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【書籍化&コミカライズ化】もふもふの神様と旅に出ます。神殿には二度と戻りません!  作者: 四季 葉
第四章 結界の揺らぎ

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民家の灯りを目指す


その時のティアはつい後先考えずに、子狼姿のフィヌイ様を追いかけ山を駆け降りてしまったが……

後からラースにもっと慎重に行動しろと、くどくどとお説教をされてしまったのである。


まあ、考えてみれば確かに軽率な行動だったと反省はする。

フィヌイ様は強い力を持つ神様で、それに比べ私は多少の地属性魔法と、聖女の治癒の奇跡が使えるだけのただの人。

身を守るという点では…ラースに比べ身体能力は、はるかに劣っている。


いくら主神であるフィヌイ様が近くいて、その加護があるとはいえ私は命を狙われているのだ……

こいつの言う通り、その加護に頼りっきりではなく、もっと慎重に行動しなくてはいけない。

ついでに、こいつの護衛の負担を減らしておかないと…確かに大変だろうし、非常に苦労が絶えないだろう。


後にラースから聞かされた話では、あの時は幸いにも周りに不穏な気配はなかったが、とにかく気をつけて行動しろと強く釘を刺されてしまったのだ。

そんなわけで、ラースからくどくど言われた話は置いとくとして…



ティアは、フィヌイを追いかけるのにとにかく必死だった。

フィヌイ様ったら子狼の姿にも関わらず、ウサギが飛び跳ねるように草木の間を駆け抜け、山を降りていくもんだから速いこと、はやいこと…

体力だけなら自信はあると思っていたティアでも、姿を見失わないように追いかけるのがやっとだ…


そんなティアの後方から、ラースは周りを警戒しながらもティア達の後を追いかける。



そしてフィヌイ様は、ようやく平らな土地に一軒だけ寂しくぽつんと佇んでいる、民家の前で立ち止まったのだ。

もちろん山の上から眺めたときに、灯りが見えた家である。


フィヌイ様はなにを思ったのか出入り口の戸の前に近づくと、二本足で立ち上がり前足でがりがりと戸を引っ掻き始めたのだ。

例えるなら、家猫が戸の前に来て中に入れてと戸を引っ掻き、飼い主におねだりする仕草に似ている。


ティアは休む暇もなく山道を駆け降りフラフラだったが、ふと見るとフィヌイ様が人さまの家の戸を、がりがりと引っ掻いているではないか――!!


私は慌てて、駆け寄るとフィヌイを抱き上げたのだ。このまま放置すれば、人さまが住む家の戸に傷がついてしまう。

家の人が気づいて出てくる前に、慌てて止めさせたのだ。

フィヌイはティアの腕の中で、いつもの子犬のフリをすると、つまんなさそうに足をぶらんぶらんとさせている。



ちょうどフィヌイ様を抱き上げたとき、ラースもすぐ後ろから追いついてくる。

ふと見ると……山道を駆け降りてきたのに息ひとつ乱していないこの男の姿に、日頃からかなり鍛えているんだなとティアは思う。



そんなことを考えていると、突然家の中から人が動く気配がしたのだ。

やはり…家の戸をがりがり引っ掻いてしまった音が聞こえてしまったのか、外の様子を見るため、出てこようとしているらしい。

だがその気配に、ティアのわからない所ではラースは目つきを鋭くすると、警戒するようにそっと懐に手を入れていた。


やがて…外の戸の押さえている、つっかえ棒が外されたかと思うとこの家の住人がおそるおそる、戸を開けて出てきたのだ。


家の中から姿を現したのは、目以外は布で顔を隠した小柄で華奢な身体つきの女性。

女性は驚いたように目を見開くと、非常に警戒したような声で、


「あなた達は、いったい…」

「あ、あの…すみません。道に迷ってしまって、あははは……」


ティアは言い訳を懸命に探したがまったく思い浮かばず。取りあえずしどろもどろに言葉を紡ぎ、笑ってごまかしたのだ。

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