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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

桃太郎

作者: 谷樹里

 鏡よ鏡、この世界で爺さんに好かれているのはだあれ?

 お婆さんは吉備団子を作りながら手鏡につぶやいていました。

 桃と名付けた子を拾ったのは数週間前。

 川の上から大きな桃が流れて拾って来たのが始まりでした。

 割ると小さな赤子が入っていたのです。

 女の子でした。

 人里離れて子もいなかったお爺さんとお婆さんは喜びました。

 桃はわずか数日で美しく育ちました。

 桃が何時しか桃太郎と名乗ったのには事情がありました。

 お爺さんがその美しさから、夜な夜な悪戯してきたのです。

 察したお婆さんは桃を憎みました。

 それからのお爺さんとお婆さんの家は静かな緊張感と重い空気の密度が濃い空間となりました。

 桃はある日、鬼ヶ島の鬼たちの噂を耳にします。

 家をでる機会。

 桃は桃太郎として鬼退治に行くと宣言します。

 お爺さんは誇りに思い喜び、お婆さんは吉備団子を渡してあげました。

 桃太郎さん桃太郎さん、お腰につけた吉備団子一つ私にくださいな。

 薄汚れた野犬が物陰から人の言葉を投げかけてきました。

 己妖怪変化!

 桃は刀で切りかかりました。

 格闘の末、犬は降参して桃に従うことにしました。

 次は猿です。

 手段は犬と同じでした。

 桃は容赦しません。

 一気に躍りかかり、素早い猿を一撃のもと降しました。

 雉もです。

 この辺りは妖怪ばかりか?

 桃は怪鳥を犬と猿と共にねじ伏せました。

 三匹の家来を連れた桃は海を渡り、鬼ヶ島に到着しました。

 彼らは村で虐げられ、居場所を失った孤児たちの集団でした。

 桃は彼等と相通じるものを感じました。

 お爺さんからの、お婆さんからの虐待と冷たい仕打ち。

 鬼と呼ばれていた子たちは桃の境遇に我がことのように憤りました。

 桃は怒って良いのかと気付きました。

 初めて傷を共有した桃はまるで宝物を得たかのように思ったのです。

 帰ろう、家に。

 桃太郎として。

 桃は決意して、三匹の家来を連れて鬼ヶ島からお爺さんとお婆さんのところに戻りました。

 娘の晴れ晴れとした帰還に喜ぶお爺さんと複雑そうなお婆さんを目の前にして、桃は抜刀しました。

 覚悟!

 桃は二人を迷わず斬り捨てました。

 すべては終わった。

 そう思った桃は三匹の家来と共に吉備団子を食べることにしました。

 しかし、口にしたとたん、身体がしびれ激しい吐き気と眩暈に襲われました。

 吉備団子は毒入りだったのです。

 桃と犬と猿と雉は、身体に毒が周り死んでしまいました。



 おしまい














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