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僕は自分の世界で無双する  作者: ウエンズディー・S・水田
行って帰りし物語り

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10/13

僕は戦わずして無双する

戦わずして勝つには仕込みが大切だと言うお話しです。

 さてどうしよう。

 その時、僕はモンスター達の群れを見て困ってしまった。


 僕と美崎で町の外に飛び出して、バーサーカーモードで戦えばいいのかな。

 でも、パーティに参加してるわが子が必ず僕達についてくる。

 このゲームは子供にダメージが入らないようになっているけどそれでも駄目だ。

 8歳の愛娘を暴力の渦に巻き込むわけにはいかない。いやいや、例え15歳以上だったとしても絶対駄目だ。


 そもそもモンスターの数が多すぎる。沢山のモンスター達がひしめき合ってフィールドを埋め尽くしてるんだ。

 バーサーカーになって戦って、沢山のモンスターをひたすら倒しまくっても、一度に倒せる数には限りが有る。

 戦いの最中、討ちもらしたモンスター達が町を襲ってしまう。

 しかも飛行型モンスターも沢山のいるから厄介だ。


 ……。それにしても……。


「それにしても何だろう。このモンスター編成は……」

「どうしたの?」

 僕のつぶやきに、美崎が怪訝な表情だ。

「肉食系モンスターと草食系モンスターが入り交じってるんだよ。これじゃゲームデザインとして全然駄目だよ」

 僕はゲームの世界観がファンタジーだからと言っても、そこにはリアリティーが必要だと思っている。

 全くの夢物語だったらプレイヤーの没入感を壊してしまうと思うんだ。


「ミサ。このモンスター編成が野生動物だったらどうなると思う?」

「うーん。草食動物と肉食動物がひしめき合ってるのね。多分ケンカになっちゃう」

「でしょ。そう思うよね。これじゃあ設定に無理が有るよ」

「ハルはそういう所こだわるものね」

 美崎は少し笑ってた。


 美崎はあまり気にしていないようだけれど、モンスターも変なのばかりだ。


 動物をモデルにして新しく作ったりのだろうか。


 元ネタより大きな肉食系モンスター。

 ネーミングはビッグライオン。それとビッグタイガー。

 …………どうでもいいけど生息域が違うぞ。


 他にも有るぞ。ビッグピューマにビッグジャガー。それと、ビッグコヨーテにビッグハイエナ。雑食系もまじってるな……、

 てか、何でもかんでもビッグならモンスターなのか……?

 いやいや、なんだこれ。ジャイアントライオンもいる。しかもビッグライオンと見分けが付かないぞ。


 ジャイアントコング、メガコング。

 メガライオンにテラライオン……。

 もういい加減、でかさに頼るのやめにしてほしい。


 草食系モンスターはと言うと、ふた首白サイにみつ首黒サイ。よつ首ラクダ……。そうなのか。草食系は頭の多さで勝負ってか。

 九首キリン って……

 ………化け物か、やめてくれ。


「あっ。ねえハル、これを見て。空を飛んでいるモンスターなんだけど、こんなんで本当に飛べるのかしら?」

 美崎が空を飛ぶモンスターを指さした。


 細長飛び竜とネーミングされたそのモンスターはとても長い体を持ち、二つの小さな翼が飾り程度にちょこんと背中に付いていた。

 東方風のデザインだが、リアルに考えるとこれが飛ぶには無理が有る。


「ハハ。確かにね。風船じゃないんだから。こんなんじゃ飛べないね」

「こっちのモンスターも見てみて。こんな体じゃ飛行能力、ニワトリなみよ」

 そこにはヘビードラゴンと表示されたモンスター。西方風のデザインでズングリした巨体。だけど、広げた翼の大きさは体長ほどもない。

 たしかにね。


 そもそも西方、東方入り乱り。設定がひどすぎる。

 もしここにデカケツ硫化水素が現れたら、今回の騒ぎの犯人は後輩の坂田君しかいないだろう。


「ねえ、ミサ。この状況だけど、プログラム的にはどうなってるんだろう?」

 僕は気になって美崎に聞いてみた。


「そうねえ」

 と言って美崎が開発画面を開く。

「プログラムはこの辺なんだけど……。わかりにくい。複雑だもの」

「ママ。あたしがてつだってあげるよ」

 二人の会話を聞いていたわが子がそう言ってきた。

「フィニットちゃん。ママのプログラミングのお手伝いもできるの?」

「うん」


 そう言えばトイレを作ってたものな。無限の可能性で僕達を手伝ってくれる、そんなわが子ならば出来るかも知れない。


「それじゃあね、あの怪獣さん達、この町をこわそうとしているんだけど、それが分かるものを出してくれる」

「わかった。ここに出すね」

 そう言うと、画面に数字とアルファベットで埋めつくされた表計算ソフトが現れた。

「この文字コードを私たちが読めるように変換して」

「うん。デコードだね」

 表の中身がパット書きかわり、僕達が読める言葉や数字が現れた。

 表にはタイトルが付いていて『モンスター集団行動パラメーター』と書かれていた。


 僕たちが読んでみると、集団は怒りモード。攻撃対象は無し。攻撃方向は東。

「つまり、怒りにまかせて東進してるんだね」

「進む先に有るものを壊して行くだけだわ。ひどいわね。これをやってるの、りゅうお君なのかしら」

 美崎も坂田君のことを考えてた。

 彼はお人好しで、全く悪気のないやつだ。みんなからも好かれてたし、彼も僕達のことを慕ってた。

 マイペースな所が有って、変なモンスターばかり作ってはいたけれど。

「こんなわる事をするようなやつじゃないと思うよ。もし本当に坂田君だとしたら、何か大きなわけが有るんじゃないかな」

「そうよね。あの子がこんなことするとはとてもおもえないもの」

「彼のことはひとまず置いといて、この状況どうしようかな」


 うぅーん…………。二人で考えた。


「わたし思ったんだけど、さっきのハルの話し。このおかしな設定を直すだけでほとんど解決しちゃうんじゃないかな」

「なるほど……。うんっ。そう、それだよ。僕もそう思う。それだけで勝てるかも」


「まずは……。フィニットちゃん。このモンスター集団のパラメーターにある怒りモードと攻撃方向を無しにして、プログラムに再設定して」

「はいっ」

 表計算ソフトのデーターが、ぱらっと変わって、設定完了の文字とともに、画面から表が消えた。

「これでモンスター達の攻撃行動は消滅ね」

「フィニットちゃん次はモンスター一つ一つのデーターを見やすく表にしね」

「はいっ♪」

 大きな表が画面に表示された。

「うぅーんそうねえ。それじゃ実在する生物のデーターを参考にして、このモンスターたちのおかしな設定値を正しい数値に直して」

「はいっ♪♪」

 表の数値がパラパラと大量に変わって行く。

 美崎はしばらく表をながめてから、

「うん。いい感じよ。現実的な数値にかわってる」と言った。

「よし。準備オッケーだね」

 僕が言うと、

「パパとママのムーブもついかしたよ」

 わが子が何か追加してくれたらしい。

 それじゃと僕はゲームをリアルタイムバトルモードに戻した。

 何が起きるから見てみよう。俯瞰モードで、高見の見物だ。

モンスターデザイン担当の後輩、坂田龍王君て誰だっけ? と言う方は第一話にちょっとだけ出てますのでご参照下さい。



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