食事は大切です
「それで、用件はなんなの・・? 奇遇なんて絶対に嘘でしょ!」
ティアのジト目に、ラースは肩をすくめると、
「おいおい、そりゃないだろ。俺とお前の仲じゃないか」
「そんな仲なんか存在しないんですけど・・」
冷めた目でラースを見ながらも、ポテトフライに伸ばす手をティアは止めなかった。あいかわらず、もぐもぐと食べていたのだ。
「ティア、お前って冷たい奴だよなあ・・」
「私はしっかりと人を見てから、判断するようにしているの。だから、これは仕方がないことなのよ」
「ああ、そうかよ」
彼は、ひょいと大皿のポテトフライに手を伸ばすと口の中に一つ放り込む。
「おぉ!ここの店の味、なかなかいけるな。ただのポテトフライかと思いきや、ジャガイモの甘みが良くでていて、中はホクホクなのに外はカリッとしている。おまけに異国風の赤い香辛料がかかっていて、一度食べたら止まらない後引くうまさだな・・」
とか言いながらも、ラースはさらにポテトフライに手を伸ばしていく。
「ちょっと・・なに、勝手に人の料理を食べているのよ!」
「がつがつがつ・・キャウっ・・キャウ!」
フィヌイ様も器に入れてもらっているポテトフライを食べながら、そうだそうだと言っている。
「心配するなよ。ここは俺のおごりにしてやる。依頼主から報酬も入って、懐も温かいからな」
ティアはその言葉を聞くと目を輝かせて、さっと手を上げる。
「すみません。追加のオーダーお願いします!このポテトフライの大皿もう一つに、鶏肉のクリーム煮を二つ、あとここのメニューに書いてある上から下までのを一皿ずつと、デザートの盛り合わせもお願いします!」
「待てよ、そんなに食べるのかよ!」
「だって、おごってくれるっていったから食べなきゃ損でしょ。 ねえ、フィーもそう思うでしょ」
「キャウ!」
子犬のフリをしているときの、仮の名前を呼んで同意を求めると、フィヌイ様は尻尾をふりふりそうだと言わんばかりにティアの顔を見つめたのだ。
「お前ら・・ほんと鬼だな・・」
ブツブツ言いながら財布の中を見て、ラースはなぜか落ち込んでいたのだ。
「それはそうと、ティアお前に聞きたいことがあってな・・」
一通り食べ終わり満腹になった頃合いになると、ラースは話しかけてきた。
フィヌイ様はといえば、聞き耳を立てながら子犬のフリをして静かに水をぺちぺちと飲んでいる。
「リューゲル王国の、王都リオンの神殿を飛び出して、旅をしている聖女の話なんだが聞いたことはないか?」
いつもの飄々とした態度ではあるが、これまでとは違いラースの目は鋭く光っていたのだ。




