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████、藤井遥香

 私の人生はいつも悲劇で終わる。無力で。弱さで。


 どんな道に進もうとしても、終わりは見えない。ただ、今まで以上に私を壊そうとする、さらなる行き止まりがあるだけだ。


 彼らの人生は私の良心に付きまとう。彼らの思い出が私の心をかきむしる。


 孤独な人。幼なじみ。作家。アイドル。アスリート。氷の王女。


 彼らは皆私を愛していた。私は彼ら全員を愛していた。しかし彼らは皆、死者の国へ旅立ち、その後すぐに私は悪夢の真っ只中に戻り、それをもう一度経験することを余儀なくされた。


 どうすれば私は…生き続けられるというのか?


「それがあなたへの私の唯一の願いです…決して絶望に屈しないで。」


「今は行きたくない…」


「話さないで…それは私をさらに傷つけるだけだ…」


「幸運を…偏執狂ちゃん。」


「最後まで付き合ってくれてありがとう。」


「おやすみ、愛しい人。」


 楽観的な女の子。嘘つきの女の子。被害妄想の女の子。心を閉ざした女の子。無気力な女の子。感情のない女の子。


 最後の瞬間、彼らは幸せだったのだろうか。


「あなたは生きなければならない。私のために…私たちのために。」


「私がそう言ったから、あなたは生きるでしょう。」


「ごめんなさい…ごめんなさい…本当にごめんなさい…」


「なぜ…なぜ、なぜ、なぜ?!?!」


「私は止まらない…あなたのためなら、決して止まらない…」


「おやすみ…」


 もしそれがたった一人だったら、私はきっと彼らの願いに従い、心を癒し、前に進むことを学べただろう。


 でも…


 私は自分が誰になったのか分からない。何になったのか分からない。


 ごめんなさい。私はもうあなたが愛した人ではない。


 結局、あなたの願いを叶えることはできない。


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「大塚さん、宿題?」


「あ…これです。すみません。」


「ありがとう…何か気になることでもあるの?いつもよりぼんやりしてるね。」


 またもや鋭敏さ…うっとうしい。


「何でもないよ…邪魔しないで。」


「…話し相手が必要なら」


「またしても、心配する必要はない。まずは自分のことを心配してください。」


「…昔はもっと元気だったのに。」


「……なんでそんなこと気にするの?」


「何でもない……ただの思い出話、かな。放っておいて欲しいなら……そうしておけばいい」


 クラス委員長がむっつりした表情で部屋から出て行くと、私は大きく息を吐いた。


 私が惨めなのは明らかだろう。もう隠せない。


 それでも、クラス委員長の「吉川佑里」の記憶はないので、何を思い出していたのか気になる。もしかしたら「大塚美香」の密かなファンだったのかもしれない……わからない。


 いずれにせよ、同じ歌と踊りが何度も繰り返されるだろう。私が何を間違っているのか、そもそも抜け道があるのかどうか、その兆候は一度もなかった。


 結局、抜け道を探し続けるモチベーションを上げるのは難しい。ただ横になって死ぬことを選んだらすべてが終わるのだろうかと思うこともあるが……今でも、まだそこまで落ち込んではいない。


 今のところは、流れに身を任せるだけで満足しています。吉川さんは、私がそう言ったのに、私を悩ませ続けるだろうと思っています。こういうことは、そういうふうに進んでいくのです。


 …ああ、もう、こういう恋愛を楽しむことすらできないようです。前世と同じように、誰かが私をそんな目で見ても何も感じないし、誰にも本当に愛を与えることはできないと思います。


 …学級委員長は本当に正しい。私は変わってしまった。とても嫌だけど、自分ではコントロールできない。


「藤井遥香」のような人は、このような拷問に耐える資格はありません。彼女の防御力は低すぎて、彼女の心が二つに引き裂かれるのは避けられません。


 …あの頃に戻りたいと思っても、この世にはそんな日々は存在しない。あるのは「大塚美香」だけ。それに、もう一度「藤井遥香」のようになりたいかという単純な問題でさえありません。結局のところ…私は、それらの感情を単に放棄することを選んだわけではないのです。それらはこの残酷な宇宙によって私から奪われた。


 …「大塚美香」は昔の「藤井遥香」のようだったのだろうか。学級委員長にその発言の意味を尋ねてもいいかもしれない…他にやることなんてないのに。


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「放っておいてくれって言ったのに、随分態度が変わったな、大塚さん」


「あんなに堅物なのに、人をからかうのがお好きみたいだね、吉川さん」


「……ただの観察だった。何でここに呼び出されたの?」


 学校の裏で誰かを呼び出すなんて、ロマンチックコメディの定番のパターンだ……もし私がまだ「藤井遥香」だったら、きっと自分の大胆さに赤面していただろう。


「昔はもっと活発だったって、どういうことか気になっただけ」


「あの頃は活発じゃなかったと思ってるってこと? かなり露骨だったよね?」


 私は……新しい人生に「入る」たびに、過去の記憶が曖昧になる。他人に聞くのも変かもしれないが……もう「変な行動」なんて気にしない。


「たぶん…わからないけど、ただその件についてあなたがどう思っているか知りたいだけ。」


「…当時のあなたをどう表現したらいいか…ちょっと抽象的な質問だと思いませんか?それに、あなたの過去をこんなに気にする人だとは思っていませんでした。」


「ええと、あなたがそう言ったときに、ちょっと思いついたんです…あの頃と今とで、私は本当にどれだけ変わったんだろう?」


「あなたは…なんて言えばいいか…うっとりする人でした。あなたの前向きさは、私のような陰気な孤独者、他人を傷つけることを恐れて自分を隠していた人間に刺激を与えました。とても美しかった…あの瞬間に恋に落ちたかもしれません。そして、きっと他の多くの人もそうだったでしょう…それほど伝染性がありました。」


 ああ…ダメだ。


 まるであの時のように…初めて心が傷ついたときのように。


「…こんな私を見て、あなたは傷つきますか?」


「…傷つきます。こんな重荷を背負わせてごめんなさい…あなたに何があったのかは知らないけど、きっとこの試練を乗り越えられる。戦い続ければ…いつか乗り越えられる。君ならできると信じている…君は強いよ、藤、いや、大塚さん。」


「藤…? どこでその名前を聞いたの…吉川さん?」


「ごめん、言い間違えた。最近ちょっと頭がぼんやりしてて…」


「なんで藤、吉川さんって呼んだの? 教えて。」


 私は目を見開いて彼女に近づく。手が震えて、体が崩れ落ちそうになる。


 「単純な間違いだよ、藤って名前の生徒はたくさんいるんだよ…」


「具体的に誰と間違えたのか教えて。」


「あ、私…怖いよ、大塚さん。これ以上近づかないで。」


「吉川さん、どの藤のことを考えてたの? 「答えて!」


 私が彼女の肩を掴もうとすると、彼女は素早く私の手をはたき飛ばした。


「やめて!私から離れろ!」


 彼女が逃げる前に、私は彼女の手首を掴み、手で彼女の口を覆って地面に押し倒した。皮肉なことに…私は妃蘭ちゃんのテクニックを盗んでいる。


「藤井遥香って名前聞いたことある?山崎愛子はどう?吉川さん、それらで何かピンとくるものはない?」


 彼女が必死に息をしているのを見て、私は彼女の口から手を離した。


「そんなことしないで…あなたはもっとマシだと分かってる…」


「あなたは私にこんな目に遭わせた…すべてのクソみたいな悲劇、すべての悲しみ、すべての苦悩、すべてあなたのせいよ!?」


「だめ!お願い、私を…」


「私たちの名前覚えてる?!岡村千鶴、杉山彩、村上沙織、寿子坂本、森谷琴凜、篠崎妃蘭、藤森思音、塩谷恕英、山野愛梨、岩本茶紀…みんな覚えてるから…みんなあなたの手によって死と悲しみに導かれたのよ!!!」


「壊れちゃう、やめてください!」


「あなたを壊してやる…あなたがしたことすべてに対して…私が経験したすべての悲しみをあなたにも味わわせてやる…何に対しても…すべてに対して!!!」


 彼女を殴ろうと腕を振ると…ただ宙をすり抜けるだけ。


 もう芝生の上には立っていません。学校は消え、私の下にはまばゆいばかりの白があり、太陽は消え去り…まるで生と死の境界に入ったかのよう。


 懐かしい人物が目の前に現れ、鏡のように私の動きを真似する。


 …それは「藤井遥香」。


 自分の指、服、髪を見下ろすと…私の体も「藤井遥香」と全く同じになっている。


 またこの体にいるのは不思議な感じだ。結局のところ、あの時から私の心はかなり変わった。


「藤井遥香」は私の動きを全て映し続けている。私が彼女に向かって歩み寄ると、彼女も同じように歩み寄って、私たちの距離はほんの数メートルにまで縮まった。


 彼女の顔には笑みが浮かんでいる。


 とても気楽で、とても無防備で、とても…明るい。


 本当に私はこんな風だったのだろうか…? こんなに長い間…こんなに…自由であることがどんな感じだったか忘れてしまったのだと思う。


「藤ちゃん!」


 背後から声が響く。聞き覚えがあるようでいて、私にとっては奇妙な声だ。


「岡村…千鶴?」


「あ、来る!」


 私の鏡像は私の動きを追うことから解放され、こちらに向かって走り始める。それはまるで私が存在しないかのように、私に目を向けることさえせずに通り過ぎます。


 まるで親友であるかのように、彼らは大騒ぎで話し始めますが、その間ずっと私はその場に凍りつき、状況の不条理さに驚いています。


 別の声が加わるのが聞こえます。そしてもう一つ。そしてさらに三つ。


 昏迷から目覚めた後、私は振り返ると、私の七つのアイデンティティすべてが、まるで昔から知り合いであるかのようにお互いに話し合っています。


 最も感情のない私自身でさえ、何も起こらなかったかのように微笑んでくすくす笑っています。


「ああ、████、あなたは私たちと一緒に来ないの?」


「私は…何をするために?」


「もちろん、私たちが幸せになれる現実を探し続けてください!」


「…それは愚かな行為だ。絶対に実現しない。」


「何、それで諦めるの? そんな風に? 持っているものを最大限に活用した方がいい。」


「他にできることはあまりないかもしれない。宇宙は私たちが思っているほど残酷ではないかもしれない。」


「あるいは、過去の人生を振り返って、間違いをやり直すこともできるかもしれない!」


 彼らは皆、期待して私を見つめている。しかし、私はその場に凍りついている。


 彼らに向かって一歩踏み出そうとしたとき、背後から声が響いた。


「████を連れ戻そうとしているなんて、何様だと思っているんだ!」


 聞き覚えのある声。


「塩谷…先輩?」


「そうだ、唯一無二の存在だ。彼らの言うことを聞かないで…出口を探し続けなければならない、私を信じてくれ!」


「ちっ、そんなことを言うのは誰だ?僕たちはもう七つのループを経験している。何をしても出口は見えない。だから、ただ手放して最大限に活用したらどうだ?」


「だから何? 彼女を永遠に至福の無知の中に留めておくだけで満足なの? たとえそれが少しの慰めになったとしても、そんな生き方は誰もすべきではない… 正直であってほしい。嘘をつくよりも人を慰める良い方法がある。」


 杉ちゃん…彼女がそう言った時、僕は胸に押しつぶされそうな罪悪感を感じずにはいられなかった。


「どうして僕たちに恋をしなくちゃいけないの? この地獄から抜け出すことに集中し続ける能力をそんなに心配しているのなら、どうして僕たちを放っておいてくれないの?」


「彼らは彼女に重要な教訓を教えたのではないですか? どんな良い物語でもそうであるように、苦悩は架空のキャラクターにとっても読者にとっても感覚を発達させる鍵です。そうでしょう、偏執狂ちゃん?」


 寿子さん。


「何、もう私達をおもちゃ扱いしてるの?私達は人間よ、遊んだら捨てられるおもちゃじゃないわ!」


「だから…ごめんなさい。でも、永遠にここに閉じ込められるのは…本当の永遠の愛の不可能性を果てしなく探し続けるよりずっと悪い運命よ。」


 岩本さん…


「現実はここで起こりうるどんなことよりもずっと残酷よ。楽しんでみては…あなたはそれに値するわ!」


「現実は残酷かもしれない…でも、諦めれば大丈夫だと自分を欺き続けるよりは、残酷な現実に正面から立ち向かうほうがいいわ。」


 妃蘭ちゃん…


「現実には追いつけないことが多いわ。どうせ私達には希望なんて残ってない。」


「彼女はあなたが思っている以上に強いのよ。いつまで彼女を守らなければならない弱虫のふりをし続けるの?」


 吉川さんも…?


「どうせ…私達は救う価値がないのよ。私たちは冷酷で、感情がなくなってしまった…あなたに何も返すことができない。私たちはあまりにも絶望に沈んでしまったので、去ることができないのです。」


「████…あなたはまだ私たちの約束を覚えているでしょう?」


 あ…山ちゃん…


「ごめんなさい…私はその約束を守れなかった。それはあまりにも困難だった…あなたにとっても、私には…できなかった。」


「大丈夫…それは壊れたら元に戻せないものではない。あなたならできると私は知っている。私たちもあなたならできると知っている。ただ前進し続ければ…あなたは自分の道を見つけるだろう。そして私たちもあなたを助けることができる。」


「ねえ、それは私のセリフよ…」


 私は…


「彼らの言うことを聞かないで! とにかく、あなたはいつでもこの夢から去ることができる…そして去ったら、二度と戻ってこられない!」


「あなたは決心をしたと思います…████?」


「…うん。帰ろう…」


 山ちゃんの手をぎゅっと握り、他の恋人たちが小さく頷いたりニヤニヤしたりしながら、私は未知の未来へと歩み始めた。


 …いつの間にか…また目が覚めていた。


「あらあら、起きちゃった!藤ちゃん、聞こえてる?!」


「塩谷先輩、静かにしてくれない?!鼓膜を破っただけでまた昏睡状態に戻っちゃうよ。」


「ごめんね、吉川ちゃん、興奮しすぎちゃった…」


「もうこの小説をあげなきゃ。君たちみんな、ここに作家がいるのに、私と一緒に小説を読む気なんてないんだから!」


「…私の小説以外は全部駄作。藤ちゃんも私の新作を見たらそう思うはず。」


「あぁ…この瞬間を…夢見すぎた…ごめんなさい…ただ…」


「涙が機械に流れ落ちる前にハンカチを持っていって…」


「…おかえりなさい、藤ちゃん。みんな寂しかった…そしてみんな愛してる。約束を守ってくれて…ありがとう。」


「おい、不公平だ!私も前に彼女とたくさん約束したのに…」


「また静かにして。彼女は目覚めたばかりで、たぶんすごく敏感になっている…医者を呼んで診てもらわないといけない。」


「いい加減、吉川さん、もう少し彼女と時間を過ごしたくないの?」


「それは問題じゃない…」


 私の名前は藤井遥香です。


 …私は七人の大切な友達がいて、みんなとても愛してくれていてとても幸運です。


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最後まで読んでいただきありがとうございました。エピローグエピソードの追加も考えましたが、この物語には「藤井遥香」がその後どうなったかは皆さんの想像にお任せする方がふさわしいと思います。


楽しんでいただけたら★★★★★の評価をお願いします。評価はどんな作家にとっても励みになります。興味があれば他の作品もご覧ください。


それではいつものように、おやすみなさい。さようなら。

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