僕はオークにボコられる
異世界ファンタジーいよいよ幕開けです。
そうなんだ。
紺碧の空の下。どこまでも広がるのどかな草原。東西にまっすぐのびる道には轍跡。道の先は森林が見える。
修道女姿の美崎と修道士姿の僕ははそんな世界に立っていた。
「えっ、なんで。わたしたち。いつの間に……」
「えーと……。ここって、僕たちが作ってたゲームの世界だよね」
ポカンとあたりを見回す僕たち。この世界はとてもリアルだ。
草原を渡る風の音。かすかに鼻をつく土や草のにおい。空を渡る鳥たちのさえずり。全てが本物だ。
「ねえ、ミサ。もしかだけど僕たちって、」
そこまで言いかけたとき、突然世界が停止した。
全ての音がやみ、風が止まる。風にたなびく草はその姿で固定したまま停止。鳥たちも空中で固まったかのよう。
「ねえ、ハル。これを見て」
美崎はまっすぐ僕の方を見ているけれと視線が僕に合っていない。
「なに? いったいどうなってるの?」
僕は訳が分からない。
「あっそうか。そっちからじゃ見えないんだ。こっち、こっち。わたしの横に立ってみて」
言われた通り美崎の横に立つと、なにが起きたか少しだけ分かった。
「オプション画面!?」
美崎が見ていたのはゲームプレイ中に設定ボタンを押すと開かれるゲームオプションの画面だった。
キャラクターのステータスやアイテムの確認。武器や防具の装備。スキルやクラスのセット。容姿の変更やゲームプレイの設定まで何だって出来る。
「ミサ。これ、どうやって出したの?」
「うーんと。わたしたちって、ゲームプレイヤーになってるんだなって思ったの。だからオプション画面も出せるよねって、オプション画面を出すことをイメージしたの。そしたらこうなった」
オプション画面を出すイメージって……?
とにかく僕もやってみることにした。
頭の中で設定ボタンをおすイメージ。
ボタンを押せばゲーム画面から抜けてオプション画面に切りかわるのがいつものこと。
って、出た!! 目の前にオプション画面が現れた。
「ねっ。出たでしょ」
美崎が嬉しそうに僕の画面をのぞいてきた。
「ねえハル。わたしたの職業を見てみて」
僕たちはレベル1の聖職者。クラスは駆け出し伝道師。
そこまではいいとして、職業の欄がもう二つある。
セカンドジョブ…ゲームクリエイター
サードジョブ…ゲームプレイヤー
「なんだこれ? ジョブが三つもある」
「きっとわたしたち、自分で作ったゲームの中で、聖職者キャラで、ゲームプレイしてるんだわ。それが表示されてるのよ」
「あっ! そうだ。だとすると、これが出来るかも」
美崎が言うと、美崎のオプション画面が別の画面に切りかわった。
二匹のワニが四角く絡むアイコンが表示される。
いつも美崎がいじっているゲーム開発画面だ。
画面の左側にゲームのプログラムリストが表示されている。
「教えてチャットAIP」
美崎がAIに話しかけるが……。
画面には 「端末がオフラインです」 の文字。
「ネットにつながってないんだ」
一瞬がっかりした様子の美崎だが、すぐに笑顔になる。
「ねえハル。ここはわたしたちが冒険したかった世界よ。なんだかわくわくしない?」
美崎は昔からいつも前向きだ。僕はそんな美崎から元気をもらうことがよくある。
「そうだね。楽しい冒険の始まりだ」
僕もなんだかわくわくしてきた。
「最初の目的地は、始まりの村だね」
僕たちはオプション画面からマップを開いて確認した。
間違いない。西に見える森林を抜けた先が最初の訪問地だ。
「この辺りは弱いモンスターしか出ないから村まで簡単にたどり着けるね」
そんな話しをしながら僕たちは森林の中に入っていった。
すると突然僕たちは魔物に囲まれた。魔物の背丈は人間の倍以上。茶褐色の体は筋肉の塊だ。うなり声をあげる大きな口の両端からは長い牙が飛び出し、残忍な目で僕たちを睨みつけている。
オークだ。オークがなんでこんな所に。
僕はとっさに美崎をかばおうとするが、無意味だった。
拳を振り上げ一斉に襲いかかって来るオークたち。
オークの拳が僕に振り下ろされる。体に走る凄まじい衝撃。
たった一撃で僕のヒットポイントはゼロになってしまった。
遠のく意識の中で聞こえる美崎の悲鳴。
GAME OVER
そんな文字が僕の意識に浮かび上がる……。
美崎がゲーム開発で使っているプログラミング言語は「クロコダイル」
ゲーム開発に特化したツールキット「アリゲーター」をアドオンして便利につかってます。




