婚約に興味なし
「なんでも最近では、神殿に信者からの寄付金が集まらなくって運営そのものが大変なんだろ。しかも王都にある神殿で祈りを捧げると、不幸になるっていう噂まで立っている。正直、笑えるよな・・
本音は、どうせ聖女であるティアを連れ戻して、上の神官連中は以前のように贅沢をしたいだけだろ」
「うっ・・! なんという罰当たりな暴言だ!どこの誰かは知らんが、間もなく貴様には神の天罰が下るぞ!!」
ラースのずばりと確信を突いた発言に、ネーテンは今度は頭の血管が切れるのではないかというくらい顔を真っ赤にすると、今度は彼に食ってかかっていた。
本当に忙しい人だと・・ティアはなんとなく眺めていた。
あんなにもムキになって怒っているところを見ると、どうやら図星のようだ。
「あ~はいはい、そうですか~」
ラースは適当にあしらいながら、キャンキャンうるさい奴だとでも言いたげな嫌そうな顔をしている。
一通り叫んではみたが、この男には何を言っても無駄だと悟ったのか、ネーテンは今度はくるりとティアに向き直り、
「ティア様、神殿に戻れば第二王子ルシアス様との婚約の議も執り行わなければなりません。ですから、どうか神殿にお戻りください」
「はぁ・・」
ネーテンさんは、また訳の分からないことを言っていた。
神殿の聖女は、王族と婚姻関係を結ぶことが決められているのは知っている。
つまり第二王子が、聖女でなくなったアリアさんに婚約破棄を突きつけたことを暗に意味していた。
どうやら、ネーテンはこの話を持ち出せば、私が玉の輿だと喜んで神殿に戻る気になってくれると思ったようだがそれは大きな間違いだ。
第二王子ルシアスは、顔は良いが性格には問題がある人物だ。
良くない噂はいろいろと聞いてはいたが・・・ティアはその一端を何度も目撃したことがある。
まだアリアさんが聖女だったころ、ルシアスと彼女は婚約をしていた。
そんなルシアスは婚約者がいるにも関わらず、他の令嬢達とどこからどう見ても恋人のように近距離でイチャイチャしているところを、ティアは偶然にも買い出し中に、何度も街中で目撃していた。
ルシアスは一人の女性を大切に扱い、一生をかけて愛することのできる人ではない。
とっかえひっかえ女を替えるクズ男だ。そんな人と一緒になって地位があるとはいえ幸せになれるのだろうかとティアは疑問に思っていた。
アリアさんはなぜ、こんなクズ男に盲目的に恋をしていたのか理解に苦しむ。
ティアとしては、第二王子ルシアスとの婚約なんぞしたくもないという理由もあり、逃亡していたのだ。
地味顔で孤児院育ちだとしても相手を選ぶ権利ぐらいこちらにもあるというもの。
ハッキリ言って、第二王子との婚約なんてこちらからお断りだ!
「あの~、そろそろ帰ってもらえませんか・・」
ティアは興味がないとばかりにバッサリと切り捨て、冷たく言い放ったのだ。
フィヌイはティアの対応に、傍らで耳をぴんと立て満足そうにうんうんと頷き、ラースは腹を抱えて、必死で笑いを堪えていた。




