微睡の目覚め
――最初は目が霞んでいるせいか、目を凝らしてもよく見えなかった。
ただ、白いもふもふした物体が至近距離でじーと私のことを見つめているのはわかっていた。それが形を変え白くて大きな光となり、さざ波のように辺りに広がっていくのだ。
ティアはゆっくりと目を開けると、そこには幻想的な光景が広がっていた。
私は大きな洞窟の中にいて、そこにはいくつもの透明な水晶の原石があり、僅かな光を受け虹色に輝いている。
まるで、絵本のおとぎ話に出てくるような、妖精が住まう水晶が広がる洞窟のように見える。
「……。」
むくっと私は上半身を起こし、寝ぼけたまま周りをきょろきょろと見回したが、さすがにこれはまだ夢の中だと思い、目を瞑るとまた横になる。
「むにゃむにゃ……すぴ~すぴ~」
気持ちよくもう一度、ティアは別の夢の世界に旅立とうとしていたその時……
「おい、おい! いい加減に起きろよ……」
「え… なんか……うるさいんですけど…もう少し寝かせて……」
聞き覚えのある声がしたかと思ったら、大きく肩を揺すってくるのだ。
仕方なくティアはうっすらと目を開けると、大きくあくびをして周りを見回してみる。
「むにゃ、むにゃ……なんだ、らーすか?」
「――その様子なら、本当に大丈夫みたいだな」
細く息を吐くとラースは、静かに目を閉じたのだ。
おや、見間違いだろうか? こいつがこんな心配そうな顔をするなんて……ずいぶんと優しそうに見えるぞ。目の霞か、それとも錯覚だろうか?
ティアは思わず首を傾げてると、
「あれ? そういえば私、なんでこんなところで寝ているんだっけ……」
「お前なあ~」
なぜかラースは心底疲れたように、肩をがくっと落としたのだ。
「お前が後先考えずに無理をして、広範囲に及ぶ聖女の治癒の奇跡を使ったから……倒れたんだろうが…」
「ん? ……ああ、そうだった、そうだった。ゴメンね…なんか心配をかけたみたいで……ははは」
「……。ああ、そうだな…」
手をポンと叩き、ティアは気まずそうに笑って誤魔化そうとしたが……意外なことにラースはさっと視線を外したのだ。てっきり思いっきり怒られると思ったのに意外すぎる。
彼はたしかに説教をするつもりでいた。だがティアの顔を見た瞬間さすがに怒る気にもなれず…かわりに安堵したせいか疲れがどっとでてしまったのだ。
「そ、そういえば、フィヌイ様は…」
「さっきまでは…お前に付き添っていたが、今はあそこだ…」
話題をなんとか変えようと必死だったティアに、ラースが無造作に指さしたその場所には、
水晶が幻想的な光を放っている洞窟のさらに奥。そこには大きな湖が広がり、そこでフィヌイ様は子狼の姿のまま湖の中に浸かっていた。
いや、正確には犬かきで楽しそうに湖を泳いでいたのだ。
「……?」
その光景を見たとたんティアは、訳が分からず呆然としながらも何とも言えない気分でフィヌイの姿を見守っていたのだ。




