絶対に読まないでください
※お願いです。この物語は、絶対に読まないでください。
あなたの心を侵します。
読めば、戻れません。
これは警告です。どうかページを閉じてください。
……まだ読んでいますね。
なぜですか?
怖いもの見たさ?
ただの好奇心?
それとも、自分だけは大丈夫だと信じていますか?
いいでしょう。
ならば、忠告はしました。
責任は負いません。
この物語には“名前”が出てきます。
その名前を知った者は、なぜか誰かに話したくなります。
無意識に、無自覚に。まるでウイルスのように。
そして“それ”を口にした瞬間、
あなたの「日常」は、静かに消えていきます。
それでも読みますか?
◆
彼女の名前は、シノハラ クミ。
ごく普通の人間でした。
朝は電車に揺られ、昼はコンビニでサラダチキン、夜は小さなワンルームで静かに眠る。
そんな、誰でもない誰か。
でも、ある日彼女はこの物語を読みました。
「絶対に読まないでください」というタイトルにもかかわらず。
その後、彼女はこう言ったそうです。
「ねえ、ちょっと読んでみてよ。
最後、ほんとにヤバいから」
その言葉を境に、
彼女の記録が消えていきました。
家族は「そんな子、いません」と言い、
友人は「いたような気もするけど……名前が思い出せない」と首をかしげた。
SNSのアカウントは消え、写真の顔はぼやけ、
ついには名前すら“ノイズ”になった。
でもひとつだけ、残っていました。
──彼女が最期に書き残した“感想”です。
「この話、マジでヤバい。
でも一番怖いのは……
私の名前、“シノハラ クミ”じゃなかったはず、ってとこ」
そう。
彼女は、読んでいるうちに“名前を上書きされた”のです。
◆
ここまで読んだあなたへ。
あなたの名前は、本当にあなたのままですか?
スマホのメモ帳、履歴、SNSアイコン……
一度、確認してみてください。
違和感がなければ、まだ間に合います。
ただし。
もしあなたの中に、「シノハラ クミ」という名前が引っかかって離れないのなら──
それはもう、始まっています。
あなたの存在は、
少しずつ、周囲の記憶から削られていきます。
誰かの写真に写らなくなり、
誰かの会話に登場しなくなり、
あなたという人間が、**“この物語に吸収される”**のです。
でも、たった一つだけ、助かる方法があります。
この物語に“感想”を残してください。
「怖かった」でも「意味不明だった」でも「ヤバすぎ」でもいい。
あなたが“読み手であった証拠”を刻むのです。
それが、あなただけの脱出コードです。
感想を残した者は、読み手であり続けられる。
書かなかった者は、静かに登場人物へと書き換えられる。
さあ、あなたはどうしますか?
──あなたが、次の「シノハラ クミ」にならないことを祈っています。
──完。
感想を‥おね‥が‥‥