ての通り子供でして、親が無いので正確な所は分かりませんが、精々が八歳という所です」
「うん、見た目はそんな感じだけど、本当に実年齢通りの見た目なのね?」
実年齢通りじゃない見た目って何だろうか?ちょっと疑問に思うが、今は毛師姉との妥協点を見つけるターンだ。
「ええ、そういう訳で今追い出されるわけにもいかないのですが、逆に毛師姉に盾突くような実力がないのも確かです」
「そうでしょうとも!八歳なんて気の導入の修業しただけで雑念が入って大変な事になるわ!」
「全くもってその通りなので、どうか表向きだけ毛師姉の邪魔をして、李長老のご機嫌取りをしてるって事にしてはいただけませんかね?」
「それって、私に何の得があるの?」
無いっすよね~!何とか子供に同情してくれないかとは思たけど、世の中そう甘くは無いっすよね~!
「そこなんです。自分は毛師姉の事をよく知らないので、どうすれば毛師姉のお役に立てるか分からないので」
「黄師姉の足を引っ張って頂戴!」
「それは自分の生活に差しさわりがあるので、他に何かないですか?って相談です」
ちょっと嫌な顔をしながらも、ちゃんと考えてくれる風で、この毛師姉もそう悪い人じゃないんじゃないかと思えてくる。
「他にって言っても、子供じゃ何にもできないじゃない」
ですよね~!その通りだと思います!そこを何とか子供だという事に免じて、お安くしていただけたらって話なんですけどね~!
「あ~それじゃあ、そもそも毛師姉って李長老の跡目を狙ってるんですよね?」
「違うわよ!」
うえ?!!!ちょっとびっくりしちまった。てっきり黄師姉との跡目争いで反目してるのかと思いきや、そういう訳ではないのか?
「じゃあ、何で黄師姉とあんなに仲悪いんです?」
「そりゃあ、黄師姉が師尊様の一番弟子なのは分かってるけど、でもそれを鼻にかけて師尊様を大事にしないじゃない。師は親同然!師尊様だっていつも気にかけてくださってるのに、黄師姉ったら金師兄の事ばっかり……実力から言っても跡目は黄師姉が継ぐのは分かってても、もうちょっと弟子としての態度があると思うわ」
す~~~~!思わず息を思い切り吸い込んじまう。だってこの毛師姉の言う道理もごもっともじゃん。特にここが古代中国の思想を受け継いでるなら尚更さ。
「自分には反論の余地も無いんですけど、毛師姉はやっぱりそういう師弟関係をキチッとすべきっていう考えで……」
「違うわよ!」
ここも違うんかーーーい!もう訳分かんない!全部違うんだもん!
「毛師姉は一体、どういうお考えなんでしょう?誰にも明かさないので、教えていただければ、ありがたいです」
「別に明かすも明かさないも皆知ってる事だもの。私は随分と前に師尊様に命を救っていただいたの」
え?ああ!命の恩人って事?それで、もっと李長老を大事にって言ってるのか。
「そういう事だったんですか!恩義に報いるってそれは素晴らしい事ですね」
「そうじゃなくて……」
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なんか言い淀んでるな~と思ったら、尋常な長さじゃない自分語りが始まった。
曰く、本当に貴重で本来毛師姉が口にできる筈のない丹薬を李長老が与えてくれたんだとか。
それはそれはもう、方々から反発を受けながらも『好』とだけ言ってそれを成し遂げてくれた李長老が命の恩人であると同時に、運命の相手だと思ったんだとか。
李長老の老い先短い人生、最後まで寄り添おうと心に決めたのだとか。
いや、もうね。純愛なのよ。おじいちゃん相手にここまで思い詰めて、絶対最後まで連れ添うって決めてるのは、子供じゃなくておじさんの方の前世界の自分が泣いてるのよ。
この二人、幸せになるには生まれてくるタイミングがずれすぎてたんだと思うけど、それでも幸せであって欲しい!
「う、うう……自分に!自分に何か出来る事は無いですか!」
「え?泣いてるの?そう……あなたは黄師姉と違って情義の分かる子だったのね。ごめんなさい疑って」
何か、こんな事で信じてもらえるのが心苦しくて、更に涙が溢れてくる。




