僕は時空砲の直撃をくらう
物語のプロローグです。
終了を告げるチャイムの音。
放課後だっ! 僕は帰り支度を済ませると、クラブ室へ向かった。
僕の名前は、海野 春海。この学校のゲームクラブでゲームデザイナーを担当している。
ガラガラッと扉をあけてクラブ室に入ると、幼なじみの女子が一人。パソコン机にうつ伏せになっている。
眠っているのかな?
「ミサお早う」
僕は彼女の肩をゆすりながら声をかけると、
「お早うハル」
と返事した彼女はフワリと立ち上がり
「わたし、眠い」
フゥーと言って僕に抱きついてきた。
彼女は幼なじみの、空島 美崎。
4歳の時に将来を誓い合った中だ。
中等科の頃お互い疎遠になりかけたが、高等科になってからよりが戻りつつある。
そして彼女はゲームプログラミング担当。
二人でゲームのアイデアをパソコンの中で実現している。
と言っても、ほとんどAIまかせだけど。
「青春してるわね、あなたたち」
と言いながら入ってきたのは超美人の先生。
クリスティーナ・エンジェル・吉田
外国人を血縁者にもち、見た目は海外の映画スターかトップモデルかと思うほどの容姿。
しかしかつては国防組織のトップに立った人物だ。
それが組織内部の政治闘争に嫌気がさして、今では僕たちの学校で教師をしている。
実は今でもかなり国防組織につながっているらしいけれど。
「お早うございます。吉田先生」
僕と美崎の声がハモる。あれっと思ったこの瞬間、二人のバランスが崩れて、美崎が僕を浴びせ倒した。
床に仰向けの僕に覆い被さる美崎。
「本当に青春してるわね、あなたたち。でも気をつけてね。今が一番出来やすい年齢よ」
と、そんな事を言う吉田先生に美崎が
「わたしたち、お互いをとても大切に思ってるから、そんな無責任な行為には及びません」
と立派そうな答えを、僕に覆い被さったままうっとりとした声色で言う。
「説得力ゼロね」
と呆れる吉田先生は、念のために言っておくと、クラブの顧問では無く普通にこのクラブのメンバーだ。自主、自由、独立を何よりも重んじる僕の学校の方針は、生徒だけでなく教師にも及び、教師もクラブの一員として活動出来る。
だから、立場はとりあえず僕らと横並び。
そんな所に、次々とクラブのメンバーがやって来た。
「キャッ! 美崎先輩が春海先輩を襲ってる。私にもチャンスが有ると思ってたのに。ウゥゥゥ」
僕を見つめて涙ぐんでいるのはゲームミュージック担当で、やたらと僕と仲良くしたがる、可愛いだけじゃ駄目ですか系女子。根尾兎 音音。
「君たち、やったれやったれ。その体験をゲームのしかるべきシーンに生かしてリアリティーをもたらそう」
本気でそんなことを言ってくるのは、黙っていれば真面目に見える美形男子。
しかしその実態は、ゲームにやたらとエロ要素を入れたがり、いつも僕たちからNGを出されている困った人。
一応、ゲームアイテム担当の黒出流 光先輩だ。
次にやって来たのは、ロングな黒髪なびかせ系クール美女だけど物凄く兵器マニアで武器、兵器アイテム担当の先輩。空龍院 黒宮。
腕組みをして僕たちを見下ろすと、フッと一息もらして去っていった。
ほかにもいる。モンスターデザイン担当の男子、坂田 龍王はアイデアにムラがある。
「先輩。こんなモンスターどうですか。巨大でまっ黄色なお尻がたモンスター。割れ目から噴火山のように腐卵臭ガスを吹き出すんです。名付けてデカケツ硫化水素」
「ボツ」「ボツ」
僕たちは声をそろえる。そんな感じ。
クラブメンバーの話はたくさん書きたいし、みんな重要人物なんだけれども、そろそろ事件の話を書かないと。
この時僕たちが作っていたのはファンタジーRPG。しっかりとした世界観を打ち出しつつ、とてもユーザーフレンドリーな仕上がりの作品を目指してた。
プレイヤーが選べる初期キャラクターは修道女か修道士と言う少し変わったゲームデザイン。
この世界観が僕たちに降りかかって来ることになる。
ぼくと美崎がパソコンの前で肩を並べて開発画面を見つめていた時だった。
「修道士と修道女の服装デザインだけどミサはどう思う?」
「うーん。やっぱり純白で修道女はフワッとしたシルエットで修道士はカッチリじゃなかな」
「だよね。そうだ、黒光り先輩に服をマジクアイテムとしてアイデア出ししてもらおうか?」
「うーん、先輩に服装は……。なんか嫌かも。雨に濡れると透けてきて、もっと濡れると溶けて無くなる服をゲームに実装されちゃうかも」
「……かもね。僕たちで考えよう」
なんて言っていると、クラブ室に設置されているテレビの電源が突然入り、緊張したアナウンサーの顔が画面に映し出された。緊急放送だ。
「国民の皆さん。冷静に聞いてください。
実は宇宙人は本当にいたのです。
ただ今、宇宙人との平和交渉が決裂しました。
宇宙からの攻撃に備えて下さい。
命を守る最善の行動をして下さい。
宇宙から強烈な攻撃が地球に降り注ぎます。
今すぐに身を守って下さい」
宇宙人がいる? 交渉決裂……。宇宙からの攻撃? なんだそれ?
部屋の隅では吉田先生が大きな声で誰かと携帯端末で話している。防衛関係の人と話しているのかも。
「インスマス星系のクルウルウ星人……。
時空砲発射ですって! 着弾座標……。それってここじゃないの! こちらの時空砲を逆位相でぶつけて相殺を。えっ! 向こうは二門同時発射ですって。壊れても仕方がないわ、出力二倍でぶつけるのよ」
「皆さんすぐに机の下に避難して」
吉田先生の鋭い声が飛んだとき、世界を揺るがせる大音響が僕たちを包んだ。
僕は美崎の背中を抱え込んで、机の下に潜り込む。
その瞬間凄まじい衝撃が僕たちを襲った。
「キャッ」「ウァッ」
僕たちの意識はここで閉ざされた。
現実世界のお話は今回ここまでです。
現実世界の続きはエピローグで。




