僕はオークに無双する
無双の始まりです。
気がつくと、僕たちは森林の入り口に立っていた。
「ねっ、すごい衝撃だったでしょう。わたし、ゲームオーバーになったとき、コントローラーの振動をマックスになるように作ったの」
美崎はとても楽しそうだった。
「驚いたよ」
「わたしも。こんな序盤のマップにオークなんて配置しないもの。プログラム見てみるね」
世界が一時停止して僕たちの前に開発画面が現れた。
「何か分かった?」
プログラムを見つめる美崎に声をかける。
「うーん。何となくだけどね。こんなことならば吉田先生にもっとプログラム教えてもらっとくんだった」
「AI使えないものね」
「そうなのよ。でも少しだけわかったの。プログラムがおかしくなってる。まるで素人が勝手にいじったって感じ。モンスターの出現位置や出現率のパラメーターがめちゃくちゃって言うか」
「それって僕たちの世界を誰かが勝手にいじったってこと?」
「多分そうだと思うわ。でも大丈夫。わたしたちはゲームプレイヤーなんだから」
「確かに。プレイを続けてればなんとだってなる」
僕たちのゲームはなかなかの出来だと思う。
全ての行動に経験値が入る。
プレイヤーのレベル上限は無し。いくらでも上げられる。
ゲームオーバーになっても、その時までに獲得した経験値やアイテムなど失う物は何もない。ただ直前の安全地点に戻るだけ。
しかも、ダンジョンの中からだろうと、どこからだろうと、いつでも好きなときに、立ち寄った事のある場所にファストトラベル可能。
対して、プレイヤー以外のキャラクターやモンスターには何もない。レベルも固定か上限有り。
ゲームクリア出来ない訳がない。
「よし、オークに再挑戦だ」
僕たちは身をかがめて森に入る。徐々に上がる隠密スキル。
でも、すぐにオークたちに見つかり拳を受ける。
「パンチ2発まで耐えられた」
「体の強度が高まったわ」
「これだけの強攻撃を喰らえば、耐性値の上がり幅がとても大きい」
「何度だって挑戦ね」
僕たちはこれを何度も繰り返した。
隠密で森の中心まで一気に行く。隠密スキルだけでなく歩行速度もかなり上がってきた。
森の中心はオークの巣窟と化している。隠密スキルを上げてもなかなか突破出来ない。
唸りを上げて振り下ろされるオークの拳を受け流す。少しだけ余裕が出て来た。こちらからも反撃。オークの横腹に自分の拳をたたき込む。効かない。美崎もオークの攻撃をかわしながら、神の力でマジックニードルを打ち出す。効いていない。だがもっとだ。繰り返すことでクリアへの道が開かれる。
ゲームオーバーで戻った森の入り口。僕たちは高揚感でテンション爆上がりだった。
「反撃出来るようになったね」
「わたし楽しすぎて、どうかなっちゃいそう。ジェットコースターよりだんぜん楽しい。早く行きましょう」
僕の拳がオークのみぞおちにめり込む。膝から崩れ落ちるオークの巨体。
オークにダメージをあたえれば、それだけで経験値爆上がりだ。僕は高速移動で他のオークにも拳をたたき込む。
美崎はマジックアローの連射でオークを倒している。僕たちはかなり戦えるようになってきた。
そこに現れたのは、武器持のオークたち。棍棒を持ったオークたちの後ろには、斧や剣を持ったオークたちが控えてた。
いったいどこに潜んでいたのやら。
負けても再チャレンジだ。
振り下ろされる棍棒を軽々とたたき割る僕の拳。振り下ろされる斧や剣も刃を指先ではさんで砕く。飛んで来る矢や弓は次々と空中でつかんで相手に投げ返してやる。
美崎は美崎で、極限まで高めた超高速連射で何かを打ち出している。
何かというのは、この世界の5元素をあらゆる配合で作り出した美崎オリジナルのスペシャル属性アローと言ってたから上手く説明出来ない。
オークたちが跡形も残さず消し飛んでる。オーバーキルだよな。
最後に現れたのは天を突くほどの超巨大なエンペラーオーク。
ほんとに、いったい今までどこにいたんだよ。
美崎が、巨大彗星でも止められると言う神の金縛り魔法でエンペラーオークの動きを封じる。
そこに僕が、神の力を込めた拳を叩き込み、モンスターの体内に神の力を流し込む。
神の力を流し込まれたモンスターの体は中から破壊され爆発する。
名付けて、ルーメン神拳っ!
「きゃ♪ やっと出た。これ、わたしのパパが大好きな漫画をヒントにして作ったの」
美崎の喜びの声。
僕はそれにこたえて、決めゼリフを口にする。
「醜いオークよ。お前はもう、おだぶつだ」
「ヒブー」
エンペラーオークは汚らしい叫び声を上げてバラバラに吹き飛んだ。
こうして僕たちは森林を抜けた。
最初の目的地、始まりの村はもうすぐだ。
美崎が頼りにしているチャットAIPの名前の由来は、「チャット出来るAIプログラム」から来ています。
先にちょっとネタバレ。
このオーク騒動が起きたのは、後輩、坂田 竜王のせい。




