陰キャの後輩が可愛い百合
グイグイくる後輩さん(陰キャ)。
百合。
「雨だ」
呟く。
おかしいな、今日は雨は降らないはず。
しかも、土砂降りだし。
私は頭を抱える。
「やんでくれるかな…」
今は昼休み。ワンチャン、放課後までには。
結局やまなかった。
「濡れるのだるい」
私に友達がいれば、「ごめーん、相合傘しよー?」て言えるのに。
言える、か? 言えないな。
でも、相合傘はできるはずだ。
まあ、周りから怖がられている私には、無縁な話だけど。友達いない、私はヒトとして成長したいだけなのに、結果周りから「キツい女子」と避けられる。
「濡れるしかないか」
呟きながら、玄関へ向かう。
「あ、後輩ちゃんだ」
玄関に立つ後輩ちゃん(高1、ちなみに私は高2)。
ピンクの傘を1本持っている。
あまりにも似合わないから「イジメか?」と思ってしまう。ピンクの傘を持たされるイジメ、何だそりゃ。
いつもうつむいてるし、髪の長さも校則ギリギリだから、どうしても思ってしまう。
陰キャ女子だ、と。
「あ、こっち向いた」
「!」
トテトテ,
靴を脱いで走って寄ってくる。
なんか、子犬みたいだ。
「ハア,ハア」
疲れるの早いな、10mくらいしか走ってないのに。
グイッ.
傘を差し出してくる。
無言、うつむいて。
グイグイッ.
無性に傘を差し出してくる。
「自分の分はあるの?」
ブンブン,
首を横に振られる。
なんで1本しかないのに差し出すの? て、いつもの私だったら言うんだけど。「キツい女子」と言われる、それで。
この後輩に、そんなこと言ったら。
「じゃあ、相合傘、しようか」
コクコクコク,
首折れない? て感じで首を縦に振ってくる。
そして、
「うん、相合傘は嬉しい。相合傘は嬉しいんだけどさ」
「?」
「すっごいこっち寄ってるよね、傘」
「…」
「濡れてない? いや、濡れてるよね、思いっきり。土砂降りなのに」
「?」
「わからないフリしないの」
「…」
本当に、何で「キツい女子」て怖がられる私に、この「陰キャ後輩ちゃん」はグイグイくるのだろう。
エサをあげた覚えはないんだけどなぁ。
読んでいただき、ありがとうございました。




