表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】もふもふの神様と旅に出ます。神殿には二度と戻りません!  作者: 四季 葉
第三章 追撃者たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

64/271

ディルの街の迷宮(3)


――夕暮れになり、商業都市ディルの街は茜色に染まっていた。


だがこの明るさもすぐに消え、夕闇が訪れる時間となる。そうすれば、すぐに夜の闇が降りてくるのだ。


ラースはティアの姿を探し街の中を走っていた。あんな僅かな時間で、ここまで行方をくらますとは正直、甘く見ていた。自分の失態に思わず唇を噛む。


あいつらよりも早くティアを見つけたいが、彼女の身の安全はについては、ほぼ大丈夫だと心のどこかでは確信めいたものがある。


ティアの傍には、子犬のフリをしている例の得体のしれない白い獣がいる。

あの獣、低い評価で見たとしても大きな魔力を操り、高度な人語も理解している。はるか北にあるという神域、大森林に精霊と共に住む聖獣か、それ以上の代物だとラースは見ていた。


まあ、世間でささやかれている噂では、この国の神と共に聖女は神殿を飛び出し旅をしていると聞く。

・・が、噂はあくまでうわさに過ぎない。


先入観を持ったままでは、真実を見落としてしまうこともある。報告をする以上、着実に証拠を重ねていく必要があるのだ。


それにラースにとって神の存在など半信半疑。

聖職者でもあるまいし、噂そのものを鵜呑みにするのもどうかと思い・・胡散臭と思っているのが本音だ。

実際に、この目で確かめるまでは信じることなどできはしない。

もし、本当に神だった場合は・・そのとき考えればいいだけのこと。


街のざわめきを聴きながら、混みあっている市場を歩き、ティアならどう進むのかを考える。

相手は宿に大半の荷物を置き、買い物をしていたのだ。ならば、一度は泊っている宿に戻ろうとするはずだと結論に至り、

そうすると旅人相手の宿屋がある通りは、一か所に集中しその全てが表通りに面している。

わざわざ表通りの正面玄関から入るのではなく、狭い路地を通り裏口から入ろうと考えるはず。・・なら迷路のように路地が入り組んでいるディルの街だが、自然とティアが通るルートが絞られてくる。

そう結論づけると、怪しまれない程度に小走りでラースはここから近い路地へと向かったのだ。



「くっしょん!」

――むむ! 誰かが僕の噂をしているみたいだ。


ティアはふと笑いながら、カバンから顔を出している子狼の姿をした、もふもふのフィヌイを見つめた。

きっと緊張をほぐそうとしてくれたのだろう。


「ここ少し寒いですから、風邪のひき始めかもしれませんよ? この地下水路、地上に比べてひんやりしていますから。ついさっき私もくしゃみがでました」

――そうだね。ここ少し寒いね。ここを出たら温かい物でも食べよう。まあ、仮にこのくしゃみがただの噂だとしても、取るに足らないことだろうし。


フィヌイはそう言いながら、地下水路の先を見つめたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ