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月奏の調律師 〜無音の旋律は恋を知らない〜  作者: 寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
壊れた譜面を調律する、私のこの手が震えるほどの恋心
34/50

音の再構築、譜面進化理論

《エル・ノート》で沈黙の核が解放された翌朝、世界は静かに震えていた。

それは、破壊ではなく、再構築の予兆。

各地の魔力塔が微かに共鳴し、譜面が新たな色を帯び始めていた。


魔術師協会セレスティア・コンコルドでは、緊急会議が開かれていた。

議題は――「譜面進化理論」。


「これまでの譜面は、感情の記録であり、魔力の制御装置だった。

だが、ルナ・ミレイユ=クラウスが触れた“沈黙の核”は、譜面の構造そのものを変えた」


解析官が、空間に浮かぶ譜面を指差す。

それは、従来の五線譜ではなく、多層構造の共鳴譜面。

感情、記憶、精神、そして“意志”が同時に記録されている。


「これは、音楽が“生きている”証拠です」


ルナは、会議室の隅で静かにその譜面を見つめていた。

彼女の譜面は、透明から淡い金へと変化していた。

それは、音の真理に触れた者だけが持つ“無限の譜面”。


「……この譜面は、私のものではありません。

世界が、自ら奏で始めた音です」


ノアが、彼女の隣に立つ。

彼の譜面も、銀から深い青へと変化していた。

それは、支える者が“共鳴者”へと進化した証。


「君の音が、世界を目覚めさせた。

でも、これからは……世界の音が、君に語りかけてくる」


協会幹部が、ルナに新たな任務を告げる。

「各地で“譜面の進化”が始まっています。

だが、それに耐えられない空間もある。

君には、進化の調律を依頼したい」


ルナは、静かに頷いた。

「私は、調律師。

でも、譜面は進化する。

ならば、私も――進化しなければ」


その夜、ルナは《エル・ノート》の丘に立っていた。

風が吹き、譜面が揺れ、空間が静かに震えていた。


彼女は、ハーモナイトを手に取り、静かに呟いた。

「召喚――The Millennium《It’s You》」


空間に、優しく包み込むような旋律が広がった。

現実世界の60年代ソフトロック。

個人の存在と世界との繋がりを描いた、繊細で深いコード進行。

それは、音の進化を受け入れる者に寄り添う“統合の音”だった。


譜面が震え、空間が澄み、感情が整っていく。

ルナの譜面に、淡い緑と金が重なり始める。

それは、育てる音と未来の音の融合。


ノアが、彼女の隣に座る。

「君の譜面は、もう完成してる。

でも、僕は……その音の“これから”を聴きたい」


ルナは、彼の言葉に静かに微笑んだ。

「ありがとう。

あなたの譜面が、私の旋律を進化させてくれる」


そして、二人の譜面が重なった瞬間、空間に新たな旋律が生まれた。

それは、恋の確信。

それは、音楽と感情が完全に融合した“共鳴の証”だった。


その翌朝、協会から新たな報告が届いた。

「南方の浮遊都市リュミナ・ヴェールで、譜面が“多重共鳴”を起こしている。

空間が耐えきれず、魔力が暴走寸前です」


ルナは、ハーモナイトを胸に抱いた。

「次の調律地は、そこですね」


ノアが頷く。

「君の音が、必要とされてる。

でも、今度は……僕の譜面も、君と共に響かせたい」


ルナは、彼の手を取り、静かに言った。

「一緒に行こう。

音の進化は、ひとりでは奏でられない」


そして、二人の譜面に、淡い虹色が差した。

それは、進化の旋律。

それは、世界と個人が共鳴する“新たな音楽”の始まりだった。

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