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12.修行って思ってたのと違う

 はい!ついさっきまでぶっ倒れてました!


目に真気を集めてみろとか言うからやってみたんだけど、いや案外それ自体はあっさり何とかなったんだけどさ。


目が回ってぶっ倒れたよね。


一気に視野が広がったかと思いきや、脳の処理が追い付かないって言うのかな?見えちゃいけないものまで見えた気がした時には気絶しててって感じ。


黄師姉の「そろそろ出かけるわよ~」で目が覚めた。


気が付いて最初に思ったのが、掃除してない!やばい!だったのだが「朝食べてなかったかしら~?」って、想定以上に黄師姉がおおらかな人で良かったわ。


なんか師匠の所でライバル視してたお姉さんがいるみたいだし、結構気が強いイメージだったんだけど、状況によるのか?はたまた子供には甘いだけなのか?


いずれにせよもう少し気を引き締めて行かないと!聖域(ここ)に来るまで、流されっぱなしとはいえ、言葉も通じないきつい環境に戻る事を思えば、石にかじりついててでも今の状況を維持しなければ!


まだ一日も経たない内からそう覚悟するくらいには、天と地ほどの差がある。


そんな事を思いつつ、黄師姉と来たのは昨日秦さんと通り抜けた内門外苑とかいう、賑やかな市場というか商店街というか、そんな感じの所。


その中でも、小綺麗というか端正というか、ちょっとお堅い感じがしなくもない木造りの建物に入っていく。


「黄師姉、ここは?」


「ここは薬会よ。私は週に5日ここで働いてるのよ」


嗚呼、異世界よやっぱり人間は働かなくてはならぬのか。


まぁ、そりゃそうよな。


修行者とて食わねば生きてはいけない訳で、何か功法とやらをやってりゃ後は好きにしていいよなんてそんな訳はねぇってな!


いや、なんかもう逆に安心した!いままで掃除してれば何とか食えるみたいな生活だったけど、働いて給料貰えるならそっちの方が絶対いいじゃん!


前の世界で毎日変わり映えのしない工場労働に嫌気がさしてたのは事実だけども、それは上司や同僚が嫌だっただけであって、別に仕事自体は嫌いじゃないし!


淡々とどこかの誰かが使う製品を丁寧に作らせてもらえればそれで満足だったし!


「小青?どうしたのかしら?働くのは私なんだから、あなたは別に緊張しなくてもいいのよ?」


おっと、自分の考えに没頭して、黄師姉の声が聞こえてなかった。


「すみません。それで、自分の仕事は?」


「無いわよ?」


「ナイワヨ?」


「だってあなたの仕事は今の所、私の童僕だもの。薬会でやることあるわけないじゃない」


まぁ、そりゃあ薬会とか言うからには薬を取り扱うんだろうし、自分に何の知識がある訳じゃないですけども、じゃあどう稼げと!やっとこまともな生活できるかと思いきや、結局子供というハードルが自分を苛むんですが!


「じゃあ、自分は何をしてましょうか?なんなら師匠の所で掃除でも……」


「それはして欲しい所だけど、まずはあなたが私の童僕として仕事しているというのを他の人に知ってもらわないと、何かと不便でしょ?」


確かに言われてみればそうか!今後黄師姉のお使いとかで誰かを訪ねるにしても、急に知りもしない変な子供が現れたら当然誰でも警戒するし、逆に早い段階で紹介しておいてもらえれば、動きやすくなるってもんだ。


黄師姉の言に納得して、手をつないだまま薬会に入ると、思ったより手狭な感じ。


何というか外観だけ見ると、随分と広そうなんだが、中に入ってみるとあっちにもこっちにもカウンターが設置されていて、更にお客さんと思わしき人々がそこらで順番を待っている。


と言っても、日本の様な整然とした感じを想像したら大間違いだ!


手に木札を持った人々が、大声でしゃべりながら、そこら中でたむろしてると言った方が、ほぼ実情に近いだろう。


すると、黄師姉が一つのカウンターに近づき、中々顔の造形が整っているというか綺麗な左右対称でやや薄めながらどこかうっすら華やかさを感じさせる男性に話しかける。


「金兄さん!」


「靜……」


うん、お互いの名前を呼ぶだけで、随分とまた間を使ってくれるじゃないか。


なんかさぁ、ここまでさっぱりとした雰囲気な人ばかりだったから、こういうのは無いと思ってたんだけど、絶対この二人恋人じゃん!


いや、別にいいよ!嫉妬してるとかじゃないんだよ!マジで!


自分だって今でこそ体は子供だけども、前は40過ぎのおっさんだった訳だし、若い男女が恋仲でも別に微笑ましいとしか思わんのよ。


でもねぇ、来てるお客さんらしき人達がことごとく微妙な雰囲気になってるからさ、ちょっと控えたらいいんじゃないかい?


仕事って事は、一応客商売だろこの感じは、さ?


薬会って言うくらいだし、薬売ってんじゃないの?昔風のドラッグストアなんじゃないの?


そんな事を思っている内に、どこからともなく現れた別の従業と思われるお姉さんに連れて行かれる黄師姉。


先程、薬会に入ってすぐカウンターが立ち並ぶ大部屋とは違い、半個室が並ぶそこは、見た感じ薬を買いに来たというより、薬を作る人用の相談窓口の様だ。


それでも、身を乗り出し、ぎりぎり先程の金兄さんとやらの姿をちらりと見かける度に顔がほころぶ黄師姉は、完全に恋する少女の顔をしている。


自分はこれからここで修業すると聞いて、あらゆる欲を断つ僧侶の様なものを勝手に想像してたんだけど、この感じだと実はもっとフランクって言うか、そんな厳しい物でもないんじゃないか?

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